OK元学芸員のこだわりデータファイル

最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

アゲハチョウの吸水

2022年05月13日 | 今日このごろ
 快晴のこの日、いつもの散歩道でアゲハチョウが吸水をしているのを見た。黒いアゲハチョウが4匹。

吸水するアゲハチョウ 2022.5.9 志井川

 この場所は、先日河床面の土砂を取り除いたところで、側面に排水口が開いていて水が落ちているところの少し下流。土砂の面は水面より高いが、ちょっとした雨が降れば水面下となる。染み出している水はきれいではない。ところによっては油膜が見える。
 チョウに興味を持ったのは中学生の頃で、その後はちゃんとした図鑑を買っていないから、知識がいいかげん。以下の記述も違っていたらご指摘いただきたい。左上のハカラスアゲハだろう。他の3匹はナガサキアゲハと思われる。しばらく見ているとすぐ近くにアオスジアゲハも来訪。暑くなるとチョウも喉が乾くのか。なぜきれいな水を求めないのか。

三種そろって吸水 2022.5.9 志井川

 学芸員のころには、各地に行ったから初めてみたチョウもたくさんあった。しかし、カメラは持っていてもシャッターを押すチャンスは滅多にない。化石産出地の沢を歩いて行くと、ちょっと開けたところで数十匹のチョウが集まって吸水しているところも見た。農家の庭先に踏み込んだ途端に、足元からオオムラサキが飛び立って驚いたこともあった。長崎の島では紫色の斑紋のある迷蝶(たぶんリュウキュウムラサキ)を見かけて、10分ほど追いかけたが帽子では採集も不可能であった。どれも写真は撮れなかった。

 この10日前には、別のアゲハチョウを見た。尾が長くて、前翅が白っぽかったから、たぶんジャコウアゲハだったのだろう。追いかけたが写真は撮れなかった。それから3日後に、もう一匹がツツジに止まっていた。今度は撮れた。大分傷んでいたがたぶんジャコウアゲハだろう。


古い本 その97 古典的恐竜8 1877年(つづき)

2022年05月09日 | 化石

1877年 Titanosaurus
 Marshの論文で使われていたTitanosaurusという属名は彼の提示したものではなく、同じ年の初め頃(月日はわからなかった)Lydekkerがインドの標本をもとに記載した属。その論文は次のもの。
⚪︎ Lydekker, Richard, 1877. Notices of new and other Vertebrata from Indian Tertiary and Secondary rocks. Records of the Geological Survey of India. Vol. 10, No. 1: 31-43. (インドの第三紀と第二紀の新種他の脊椎動物に関する知見)
 ここで「Secondary」というのは地質学史に出てくる古い地層名で、もともと岩石・地層を硬さや重なりから4つの時代のものに分けたことから始まる。第三紀と第四紀は今も使われている。その前の(地層なら下の)時代が第二紀で、化石が含まれてやや硬い地層や、一部の火成岩が含まれていた。現在でいうと中生代の地層はここに含まれる。「Primary」は、固結した古生代の地層や、深成岩・変成岩などを含む。
 Lydekkerは、Titanosaurus indicus を新属新種として提示した。この命名はインドで初めての恐竜の記載であり、アジア全体でも最初のものだという。標本はIndian Museumにある巨大な大腿骨と二個の巨大な尾椎とした。採集場所はインド中央部のJabalpurのLametasというところ。恐竜の化石の図版はない。しかし、文中に「脊椎骨はFalconerのPalaeontological Memoirs vol. 1, p. 418に短く記載され、Plate 34には図示されている。」となっている。その論文は次のもの。
⚪︎ Falconer, Hugh, 1868. Notes on fossil Remains found in the valley of the Indus Below Attok. and st Jubbulpoor. Palaeontological Memoirs and Notes of the Late Hugh Falconer, A. M., M. D. Vol. 1 Fauna Antiqua Sivalensis. 414-416, Plate 34 and its explanation. Robert Hardwicke, London. (Indus Below Attokの谷とJubbulpoorで見出された化石に関する覚書)
 表題でわかるように、Falconerの死去を悼んで発行された本である。初めにFalconerの肖像が掲載されている。

338 Falconer肖像 “Memoirs” Vol. 1. Plate 1. (1968)

 肖像画のページには、上の方に丸印があり、下の方にサインが入っている。丸印はこのpdfの原本が収蔵されている施設の印。”British Museum Nat. Hist.” “Palaeont Library” “Presented” “19 SEP 1968” と読めるから、発行された時に寄贈されたことがわかる。下辺にサインのようなものが印刷されている。

339 Falconersサイン “Memoirs” Vol. 1. Plate 1. (1968)

 自信がないが上段は「yours very truly」かな? 下段はサイン「H. Falconer」だろう。他のページにもいくつか書き込みがあるが、達筆で読めない。どうやら原本はCharles Falconer (H. Falconerの家族か)からColin MacRae という研究者に贈呈され、すぐに図書室に納められたようだ。死去を悼んで発行された本だから、どこかから写してきたものであろう。

340 “Memoirs” Vol. 1. (1968)中表紙

 内容の大部分はシワリク丘陵の新生代の脊椎動物化石に関するものであるが、他の地域からの断片的なものを扱った論文がかなりある。ここでは二個の脊椎骨が記載されているが、椎体の周辺がくぼんでいることが強調されている。これは竜脚類大型の竜脚類の脊椎骨では広く見られる形態で、軽量化のためと考えられている。Plate 34にそのうちの一個のスケッチが掲載されている。本文にbodyの全長が5.4 inches (約14.7センチ)としてあるから、思ったより小さい。

341 Falconer, 1868. Plate 34(一部) Jubbulpoorからの化石脊椎骨. 後の Titanosaurus indicus(後の)

 2003年にWilson and Upchurch はTitanosaurus についてレビューを行い、模式種の特徴とされた形態が「退行的」なものであることからTitanosaurus属の名称は捨てられるべきであるとした。さらにそれから派生した上位の分類群名(Titanosaurinae, Titanosauridae, Titanosauroidea)もまた使用しないという結論なのだが...。古い恐竜などの記載において、十分な特徴が記載されている例の方が少ないくらいだと思う。分類名の安定のためには、不十分な記載の種類があれば、適切な再記載をして使っていく方が安定した分類研究がしやすいのではないだろうか。文献は下記のもの。
⚪︎ Wilson, Jeffrey A. and Paul Upchurch. 2003. A revision of Titanosaurus Lydekker (Dinosauria – Sauropoda), the first dinosaur genus with a ‘Gondwanan’ distribution. Journal of Systematic Paleontology, Vol. 1, No. 3: 125-160. (「ゴンドワナ」型の分布を持つ最初の恐竜属、Titanosaurus Lydekker (Dinosauria – Sauropoda) の修正)
 Hugh Falconer (1808-1865) はスコットランドの古生物学者。1846から1849年にかけて発表した「Fauna Antiqua Sivalensis」は現在もよく引用される古典である。恐竜の文献さがしでこの人が出てくるとは思わなかった。
 Camarasaurus の項に登場したEdward Drinker Cope (1840-1897)・Charles Othniel Marsh (1831-1899)・Richard Lydekker(1849−1915)の三人はあまりにも有名な古生物学者であり、分野を紹介するだけでも手に負えないので紹介を省略する。
Titanosaurus, Lydekker, 1877 模式種:Titanosaurus indicus Lydekker, 1877 
産出地 Lametas, Jabalpur  インド

古い本 その96 古典的恐竜7 1877年(つづき)

2022年05月05日 | 化石

 Cope, E. D., 1877. On a Gigantic Saurian from the Dakota epoch of Colorado について前回の続きを書いていく。
 Camarasaurusが書かれているのは、No. 25 (1877) で、この中には次の項目が含まれている。一つ一つを独立した論文とみなすのが主流のようだ。
⚪︎ Verbal communication on a New Locality of the Green River Shales containing Fishes, Insects and Plants in a good state of preservation. p. 1. (良い保存状態の魚類・昆虫類・植物を含むGreen River 頁岩の新産地に関する会話での連絡)
⚪︎ On a New Species of Adocidae from the Tertiary of Georgia. pp. 2-4. (Geogia州の第三系からのアドクス科<亀類>の新種について)
⚪︎ On a Gigantic Saurian from the Dakota epoch of Colorado. pp. 5-10.  (ColoradoのDakota時代からの巨大な爬虫類)
 「Dakota epoch」というのがよく分からない。地質年代の細分でEpochというのは使われるが、現代のリストではDakota epoch は見当たらない。Epochではなくて小文字なのも意味があるのか? Cororado州なのにDakotaという地名はいくつかあって、デンバーの西の山に幾つか見られる。そこの地層にある「Dakota Group」の年代ということだろう。産地はデンバーの南西のCanyon Cityから遠くないところ、となっている。なお、Dakotaの名前は、ちょっと北にある南北ダコタ州のともに、先住民族の名前に由来している。
 7ページにCamarasaurus supremusという見出しがあって、その上にこれまでに知られていない種類であると書いてあるから、新属新種の提示である。図版はない。この論文の発行日付は1877.8.23であることを記しておく。あとで関係してくるから。

335 Cope, 1877. p. 7.

 Copeは、この論文を書いたすぐあとに、Camarasaurusに関する別の論文を投稿した。今度は私的な発行物ではなく学会誌である。
⚪︎ Cope, Edward Drinker, 1878. On the Vertebrata of the Dakota Epoch of Colorado. Proceedings of the American Philosophical Society. Vol. 17: 233-247, Plates 1-9. (Colorado 州のDakota時代の脊椎動物について)
 この論文は、1877.12.21の学会講演の記録の形で出ている。印刷物の発行は1878.1.12となっている。今度はスケッチが14枚ついていて、9ページの図版にまとめられている。スケッチは線画であるがあまり出来は良くない。ここではPlates 1,5を紹介する。

336 Cope, 1878. Plate 1. Camarasaurus supremus 頸椎と胴椎 胴椎の横幅約100cm

337 Cope, 1878. Plate 5. Camarasaurus supremus 肩甲骨 最大長約150cm

 この講演記録の形の論文は247ページまでのものだが、すぐ後の277ページから数ページを使って、1877.12.21の学会の記録が記してある。18人の出席で、副会長のMr. Fraley が座長を務めたとある。279ページの下端に「Cope教授がLamarasaurusなどの実物大の脊椎骨・大腿骨などの巨大な化石爬虫類のスケッチを示した。」とし、その記載がこの本にあるともしている。LamarasaurusはもちろんCamarasaurusの誤植だろう。つまり、Copeの研究内容は、口頭で1877年末の学会で発表されていた。
 Cope, 1878論文の237ページにちょっと面白い記述がある。抄訳すると「私がCamarasaurusを記載する直前に、Dr. Marshは100マイルほど北のDakota層から爬虫類の仙骨の記載を公表した。Prof. Marshはそれに Titanosaurus montanus という名を与えた。しかし、この名前は属の特徴や種の形態に関する記述を伴っておらず、命名のルールに適合しない。」という。なるほど、仲が悪かったんだ。MarshのTitanosaurus新種記載論文というのは次の論文。
⚪︎ Marsh, Othniel Chaeles 1877. Notice of a new and gigantic dinosaur. American Journal of Science and Arts, ser. 3, Vol. 14, Art. 13,: 87-88. (新種の巨大な恐竜に関するノート)投稿日付 1877.6.20 
 簡単な記述で、図版はない。Copeは「仙椎をもとにして」としているが、他に後肢の骨があったと記してある。投稿日付が6月下旬とすると、発行は早くて7月上旬だろうか。Copeはそれを読んでから8月23日付の自分の発行する「ジャーナル」を(多分急いで)発行したわけだ。命名規約上の問題は何もない。
 以上の調べから次のデータが正しそう。
Camarasaurus Cope, 1877. 模式種: Camarasaurus supremus Cope, 1877. 記載は1877.8.23
産出地 Dakota, Colorado州 アメリカ

2022年4月のアクセス数

2022年05月01日 | 今日このごろ
Access analysis of this blog: April 2022

本年4月の当ブログの状況をご報告する。

P:投稿数9。定期投稿(4日に一度)8回と臨時投稿1回を行った。
 現在「OK元学芸員」で検索すると最初に正しい当ブログの項目が出てくる。「当ブログの内容を参考に記述しているブログはいくつかあるようだ。
 当ブログのアクセス数の統計記録をとっている。記録項目は、閲覧回数 訪問人数 同一プロバイダー中の訪問人数順位 同一プロバイダーにあるブログの総数 の各数字で、土曜日毎に一週間の集計もされている。なお「PV:閲覧回数」はその日のアクセス総数、IV:訪問人数は同一の方の重複を除いた数字。
PV:閲覧回数 222.2 (298.5)
IV:訪問人数 131.3 (166.0)
R:同一プロバイダー中の訪問人数順位 9204 (7,834)
以上は平均値
TB:そのブログ総数(平均ではなく月末) 3,103,514 (3,097,960)
R/TB:訪問人数の順位比率平均値 0.297% (0.253%)
カッコ内の数字は前々月(2022年3月)の成績。

グラフ:先月のアクセス数。青:閲覧回数 赤:訪問人数
傾向線を記入した。

先月の閲覧回数・訪問人数は、はっきりと減少した。大きな増減があって全体に低く、しかも減少の傾向が強い。例えばブログの順位が1万位以下になった日は13日もあった。今年1月から3月までの1万位以下の日数は、それぞれ、3日・1日・3日だったから、記録的な低調な日々だったことになる。ブログ全体の件数が少し増していることを考慮しなければならないが、その順位で見てもかなり悪い。順位の全体に対する比率では、0.2968%と、かろうじて0.3%に達しなかった。

D:開設後の日数 4,453日 (4,423日)
TP:投稿総数 1,493回 (1,484回)
TPV:総閲覧回数 1,409,375 (1,402,708)
TIP:延べ訪問人数 536,040 (532,102)
投稿総文字数概算 1,590,660字 (1,572,232字)
投稿総写真数概数 6,052枚 (6,022枚)
カッコ内の数字は2022年3月末の成績。
 3月から掲載した癌治療の記録をは、4月25日に終了した。「古い本」シリーズは、まだまだ「在庫」がある。作成してある「在庫」は、今年11月下旬まである。(先月のこの項目で「来年11月」としたのは誤り。)ご時世でしばらく旅行はできそうにない。逆に外に出ないから記事を書きためる時間が十分にあるが、「ネタ切れ」の様相がはっきりしてきた。本来の近況、とくにその時の旅行の記録を記すことができるのはいつの日か。
 皆さんがバックナンバーをずいぶん見ていただいているのが励みになる。実際に、アクセス記録を見ると、掲載直後に新しい記事のアクセスがあるが、それ以外のアクセスは非常に古い所に散らばっている。皆さんのコメントがほとんどないのは残念。見ていただいていることを実感したいので、よろしく。ご本名でなく私に分る程度の「ペンネーム」で記入戴くとありがたい。

2022年4月の記録:

宅地の造成

 徒歩10分ほどの所で、やや大規模な宅地造成が行われている。元は森になっていた所だったが、足を踏み入れたことはない。30戸以上の分譲住宅になるようだが、現在大木を全部伐採した所で、全体をブルドーザーが走り回って高低差を均している。

宅地造成 2022.4.10

地層のようす 2022.4.10

 ほとんど成層した地層が見られないがわずかに黒い層が重なっているような所がある。

地層のような構造 2022.4.23

 この場所は関門層群ではなく古生代の地層が風化したもののようで(「北九州市地質図」による)、化石は期待できない。一個だけ風化していないところの石を持ち帰ったが、化石らしい痕跡はなかった。残念。

クローバー


クローバー 2022.4.28 自宅近く

 写真の中に四つ葉がある。
1本見つけた方。まあまあ。
2本見つけた方。普通。
3本見つけた方。かなりの熟達者。
4本見つけた方。名人。
6本以上見つけた方。超名人かうそつき。

 ちなみに、4本の他にかなり疑わしいのが1本あるので、5本の方の評価は書かないでおこう。私は4本見つけて写真を撮って帰り、それを詳細に見て疑わしいのが他にあることに気づいた。いつもたくさん見つけるから、形がよほど良くないと持ち帰らない。

漏水

 いつもの喫茶店への散歩道で、志井川をわたる水道管が漏水しているのに気づいた。

漏水 2022.4.22 志井川一二三橋

漏水 2022.4.22 志井川一二三橋

 喫茶店でコーヒーを飲んでから、水道局に通報した。思った通り他に通報した方がいたらしくて、「すでに対応中。通報ありがとうございます」ということだった。
 帰るときには工事車両が数台いて、まさに着手のところ。

漏水修復作業 2022.4.22 同

 野次馬の一人として見ていると、長い梯子を川に下ろして、ベテランらしき方が登り、パワーシャベルのアームを橋からさしのべて、器具や工具を渡した。「管の溶接のところに穴が開いた」という会話が聞こえた。川の上だから道を掘らなくて良いし、何と言っても漏れた水が被害を及ぼす可能性がないから、たちが良いのかもしれない。

漏水修復終了 2022.4.23 同

 翌日見ると、漏れたところに三ツ割の鋳物のカバーをかぶせて、ボルトで止めてあった。多分内部にパッキングをあててあるのだろう。管の劣化や歪みのために破断が進む可能性がちょっと気になる。

 5月のカレンダーをお届けする。四隅にカットのための目印(いわゆるトンボ)を入れた。写真用光沢紙を用いるとよい。


 5月の画像は、竜脚類のティタノサウルス。Falconerの最初の論文の図からとった。Titanosaurus属の命名は1868年で、アジアで最初の恐竜命名。100年ぐらい前までにアジアからの恐竜属の命名はこれが唯一。その頃までに命名された恐竜属はヨーロッパ・北アメリカからがほとんどで、例外はこのTitanosaurus(インド)の他に1923年(わずかに100年に達していないが)のProtoceratops と 同年のPsittacosaurus(いずれもモンゴル)の3属。恐竜以外の絶滅中生代爬虫類を加えても、ニュージーランドからモササウルス類のTaniwasaurus (Hecter, 1874) があるぐらい。
 ちなみに、カレンダーの右下に「Collection of Old Literatures on Dinosaurs in 19th Century」としてあるのは、最近家にいる時間が長いので、古い論文をネットで探した成果のファイル名。略称は「COLID-19」である。