風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

小説『蜩ノ記』

2014-06-20 12:44:09 | 
 

                        




2012年度、直木賞受賞作とか。私はそんなこと知らずに、書店で何気なく目に留まって、ふっと手に取ってそのまま何も考えずにレジへと運びました。

本には、稀にそのような力を持ったものがあります。

どうやら、今私が読むべき小説だったようです。


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豊後国羽根(うね)藩士・戸田秋谷は、とある政争に巻き込まれ無実の罪を着せられ、藩主より10年後の切腹を言い渡されます。藩主はその10年の間に、秋谷に藩の歴史、「家譜」を編纂するよう命じます。その真意はどこにあるか明かさないまま、藩主は早逝してしまう。
秋谷を目の敵とする羽根藩家老・中根兵右衛門は、秋谷の監視と家譜の内容を探らせるため、藩士の檀野庄三郎を秋谷の下に遣わします。
庄三郎は秋谷の人柄に触れ感銘を受け、秋谷を救う手だてはないものか思案し始めます……。

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死すべき「その日」が確実に近づいて行く中で、己の成すべき責務を淡々と続ける秋谷。そんな秋谷に感化され、人として、武士として成長していく庄三郎。

幽閉された村の農民たちとの触れ合いを通じ、あらゆる不正不義を憎みながらも、それでもあらゆる命を慈しむ道を学んでゆく。ああこれだ、と思いましたね。

これが、縄文以来の日本の武士道の根幹なのだと。





武士道には必ず死生観が深く関わってきます。その死生観は、おそらく縄文時代1万年の間に、日本人のDNAに刻まれたもの。

死生観は宇宙観、宗教観に繋がり、縄文以来の日本人の精神世界を探るにあたって、非常に重要なもの。そうか、だから

私はこの小説を読まなきゃならなかったのだな。





縄文武士道、どうやら書き上げられそうです。もっとも、私の拙い文章を読むよりも、こちらの小説をお読みになった方が早いかもしれませんが……オイオイ(笑)




ちなみに映画化もされたようで、撮影は去年の内に終わったのかな?公開は今年の10月とか。
出演は戸田秋谷に役所広司。檀野庄三郎に岡田准一。その他堀北真希、青木崇高、原田三枝子、寺島しのぶ、井川比佐志など。
監督は「雨あがる」「博士の愛した数式」の小泉尭史。

映画はともかく、小説は一読の価値あり。お薦めです。