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メモ2020.2.09 ―自己表出と指示表出へ ⑤ 疑問点を考える 第一回

2020年02月09日 | メモ
 メモ2020.2.09 ―自己表出と指示表出へ ⑤ 疑問点を考える 第一回
 


 下の第2図は、現在のわたしたちにつながる人間にとっての言葉のある段階の図示であり、[意識] → [有節音声] →[現実対象]、[対象像]となっている。

 第3図は、そのような[意識] → [有節音声] →[現実対象]というものが、時代とともにどのように変貌していくかという人間にとっての言葉の歴史性が図示されている。

 前回、 (疑問点などのメモ)2で、CからBへ結んだ線の意味がわからないと書いた。いろいろ考えを巡らせているうちに、第2図から第4図に渡って互いに対応しているのではないかということが見えてきた。今、下の図にその対応する個所をA、B、Cと同じ記号で記入してみた。すると、

 第2図は、A[意識] → B[有節音声] →C[現実対象]であり、
 第3図は、A[意識] → B[言葉(話し言葉、書き言葉)] →C[現実対象]であり、
 第4図は、A[意識] → B[言葉(話し言葉、書き言葉)] →C[現実対象]である。

 このように捉えると、一貫性があり、第4図でCからBへ結んだ線の意味がわからないとわたしが言っていたことが、解消するように思われる。おそらく、第4図の品詞図は、品詞によって自己表出と指示表出の度合がそれぞれ違うこと、その大まかな品詞の分布を表現することが主眼であり、A[意識]とC[現実対象]とは、当然のものとして省略されたのだろうと思う。

 第3図のA-B-Cを自己表出と指示表出の描く時代的な上限(限界)と見なせば、第4図はその時代的な上限(限界)の内で表現される言葉(各品詞)の現在の段階での図表化に当たっている。また、言葉(各品詞)の現在の姿は品詞区分も曖昧だった言葉の起源からの歴史性を持つもので、絶対的なものでもない。ちなみに、『定本 言語にとって美とはなにか』では、万葉集の歌の言葉を具体的に検討した後、次のように締めくくられている。


 わたしたちはこうして、品詞のもつ位相を自己表出性と指示表出性とによって、いいかえれば言語の構造を軸にして概括できそうだ。
 言語における詞・辞の区別とか、客体的表現や、主体的表現といったものは、二分概念としてあるというより、傾向性やアクセントとしてあるとかんがえたほうがいいことになる。また、文法論の類別はけっして本質的なものではなく、便覧または習慣的な約定以上のものを意味しない。品詞の区別もまったくおなじで、品詞概念の区別自体が本質的にははっきりした境界をもたないものだとみられる。   (P61-P62)



 最後に付け加えると、第4図は現在のものであり、そこから過去や未来の姿を考える時は、第3図の歴史性をイメージに加えればいいのだが、実際の像として図示してみると下の第4-2図のようになる。