杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

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・橋下大阪市長アンケートに対する法的な見解~弁護士会の声明

2012-02-16 19:34:51 | 法律・法制度
去る2月9日に、大阪市長橋下徹の署名入りで異例のメッセージを付けて実施された
同市公務員に対するアンケートについて、大阪弁護士会、東京弁護士会、日本弁護士連合会が
3日連続で、その法的評価を明らかにしました。

「何か、おかしい」と思われていた方もあると思いますが、
法律に照らすと、このように判断されるアンケートだということです。



【大阪弁護士会】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大阪市職員に対する労使関係に関するアンケート調査の中止を求める会長声明

報道等によれば、大阪市は、去る2月9日、大阪市職員に対して、「労使関係に関する
職員のアンケート調査」(以下「本件アンケート調査」という。)を、2月16日を回答
期限として実施するとの指示を所属長に発したとのことである。

本アンケート調査は、橋下徹市長の職員への回答要請文書に、「市長の業務命令として、
全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合
には処分の対象となりえます。」と明記されており、職員は、その氏名を表示し、使用者
に対して回答をすることが強制されている。

本アンケート調査は、市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動
などについて調査することを目的としているとされる。しかしながら、地方公務員は、公
職選挙法により公務員の地位利用による選挙運動が禁止されるほかは、非現業の地方公務
員について、地方公務員法により政党その他の政治団体の結成関与や役員就任等、勤務区
域における選挙運動などが限定的に禁止されているにすぎない。それ以外の場合には、地
方公務員といえども、一般国民と同様に憲法に保障された、思想信条の自由、政治活動の
自由及び労働基本権を有している。

本アンケート調査で回答を強制されている内容は、多くの問題を含んでいるが、とりわ
け、次の点で看過することができない。

第一に、職員の思想信条の自由や政治活動の自由を侵害する項目がある。
「あなたは、この2年間、特定の政治家を応援する活動(求めに応じて、知り合いの住
所等を知らせたり、街頭演説を聞いたりする活動も含む。)に参加したことがありますか」
との質問をし、「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」「誘った人は誰か」「誘
われた場所と時間帯は」との選択肢への回答を求めている(Q7)。
これは、勤務時間外に参加した正当な政治活動や選挙活動の内容についても回答を強制
するものであり、それは、当該職員の支持する政党や政治家、政治に関する関心などの回
答を求めることにつながり、職員の思想信条の自由や政治活動の自由を正面から侵害する
ものである。

第二に、職員の労働組合活動の自由を侵害する項目がある。
「あなたは、これまで大阪市役所の組合が行う労働条件に関する組合活動に参加したこ
とがありますか。」として「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」「誘った人
は誰か」「誘われた場所と時間帯は」との選択肢への回答を求めている(Q6)。
ここでも、勤務時間外に行われた正当な組合活動の内容や参加状況についても回答を強
制しており、また当該職員の組合活動への参加意欲や組合への帰属意識、人間関係を調査
するものである。したがって、その回答如何では、使用者からの処遇に影響を受ける危惧
を抱く職員に労働組合活動への参加を抑制し、その組合活動の自由を侵害することとなる。
また、使用者が正当な組合活動への参加状況を業務命令をもって逐一調査することは、
使用者から独立して活動する自由が保障された労働組合の運営に使用者として支配介入す
るものにほかならず、許されない。

以上のとおり、本アンケート調査は、大阪市職員の思想信条の自由、政治活動の自由、
労働基本権などを侵害する調査項目について職務命令、処分等の威嚇力を利用して職員に
回答を強制するものであり、到底許されるものではない。
したがって、当会は、大阪市に対して、本アンケート調査の実施を直ちに中止すること
を求める。
2012年(平成24年)2月14日
                    大阪弁護士会  会 長 中 本 和 洋




【東京弁護士会】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大阪市のアンケートの実施に反対する会長声明

大阪市は本年2月9日,市職員宛てに政治活動・組合活動等についてアンケートを実施した。
このアンケートは,回答者に実名を記載させるものであり,市長はこのアンケートにつき,
業務命令として職員に回答を義務づけるものであって,正確な回答をしない場合には
処分の対象となりうることも表明している。

本アンケートの内容は,組合活動や政治活動への参加歴,これらの活動への参加を勧誘した者の氏名,
組合活動や選挙運動に関する意見等の回答を求めるものであり,更に,前記勧誘者の氏名については,
回答を義務づけない一方で無記名での通報を勧誘している。

このように,職員らに対し組合活動や選挙運動に関する意見等の回答を強いることは,
職員らの内心の自由を著しく侵害するものであり,断じて許されるものではない。

また,同アンケートが,組合活動に関して市が職員にその参加歴等を問い,
業務命令をもって実名での回答を義務づけることは,憲法の保障する労働基本権に対する著しい侵害である。
公務員に対する労働基本権の制限の合憲性については周知の通り古くから疑問が提示されているが,
大阪市の本アンケートは,一般の公務員について異論の余地なく承認されている団結権までをも
明らかに侵すものであるといわざるを得ない。

更に,政治活動への参加歴の告白など政治的行為についてのアンケートに回答を強制することは,
政治活動の自由に対する許された限度を超えた制約である。まして,地方公務員法においても政治的行為を
行なった地方公務員に対する罰則が用意されていないことを考えれば,本アンケートは明らかに過度に広範な制約である。

加えて,勧誘者の氏名の通報を勧誘することは,労働基本権及び政治活動の自由の行使に対する
深刻な萎縮効果をもたらすものであり,労働者間の連帯を断ち切り孤立化させたり,
本来許されるべき活動についてまで事実上の制約を課したりするものであり,これもまた到底看過できない。

本アンケートはこのように幾重にも憲法上の問題があるものであり,広範かつ重大な人権侵害を伴う。
橋下徹大阪市長が,このようなアンケートに対する回答を,職員全員に強要することは,
公務員の人権を侵害するものであり到底容認できない。

したがって,当会は,大阪市に対し,このような重大な人権侵害を伴うアンケート調査を,
直ちに中止することを求めるものである。

2012年02月15日
東京弁護士会 会長 竹之内 明




【日本弁護士連合会】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大阪市のアンケート調査の中止を求める会長声明

大阪市は、本年2月9日、市職員に対する政治活動・組合活動等についてアンケート実施を各所属長に依頼した。



本アンケートは、組合活動や政治活動に参加した経験があるか、それが自己の意思によるのか、
職場で選挙のことが話題になったか否か等について業務命令により実名で回答を求めるとともに、
組合活動や政治活動への参加を勧誘した者の氏名について無記名での通報を勧奨している。
また、本アンケートは外部の「特別チーム」だけが見るとされているが、
アンケート内容により回答者に対し処分を行うとされている以上、
結局は市当局がアンケート内容を知ることに変わりはない。

このようなアンケートは、労働基本権を侵害するのみならず、
表現の自由や思想良心の自由といった憲法上の重要な権利を侵すものである。

まず、本アンケートが職員に組合活動の参加歴等の回答を求めていることは、
労働組合活動を妨害する不当労働行為(支配介入)に該当し、労働者の団結権を侵害するものであり、
職員に労働基本権の行使を躊躇させる効果をもたらすことは明らかである。

また、政治活動への参加歴や職場で選挙のことが話題にされることを一律に問題視して回答を求めることは、
公務員においても政治活動や政治的意見表明の自由が憲法21条により保障されていることに照らせば、
明らかに必要性、相当性を超えた過度な制約である。

そもそも地方公務員は、公職選挙法においてその地位を利用した選挙運動が禁止されるほかは、
非現業の地方公務員について地方公務員法36条により政党その他の政治団体の結成に関与し
役員に就任することなどの限定的な政治的行為が禁止されるにすぎず、
その意味でも本アンケートは不当なものである。


ところで、本アンケートには、
①任意の調査ではなく市長の業務命令として全職員に真実を正確に回答することを求めること、
②正確な回答がなされない場合には処分の対象になること、
③自らの違法行為について真実を報告した場合は懲戒処分の標準的な量定を軽減することが、
橋下徹市長からのメッセージとして添付されているが、これも大きな問題である。


すなわち、アンケートの該当事項が「違法行為」であるかのごとき前提で、
懲戒処分の威迫をもって職員の思想信条に関わる事項の回答を強制することは、
いわば職員に対する「踏み絵」であり、憲法19条が保障する思想良心の自由を侵害するものである。

以上のように、本アンケートは当該公務員の憲法上の権利に重大な侵害を与えるものであり、到底容認できない。

当連合会は、大阪市に対し、このような重大な人権侵害を伴うアンケート調査を、
直ちに中止することを求めるものである。

2012年(平成24年)2月16日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
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16 コメント

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弁護士会は勘違いしてないか (TT)
2012-02-16 22:32:37
弁護士会は職能団体に過ぎず、政治声明の発表などすべきでないし、そもそも、弁護士の「法的評価」が正しいなら裁判で負けることなどないわけです。

弁護士会の皆さんは、特定思想に拘泥するあまり、刑事訴訟法すら無視するんですね。

官吏又は公吏がその職務を行うことにより犯罪があると思料するときは告発しなければならない
刑事訴訟法第239条第2項

Unknown (迦楼羅)
2012-02-17 20:15:18
似非弁護士、独裁者、権力欲の塊、下劣な橋下徹の化けの皮が剥がれてきましたね。
橋下徹氏に懲戒請求を! (迦楼羅)
2012-02-18 10:51:06
杉浦先生
こんにちは。

今日、私、ふと思ったのですが、今回の橋下氏のアンケート調査が、触法行為になるのならば、杉浦先生のような弁護士さんや私達一般市民が、大阪弁護士会に対して、橋下徹氏への懲戒請求ができないものでしょうか?

また、単なる一個人による懲戒請求は、無視または却下されがちなので、杉浦先生のように、橋下氏の言動に疑問や危機感を抱いている弁護士の先生達が中心となって、私達一般市民もともに一丸となって、橋下氏への懲戒請求キャンペーンを起こしてはいかがでしょうか?

この戦略は、かつて橋下氏が、光市母子殺害事件のときに行った、姑息で卑劣な戦略です。橋下氏にしてみれば、自ら発案した戦略によって、こんどは自らが窮地に立たされることになります。

とても面白いと思うのですが、いかがでしょうか?
ケンカ下手 (鉄甲機)
2012-02-18 23:12:54
18日現在、調査は凍結しているようですね。

>本アンケートが職員に組合活動の参加歴等の回答を求めていることは、労働組合活動を妨害する不当労働行為(支配介入)に該当し、労働者の団結権を侵害するものであり、職員に労働基本権の行使を躊躇させる効果をもたらすことは明らか

 その権利にあぐらをかいて、禁止されている「公職選挙法においてその地位を利用した選挙運動」とか職務専念義務違反とかがあったから、今回のアンケート実施となったんですがね。
 弁護士会としては、労組の違法政治活動にはスルーなのかしら。

 労組は「謝罪要求」の声もあるようですが、あんまり調子に乗るとまた痛い目にあうような気が。
 一番大事なのは、大阪府民市民の生活でしょ? 少しは自分の身を律し、非を反省した上で話し合いに持ち込めば橋下市長も大人しくなるものを、ひたすら既得権益確保に走って感情的非難をするから、府民市民の支持は橋下市長に集まり、暴走を招くことになるんですよ。

「橋下市長&維新の会の最大支援団体は、反橋下派」とはよく言ったものです。
窮地なのは日弁連ですが、なにか? (TT)
2012-02-19 09:52:38
>この戦略は、かつて橋下氏が、光市母子殺害事件のときに行った、姑息で卑劣な戦略です。橋下氏にしてみれば、自ら発案した戦略によって、こんどは自らが窮地に立たされることになります。

あのときに、日本最大最強の圧力団体日弁連は、約7558通の懲戒請求書(2006年度における全弁護士会に来た懲戒請求総数の6倍を上回る)を完全無視したあげく、懲戒請求した国民に対しては、業務妨害で逆告訴すると脅迫してましたがが、なにか?
#得意のダブルスタンダード炸裂ですか!?

そもそも、弁護士の違法行為が横行している中で懲戒請求の申立を受けても、弁護士を懲戒する割合は、申立件数のわずか2.3パーセント(平均)しかない、司法の独立の題目を楯に外部の意見に全く耳を貸さない、自浄作用の全くない日弁連という組織は司法の名に値しない反社会団体と言っていいな。
末端の弁護士にはまともな人が結構いるだけに、あのような組織に強制加入させられ、意に反する声明を組織名で出されて末端の弁護士はかわいそうですね。
弁護士会について (瞳)
2012-02-19 11:55:51
迦楼羅さん、TTさん弁護士会の懲戒請求についてコメントありがとうございます。

団体内での自己規律の難しさはあります。現実の問題として内部で自浄的な活動ができるのかという問題と、外から見てそれが信頼されるかどうか、という問題です。きびしく考えていかなければいけない問題だと思っています。

 それと、強制加入団体であることも重要な視点です。個々の弁護士は日本弁護士連合会に加入することが強制されていて、ここを外れて弁護士としての活動はできません。
団体としての統一した意思表示を図ろうとするときに、賛同できない弁護士はどうするのか、という問題があります。ですから、憲法から一義的に判断することが難しい対立のある論点、死刑とか、憲法9条の問題はその種類の問題で、意思統一を図ろうとすると必ず紛糾します。

 このことから、弁護士会として声明を出すときには、法律の解釈にしたがって人権の侵害になるとされている場合について、会長声明を出しています。
ただ、それが、政争のまっただ中にいる方に宛てて出されたときには、政治的な対立に声を上げているように見えるのではないかと思います。

 今回も「橋下さん」に対してというのではなく、アンケート内容が、憲法19条(内心の自由)21条(政治的表現の自由)28条(労働基本権)等憲法に違反している可能性を指摘しての声明になっています。

 これまでの組合のあり方が問題だった、という反論があるのかも知れませんが、だからといって憲法に違反する、過度の人権侵害を伴うようなアンケートという方法をとるべきではないと思うのです。
これでは、反論に理由があっても、「目には目歯には歯」だと思います。手続きに従った対処が考えられるべきだと思います。
TTさんへ (迦楼羅)
2012-02-19 13:48:53
こんにちは。
私は、杉浦先生に提案したので、あなたと話しをしたいのではありません。勝手に横から私に話しかけないでください。

TTさんは、弁護士会や弁護士を信頼されていないようですが、もしあなたが、何らかの事件に巻き込まれたり、不法行為によって多大なる経済的損害を被ったときに、あなたは弁護士なしで、ご自分で法的問題を解決できますか?ご自分で裁判を起こせますか?

私はあなたを相手にしていません。あなたのような人から、横から話しかけられるのは、ハッキリ言って、迷惑なのです。

人の意見に横からチャチャを入れるような人間は、そのうち誰からも相手にされなくなりますよ。
TT (何をおっしゃるやら)
2012-02-20 21:18:08
はっきり申し上げて、あなたはここがどういう場なのか解っていません。

あなたの望みを叶える方法は、あなたが、自分でブログなりを立ち上げた上で、杉浦センセーにトラックバックすることです。

そうすれば、いちいちあなたの意に沿わないコメントを見る必要がありませんし、万が一、わたしがあなたにコメントしようとしても、杉浦センセーがそうであるように、投稿されたコメントを表示させなくできます。

#もっと言ってしまえば、個人的な提案であれば、メールにするというのが、世間一般の常識ですが。

ついでに指摘しておきますが、既に述べたとおり、私は弁護士を完全否定していませんし、弁護士会の末端には、弁護士会の上層部が、紛糾するから議論は拒否するなどという非民主的な方法で乱発する声明に左右されないまっとうな弁護士さんがいることも知っています。

>違反している可能性を指摘しての声明になっています。

可能を指摘しているといいながら、舌の根も乾かない内に

>憲法に違反する、過度の人権侵害を伴うようなアンケートという方法をとるべきではないと思うのです。

憲法に違反すると勝手に断定。
杉浦センセーは相変わらずですね。

ちなみに
>弁護士会として声明を出すときには、法律の解釈にしたがって人権の侵害になるとされている場合について、会長声明を出しています。

コレはいかなる根拠を元に行っておられるのでしょうか?
寡聞にして、日弁連にそのような規則があるなどとは聞いたことがありません。
お久しぶりです。質問させてください。 (チロ)
2012-02-21 11:10:21
日弁連は遺憾「少年事件の死刑廃止を」
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20120220-906685.html

これは日弁連の意見ですか。それとも日弁連会長の個人的意見なんでしょうか?

それと橋下市長に対する声明は憲法に違反する
疑いがあるとの事で、ある程度理解できますが、光市の判決は憲法にも、刑法にも違反していません。

「死刑廃止が世界的潮流なのは明らかで、少年事件の特性を考慮することなく死刑を確定させるのは誠に遺憾だ」
このように刑法で定められた刑罰で個々の判決を、批判するのは法律を守り実践する立場の
弁護士会として不適当と考えますが、所見お聞かせ願います。
なお弁護士や、弁護士会が一般的にを死刑廃止を主張するのは自由だと思います。
皆さんの意見も (チロ)
2012-02-22 10:22:21
是非聞かせてください。
私はTTさんの意見に賛成ですので。

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