OK元学芸員のこだわりデータファイル

最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

ちょっと温泉に

2022年05月21日 | 今日このごろ

 コロナ関連の割引を利用して温泉に行ってきた。目的地は佐賀県の嬉野温泉。昨年12月に池袋の化石・鉱物ショーに行って以来の県境越えである。自家用車で出かけたから、鉄道乗車はない。九州自動車道で鳥栖に向かう鉄道の場合、鹿児島本線は一度佐賀県に入ってまた福岡県にもどるのだが、高速道の場合は、県境上を通るから、何度県境を越えたか定かではない。一応片道3回越えたとカウントしておこう。
 最初の訪問地は武雄の御船山楽園。花がきれいな所だが、ツツジが終わったばかりで、ほとんど何もない。二つの急峻な岩山が、掛尾温泉駅の方からよく見える所。この山は中新世の流紋岩岩頸とされているようだが、新しい論文を読んでいないので確かではない。古い論文では「ジルコンによる年代」となっているが、どうやらフィッショントラックではなく、群色と呼ばれるジルコンの色に基づく年代らしい。

1 御船山楽園から見た岩頸のひとつ。 2022.5.18 武雄

 園内が坂道ばかりなので、全部歩くのはあきらめて宿泊地の嬉野へ。ホテルに着いたが、時間が早いので喫茶店を探しに散策。途中「豊玉姫神社」というのをみつけて、参拝に。豊玉姫は竜宮城の住人で、浦島太郎を歓待した神様。姫のお使いはナマズの形で現れるのだそうだ。地震災害が多いからここに安全をお願いしておこう。

2 豊玉姫神社参道 2022.5.18 嬉野

 大阪層群で見つかった「マチカネワニ」は、当初Tomistoma属として命名された(Kamei and Matsumoto in 小畠・他, 1965)が、1983年に新属として記録された(Aoki, R., 1983)。その新属名が、豊玉姫から由来する「Toyotamaphimeia」なのだ。それで境内の写真を撮らせていただいた。なお、最初の論文の筆頭命名者は小畠信夫・大阪大学教授で、よみは「こばたけ」である。同じ頃科博に恐竜の本をたくさん出された小畠郁生氏がいたから、まちがいやすい。そして、記載部分の著者Kamei and Matsumoto は、京都大学の亀井節夫教授と国立科学博物館の松本英二博士である。古生物学・地質学には松本姓の先生が多いからまちがいやすい。1965年の小畠信夫以外の共著者は千地万造・池辺展生・石田志朗・亀井節夫・中世古幸次郎・松本英二の諸氏(敬称略)で、私はとっては(小畠先生にはお会いしていないが)大変お世話になった先生方である。
 新属名が-phimeiaであって-himeiaでない理由は知らない。Aokiの論文にはそっけなく「Toyotamaphimeia, a Japanese goddess of the crocodilian incarnate.(豊玉姫;日本のワニの化身の女神)と書いてあるだけ。昔(平安時代頃)の日本でphiと発音したのかもしれない。しかし、その時代に日本にいないワニに化身する神というのが想像できるのだろうか。神社の建立は古く、1573年から1592年の間に戦火で焼失、その後再建という。「戦火」というのは、1586から87年の秀吉の九州出兵かな?歴史に興味のある方はお調べ頂きたい。
 境内にはいくつかの白いナマズの像がおいてある。

3 豊玉姫神社のナマズ 2022.5.19

 手水舎には温泉街らしく暖かい手洗いがある。注意書きがあって、温泉のため飲めないそうだ。手水舎にもワニの使いのナマズが。

4 手水舎のナマズ 2022.5.19

5 豊玉姫神社の揭額 2022.5.19

 スマホで出てきた喫茶店6軒をまわったが、一つも営業していないか業態が変わっていてカラオケ店だったりして、一度も座ることなく1時間ほど散歩してホテルに戻った。 
 翌日の帰途、博多の有名うなぎ店Yで昼食をとって帰宅。