だらだら日記goo編

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「芸術とは楽しい仕事のことです」

2005-10-16 22:55:38 | アート・文化
1975年の芸術家の言葉だ。
ただスマートで目新しい家具を作る人ではなかったのだ、芸術家は産業社会から情報社会への移行という時代の流れを反映してそのあり方を変えてきたのだ。
芸術家とはイームズ夫妻、チャールズとレイだ。
その回顧展を目黒区美術館に観に行く、千円も取られるが僕は友の会なので無料だ。
実はこの展覧会、以前大丸で観たが雑然とした展示で何がなんだかよく判らなかったので仕切りなおしだ。
さすが一流の美術館が開催するだけあって手がこんでいる、実は芸術家の真骨頂は家具というより映像なのだがあちこちに映像が見られる仕掛けだ。
チャールズは1907,レイは1912の生まれで1941に結婚する。
もともと機械的なものへの関心があったというチャールズだが、第二次世界大戦中航空機業界と政府のために部品を製作したことが家具デザインへとつながったという。
家具デザインのモットーは「格好よく見えるものよりちゃんと使えるもの」、つまりは体にフィットしたもの、それで、大量生産という時代にもあったものであった。
1950年代になると夫妻の関心は書籍や映像に移る。
その一方夫妻は単独な歩みをしていたのではなく、アメリカの重要な文化使節として、さらにはIBMなどの産業界の協力として活躍していたことは見逃せない。
インド政府からの依頼でインドの産業化と伝統を取り持つものとして水壺「ロータ」を産業モデルとしたり、1959アメリカ博では映像「アメリカの光景」を上映する。
日本にも関心があったようでイームズ邸ではチャップリンも参加した「日本式茶会」を1951行う。
そして時代の変化とともに夫妻はテクノロジーを使うアイデアに挑戦する。
映像「コマ」1969は回転運動の原理を示すし「メビウスの輪」1961は幾何学の法則と美しさを示すため作られる。
しかし圧巻は「パワーズ・オブ・テン」の映像だ。
10の何剰の世界を42枚の写真を駆使して作り上げたのだ。
10の何剰といってもわかりにくいが、-○剰では細胞の世界を、+○剰の世界では宇宙のかなたを写す、現代科学の最先端だ、これまたIBMのためにつくられたという。
思うにこれからの芸術表現はたぶんに映像の分野と結びつくだろう。
目黒区美術館に程近い東京都写真美術館には地下一階に映像コーナーがあるが、時代を映している。
そういう意味でイームズ夫妻のこころみは時代の最先端を行く芸術といえる。
だからタイトルに書いたように二人にとって「芸術とは楽しい仕事」にほかならないのだろう。
千円取られるが観に行く価値は充分ある。
帰りに日本橋三越の院展の招待券と池袋西武のマリーアントワネットの招待券をもらう。
芸術の秋、ますます忙しい季節だ。