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詩『言葉の街から』 対話シリーズ 3012-3015

2022年03月05日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



3012
冷蔵庫の中に卵たちが
静まっている
そんな日々が気づきの外を流れている



3013
ドアが開いて劇が始まる
朝がある
卵の物語である 卵卵卵卵卵卵卵



3014
きみのイメージの中
ころころころころ
卵が移動している配列を組み替えている



3015
二人の内で火の手が上がる
許容の線から
あふれ出て行く物語の地平へ

 
註・町田康「夫婦茶碗」P33 新潮文庫

例えば、オムレットが食いたくなって、妻に、オムレットを拵えよ、と命じたとする。傍らで小説本かなにかを読んでいた妻は「はい」と好い返事で立ち上がり、冷蔵庫の扉を開ける。ここだ。ここが重要なのだ。と、妻の手元を注視していると、ほらね、いわんこっちゃない、妻は、いたって無造作に、鶏卵トレイの奥の方の鶏卵を取り出しているのである。わたしは再三再四、口を酸っぱくして妻に、鶏卵使用の際にあたっては鶏卵を手前側から取ってくれろ、くれぐれも奥から取ってくれるなよ、と注意してきたのだ。



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