風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

映画『ゴジラVSビオランテ』 平成元年(1989)

2014-04-16 23:24:28 | ゴジラ


                     


【第一種警戒体制】

Gの活動が物理的以外の化学、地質、気象、精神など
いかなる点でも一つ確認された場合

【第二種警戒体制】

Gの活動が声、動きなど物理的に確認された場合

【第三種警戒体制】

Gが出現した場合

【第四種警戒体制】

Gが日本のある特定地域に上陸することが
確実とされた場合

〈国土庁・特殊災害作戦会議〉




84年のゴジラ公開の後、東宝は次作のゴジラ用のオリジナル・ストーリーを一般公募します。

投稿総数5025本、その中から最終的に小林晋一郎氏の原案が採用され、当時気鋭の映画監督だった大森一樹が脚本と監督を担当しています。

えっ?アンタは投稿しなかったのかって?えへ、えへへへへ。


では、ざっとストーリー紹介

********************

1984年、ゴジラが襲った直後の東京で、飛び散ったゴジラの皮膚片を集める謎の一団。

彼らはアメリカのバイオメジャー(バイオテクノロジー産業の独占を狙う企業合同体)のエージェントでした。彼らはゴジラ細胞を入手し、意気揚々と引き揚げますが、突如現れたアラブ系の男の銃撃を受け全滅。ゴジラ細胞はそのアラブ系の男に奪われてしまいます。

男はアラビア半島の王国サラジアのエージェント。サラジアには世界最高峰のバイオテクノロジー研究施設があり、そこに勤務する日本人科学者、白神博士(高橋幸治)のもとへ、ゴジラ細胞到着の報せが届きます。

白神博士は娘、英理加(沢口靖子)を連れて研究所へ出向きますが、何者かに研究所が爆破され、英理加は巻き添えで帰らぬ人に。

5年後、三原山火口内で、再びゴジラが活動を開始し始めたことが、精神科学研究所の超能力少女、三枝未希(小高恵美)により感知されます。

自衛隊特殊災害対策本部の若きエリート、黒木特佐(高嶋政伸)は、大河内財団に保管されているというゴジラ細胞を使って、対ゴジラ用生物兵器「抗核エネルギーバクテリア」つまり核を食べて無力化してしまうバクテリアの製造を指示。筑波科学研究所の桐島一人(三田村邦彦)と、芦ノ湖畔に隠棲していた白神博士の二名に白羽の矢を立てました。

白神博士は了承する条件として、一晩だけゴジラ細胞を貸して欲しいと要求します。

白神博士の天才的手腕によって、抗核エネルギーバクテリアの製造に成功。しかしまたもやバイオメジャーのエージェントが暗躍。三原山火口に爆弾を仕掛け、抗核バクテリアを渡さないと爆破してゴジラを目覚めさせると、日本政府を脅迫。政府はやむなく受け入れ、自衛隊の権藤一佐(峰岸徹)と桐島によって引き渡し場所へと移送されます。

しかし引き渡し場所に現れたサラジアエージェントの妨害により、バクテリアはサラジアエージェントに奪われ、三原山に仕掛けられた爆弾の爆破阻止に失敗。火口に激しく吹き上がる爆炎の中、ついにゴジラが復活します。

その頃芦ノ湖に巨大なバラ状の生物が出現。これは白神博士がゴジラ細胞にバラの細胞を融合させて誕生させた生物「ビオランテ」でした。

ゴジラの細胞が融合されたバラには、実は以前から、博士の亡くなった娘、英理加の細胞が融合されていたのです。娘を無くした悲しみから、娘の細胞をバラと融合させて“生かし”、さらにゴジラ細胞を融合させて、永遠に生かそうとしたのです。

余りにも罪深い行為に、「それがあなたのいう“科学”ですか!?」と詰め寄る桐島、それを無言で見返す白神。

ゴジラは駿河湾近海に現れます。黒木特佐の指揮の下、自衛隊はゴジラ掃討のため出撃。自衛隊艦船や戦闘ヘリとゴジラの攻防。ゴジラの吐く放射能光線により、海面に激しい水柱が立つ!次々と撃破される自衛隊。自衛隊は新兵器「スーパーX2」を出撃させ、ゴジラの放射能光線を跳ね返しゴジラに打ち返します。

たまらず海中へ逃れるゴジラ。しかしスーパーX2も損害を負い、両者痛み分け。スーパーX2は一旦引き揚げ、ゴジラは駿河湾より上陸。まるで惹きつけられるかのように、芦ノ湖へ向かっていきます。

ゴジラとビオランテはついに対峙。ビオランテは蔓をヘビのように絡ませてゴジラを攻撃しますが、ゴジラの放射能光線にあっけなく燃やされ、灰となって天へと昇っていきます。はたしてビオランテは死んだのか!?

海へと戻ったゴジラ。黒木特佐はゴジラがエネルギー補給のため原発を襲うと判断。一番近い原発が集中している若狭へと向かうと判断し、最短距離である名古屋に上陸すると予想。自衛隊を名古屋湾沿いに集結させます。

しかしゴジラは大阪湾に出現!裏をかかれた黒木特佐は大阪上陸阻止を諦め、住民避難の時間稼ぎのため、超能力少女・三枝未希のテレパシーに頼ります。精神科学研究所職員、大河内明日香(田中好子)と二人、ゴジラの全面に立ち、その小さな身体でありったけのテレパシーを放出する未希。ゴジラはこれを嫌がり、一旦遠ざかります。その場に崩れ落ちてしまう未希。

その頃桐島と権藤一佐は、大阪にあるサラジアの貿易会社に急行。見事抗核エネルギーバクテリアの奪取に成功します。

ついに大阪に上陸するゴジラ。市内を蹂躙し大阪ビジネスパークへと進んで行きます。

自衛隊は抗核バクテリアを搭載したロケット弾を撃ち込む決死隊を組み、権藤一佐も参加します。

ツインタワービルに登り、ゴジラの口の中へ直接ロケット弾をぶち込む権藤。「薬は飲むのに限るぜ、ゴジラさん!」

不敵な笑みを浮かべる権藤でしたが、ゴジラによってビルは倒壊、権藤一佐は殉職します。

若狭へと向かうゴジラ。抗核バクテリアが効いている様子がみられない。

ゴジラの体温が低いため、バクテリアが活動していないのではないかという判断から、黒木特佐は実験段階の「サンダーコントロール」システムの使用を指示。人工的に雷を発生させ、それによって分子を振動させて温度を上げる。電子レンジの要領です。

刻々と原発へ迫るゴジラ。激しい嵐が吹き荒ぶ中、自衛隊との激しい攻防戦が展開されます。一歩も引かぬゴジラ。サンダーコントロールシステムは!?

ふと嵐が止んだその時、天空より黄金色の鱗粉が降り注ぎます。中から現れたのは、進化したビオランテ!!

大地を摺るようにしてゴジラへ突撃するビオランテ。愈々ゴジラVSビオランテの最終決戦!!

果たして勝敗は?抗核エネルギーバクテリアの効き目は?

日本の運命は…!?

********************


バイオメジャーによる陰謀、ゴジラ細胞の争奪戦。ん?なんかどこかで聴いたような話じゃあーりませんかねえ…。

まあ、例の○★方さん騒動の場合、エージェントが銃を抱えて奪いに来るなんて分かり易いシチュエーションではありませんけどね。あちらはもっと巧妙なトラップが随所に仕掛けられていた、という見方も出来ますね。

「事実は映画よりも奇なり」てことかもね。

いやマジな話、ありますねこれは。




それはともかく、映画はゴジラと自衛隊の攻防戦を中心に最後まで展開していきます。こういう展開って、それまでのゴジラ映画には案外無かったんですね。

高嶋政伸演じる黒木特佐が良い。冷徹な指揮官で、任務を遂行することのみに集中している。

ゴジラとビオランテが初めて対峙した時、上田耕一演じる年長の士官が不安げに「どうなるんだ…?」と呟くんです。すると隣にいた黒木特佐が一言。

「勝った方が我々の“敵”になるだけです」

なんだかね、シビレちゃいますね、このシーン(笑)



ゴジラ対自衛隊の攻防が中心になる分、ビオランテの出番が少ない感じがしますが、ビオランテはビオランテで、行き過ぎた科学信仰の危険性を一手に引き受けたかたちになっていますね。しかもゴジラ細胞によって誕生した、言わばゴジラの分身。

この点を掘り下げて分析してみるのも、興味深いですね。




川北紘一特技監督の特撮演出は、カメラが斜めになったり、戦闘ヘリ目線でゴジラにグングン近づいたりと縦横無尽に動き回る。ゴジラの放射能光線で海面に水柱が「走る」シーンなどは、水面の下に爆薬を並べて、順番に爆破しているだけなんですが、そんなこと今まで誰もやったことがなかったですから、映画館で思わず仰け反っちゃいました。スゲーっ!て(笑)




娯楽作品としてよく出来た作品だと思います。東宝特撮映画伝統の「文明批判」「科学信仰への警告」もしっかりと描かれています。

しかし惜しむらくは、アクションシーンが、かったるいんです。映画の大事な見せ場であるはずの銃器アクションのシーンなどがどうにも締まらない。その点が非常に残念。

そこさえしっかりしていたら、本当にシリーズ中屈指の傑作と成り得ていたかもしれない。

返す返すも残念。



最後に特筆すべきは、超能力少女・三枝未希を演じた小高恵美の存在ですね。

小高恵美は「第二回東宝シンデレラ」でグランプリを受賞。この「…VSビオランテ」から95年の「…VSデストロイア」までの全作品に同役で出演しており、平成VSシリーズは別名「三枝未希シリーズ」と呼ばれています。

小高恵美の女優としての成長と共にシリーズがあり、シリーズ終焉とともに、彼女の女優人生も大きな節目、転機を迎えたといえます。

シリーズ終了後は、三枝未希のイメージが強すぎたせいか今一つパッとせず、ひるドラのヒロインや舞台にも出演していたようですが、体調を崩してしまい、現在は事実上の引退状態にあるようです。

惜しいです。良いものをもった方だと思っておりましたので、非常に残念。

御本人の問題ですから、私がとやかく言うことではありませんが、今後どのような人生を歩むにせよ、納得された良い人生を歩むことを願います。

ゴジラシリーズに大いなる足跡を残した女優さんへ、敬意を込めてエールを送ります。

ちょっとだけ、言っても良いすか?復帰しないのかなあ…。





さて、上述した黒木特佐のセリフにあるとおり、ゴジラは完全に人類の“敵”になりました。二度と人類の味方、正義のヒーローにはなりません。



こうして平成VSシリーズは幕を開け、次作では最大のライバル、キングギドラと激突します。








『ゴジラVSビオランテ』
制作 田中友幸
プロデューサー 富山省吾
ストーリー原案 小林晋一郎
音楽 すぎやまこういち
ゴジラテーマ曲作曲 伊福部昭
特技監督 川北紘一
脚本・監督 大森一樹

出演

三田村邦彦
田中好子
高嶋政伸
小高恵美

金田龍之介
上田耕一
峰岸徹

豊原功輔
鈴木京香

ハント敬士
マンジョット・ペディ

沢口靖子
永島敏行
久我美子

相楽晴子
デーモン小暮
斉藤由貴(声のみ)

薩摩剣八郎

高橋幸治

平成元年 東宝映画

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2 コメント

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Unknown (薫風亭奥大道)
2014-04-19 09:09:54
お玲さん、「花のあすか組」出てたねー。
「月曜ドラマランド」懐かしー。小泉今日子の「あんみつ姫」って、これでやってたのだったかな?
「俺があいつで…」は映画「転校生」の原作だね。ドラマの方は憶えてないけど、映画の尾美としのりと小林聡美のコンビが素晴らしかった。大好きな映画です。

よーし、ロト710回当てたら作ったろ!…って、出来るかい!?(笑)
Unknown (玲玲)
2014-04-19 07:40:12
小高 恵美さん、「花のあすか組」の人だ~。って書くぐらいでこの時期のゴジラは見てない私。そんなにゴジラシリーズで重宝されたヒロインだと知りませんでした。すみません小高さん。
この頃はでたての新人アイドルに漫画関係のあまり出来のよくないドラマ当てるとか多かったですよね。月曜ドラマらんどみたいなね。
「俺があいつであいつが俺で」とかベタベタなのも昭和の匂ひ。嫌いじゃなかったけどね。
ビオランテの設定泣けるな、なんか。
薫風亭さんが今シナリオ書いたら、ゴジラは東北舞台の鬼門金神になるのかしら~。LOTO7当たったら作って?なんて。

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