だらだら日記goo編

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伝統と近代の間に

2006-05-24 22:14:17 | アート・文化

この人もまた外国の美術愛好家によって「発見」された画家である。

2001年の「ルモンド」の表紙を代表作「百百世草」の「八つ橋」が飾り、2003-4、日本アメリカの四会場で大規模な回顧展が催されたという。

それに行けなかったので待ち望んでいた回顧展だ、画家は神坂雪佳、明治から昭和にかけて琳派の復興を志した人だ、日本橋の高島屋に観に行く。

なんでもアールヌーヴォー全盛の1901に渡欧したが、自分の進む路は「飾る美」としての日本伝統の琳派の世界にあると考えた人らしい。

確かに「光琳波」と呼ばれる水のデザインを受け継いだり、「光悦村図」のように、光悦が洛北に建設しようとした芸術家村を想像して描いたりもする、それどころか、光悦に習ったのか晩年は嵯峨野で芸術村を営もうとしたともいう。

しかし渡欧したり押し寄せてくる近代の波は確実にこの人にも反映していることはいっておかねばならない。

たとえば能に取材した「山姥之図」である、その不気味な眼球や伸びたつめは琳派とは異様な不気味さを併せ持つ。

あるいは「白鳳図」、昭和天皇の即位の大礼にあわせて作られたようだが、カタログの言葉を借りれば「手塚治虫が描くフェニックス「火の鳥」のようだ、という人もいる」

「百花」という窓掛けには圧倒される、巨大でまさに百花繚乱だが、その重厚さはヨーロッパ的だ。

かくして伝統に回帰しつつも時代の斬新さを併せ持つ画家ではある、画家というよりデザイナーだ。

さまざまな図案をしてたとえば弟と合作したりもする。

冒頭に書いた「百百世草」とは万葉集にも描かれた不老長寿の花というが、全部で三巻六十の図を描いたという、それが海外コレクターの目に留まったわけだ。

会場には琳派の作品から「なごみ琳派」、江戸期に大坂で活躍した中村芳中という人の作品までいろいろ展示されてずっと会場にいたい気分になる。

それにしても佐倉でもやったという大規模な回顧展、カタログが手に入らないか調べてみたい。