だらだら日記goo編

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コレクターの素性は

2006-05-03 22:06:50 | アート・文化

Y氏とは何者なのだろう、実にいいコレクションをしている。

いま話題の藤田嗣治は「草原」の風景画がよろしいし、香月泰男の「くちなし」などもよろしい。

棟方志功、横山大観いろいろ所有していて、目黒に画廊をかまえたY氏ーそのコレクションから特に伊東深水の素描を中心に「素顔の伊東深水」の展覧会を目黒区美術館に観に行く。

実に多くの素描が展示されており、解説も読んでいくと二時間はかかった。

しかしながら面白い展覧会で深水の線描の魅力は充分味わえた。

この展覧会の担当学芸員の結論は、深水は浮世絵の伝統を踏まえつつ、個人としての己が路を極めた凛とした内面的女性を描いたということになろう。

深水の線描は西洋画的写実は使わない、裸婦のスケッチにおいてもそうだ。

線描において遠近や空間、果ては重量感まで描き出そうとする。

日本的伝統からの解放は従軍で南方に取材したことにあるという。

そこで四百枚に及ぶスケッチをものにした彼ではある。

「深水型」といわれる美人様式を本人は嫌ったという、そして戦後は「力の芸術」たとえば「菊を活ける勅使河原霞女史」のように、職業人格を持った女性を描き、第二次美人画ブームの中心となったというのが暫定的な結論ではある。

カタログも担当学芸員がすべて執筆しており論文集のような趣がある。

Y氏インタヴューでは「昭和二十三年青森の生まれ」と断片的なことは判るがこのコレクターの名前は知れない。

しかしカタログ挨拶で指定管理者制度の下で実施されたこの展覧会は区からの予算が640万円あまりと「過酷な予算執行で運営される」ときわめて具体的なことを書くならY氏の素性を明らかにしてもらいたかった、この人のコレクションは冒頭に書いたように一部が展示されるがきわめて充実しており、謙遜することは何もない。