徹底した娯楽特撮アクション作品。ゴジラが人類の味方であることはもはや暗黙の了解事項。宇宙人は特に理由も示さないまま、まるでゲームのように地球(日本だけ)を攻撃し、しかも舞台はなんの脈絡もないまま沖縄だし、沖縄の怪獣キングシーサーとゴジラが共闘してメカゴジラと戦う。
この映画の公開の翌年に「沖縄海洋博覧会」が開催されており、プロデューサーの田中友幸氏は海洋博にも関わっていたようなので、その辺は相当意識していたようです。当時沖縄は日本に復帰したばかりで、なにかと話題になっておりましたので、それに乗っかろうという意図もあったのでしょうね。
それはともかく、ストーリーはほぼこれアクションに次ぐアクション。キングシーサーを目覚めさせる像を巡って、人間側と宇宙人側との争奪戦が展開され、これにメカゴジラとゴジラとの戦いが絡んでくる。さらには、宇宙人の行動を追っていたというインターポールの刑事までが登場。おいおいインターポールって宇宙人まで扱うのかよ!というツッコミの一つも入れたくなりますが、この刑事を演じているのが、あの岸田森さん。私、岸田さんの大ファンなもんで、世紀の大怪優岸田森さんなら赦す!
とにかくね、細かい理屈をすっ飛ばして、子供に帰って楽しめば結構面白い映画です。アクションの得意な福田純監督の演出は冴えに冴え、「爆破の中野」こと中野昭慶特技監督は爆破に次ぐ爆破で、画面は炎だらけになってます。
中野監督の爆破演出はとんでもなくて、石油コンビナートなどの爆発で吹き上がる炎はガソリンを使っているのですが、スタジオ内のミニチュアセットにガソリンを蒔くと、ガソリンが気化して空気中を漂うわけです。そこで火薬を爆破させると、気化したガソリンに一気に火が付く。
そうなるとスタジオ内の気圧が変化して、スタジオのドアがバン!と開くんです。そして外の空気が一斉にスタジオ内に流れ込んで、炎が凄まじい勢いで燃え上がる。
ヘタすりゃ死人がでますよこれ。今なら消防法の関係で、絶対に出来ない撮影方法です。
文字通り、「命掛け」の現場でした。
それはともかく(こればっかり)、メカゴジラはメチャメチャ強い!両手両足の指はミサイルで、目と口と胸からは光線を発射してゴジラとキングシーサーを苦しめます。このシーンのメカゴジラはメッチャカッコイイ。子供たちの人気を得ますよこれは。
メカゴジラを止めるために、宇宙人=ブラックホール第三惑星人(これも意味がよく分からない)のアジトに侵入した人間達によってコンピュータは破壊され、宇宙人の司令(睦五朗)は倒され、メカゴジラはその機能を停止し、ゴジラとキングシーサーによって破壊されます。
宇宙人司令を演じた睦五郎さん。スティーブ・マックウイーンの吹き替えでも有名な俳優さんですが、時代劇などでは圧倒的に悪役が多い方で、私の大好きな俳優さんです。この作品では、クールでどこか楽しげに攻撃を進めて行く悪役を見事に演じています。
平田昭彦さんや小泉博さん、佐原健二さんといった、かつての東宝特撮映画の常連さん方が出演されているのも楽しい。とにかく理屈やら何やらをすっ飛ばしてしまえば、素直に楽しめる映画であることは確かです。
ゴジラシリーズって、こうして観ると流石にレベルが高いです。
さて、この作品で人気を得たメカゴジラは、次作で早くも再登場を果たします。
『ゴジラ対メカゴジラ』
制作 田中友幸
原作 関沢新一
福島正実
脚本 山浦弘靖
福田純
音楽 佐藤勝
特技監督 中野昭慶
監督 福田純
出演
大門正明
青山一也
田島令子
平田昭彦
小泉博
岸田森
草野大悟
睦五郎
佐原健二
ベルベラ・リーン
今福正雄
図師勲
森一成
昭和49年 東宝映画