こんなに終わって欲しくない、いつまでも見続けていたいと思った映画は、『愛と哀しみのボレロ』以来かもしれない。
このライヴ・シーンをいつまでも見続けたい。切実にそう思った。
でも、「ショウ」はいつか、必ず終わる。
己の出自にコンプレックスを持った一人の青年が、その才能を生かしてくれる仲間たちと出会い、瞬く間にスターダムにのし上がっていく。
しかし大きすぎた栄光の代償もまた、大きすぎた。彼は己を見失い、驕りと傲慢は彼に拭いきれない孤独を与え、家族とも思った仲間たちとも別れてしまう。
残ったものは寂しさと、それを埋めるための大量のドラッグ、乱れた性生活。
しかし、己が「死に至る病」に感染していることを知った時、己にはもう、残された時間は少ないと知った時、
彼は気付くんです。己が求めていたものは、己に本当に必要なものは
感謝すべきものは
常に、自分のすぐそばにあったのだ、ということに。
彼は仲間のもと、家族のもとへ帰り、そうして歴史的ライヴ・パフォーマンスを行うのです。
映画的に脚色された部分はあるでしょうが、一人のロック・スターの生涯を通じて人生の本質というものを見事に描いてみせた映画です。
人生を一つのショウに例えるなら、ショウには波乱万丈、紆余曲折、ハラハラドキドキがあるからこそ面白い。何も事が起きない平板なショウなど大概つまらないものです。
だから人生に起こる様々な問題は、まさに人生を「楽しむ」ためこその波乱万丈であり紆余曲折であり、ハラハラドキドキなのかもしれない。
ショウに出ている間、舞台に立っている間は「大変だなあ、早く終わって欲しいなあ」と思っていても、いざ終幕してみると「ああ楽しかった、もう一度やりたい」と思うものなのだそうな。「役者は3日やったらやめられない」とはよく云いますが、人はまさに人生という舞台に立つ役者であり、しかもそれぞれがそれぞれの舞台では主役です。だから舞台に立ち、演じている間は大変だとも思い、演じ方に迷いもし、日々苦悩し続け、ときに早く終わることを願う。
でも終幕してしまえば、楽しかったと思い、また「演じて」みたいと切望する。
そういうもの、なのかもしれませんね。
それにしても、なにより素晴らしいのは、やはりクイーンというバンドが築き上げた数々の音楽です。その反骨に富み、ポジティブなメッセージに溢れた楽曲は、人生に傷ついた多くの人々を元気づけ、勇気を与えた。
ホント、音楽というのは凄い力を持っているものです。
ショウはいつか終わる。
でも、いやだからこそ、
ショウはそれが終わる最後の最後まで続けなければならない。
挑戦し続けなければならない。
フレディ・マーキュリーとはそのことを人々に伝えるために遣わされた、「天使」だったのかもしれません。
挑戦し続けること、それが人生の本質。
ショウを止めてはいけない。ショウはその最後の最後まで続けるもの。
挑戦し続けるもの。
[Show Мust Go On]
※こぼれ話
映画の巻頭、配給会社である20世紀フォックスのロゴ・マークとともに、20世紀フォックスのテーマ曲が流れますよね。あの曲いつもならオーケストラの演奏によるものが流れるのですが、この作品ではこれが、ブライアン・メイ愛用のギター、「レッド・スペシャル」による演奏に差し替えられていることに気付いた人もいることでしょう。
あれ、ご本人が弾いてるんですかね?だとすればこれはこれでまた、凄い話だ。
いずれにしろ、分かる人だけ分かればいい話、ではあります。
「わがるやづだげ、わがればいい」
この世に生を受けたからは、最期の時が来るまでが挑戦!!フェレディからの熱いメッセージが伝わってきます。何より本当に歌が良かった。声が天使でしたね。この映画を楽しめたのも、かおちゃん兄さまの普段からの数々の歌の紹介があったからこそ何倍も楽しめました。改めてお礼を申し上げます。m(_ _)m
これからもよろしくお願いいたします。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。