ホルモン屋徒然草~珍しホルブロだ

新米ホルモン屋の親爺の日々。ホルモンのこと、店の出来事、周辺の自然や話題。

かしら

2007-06-22 08:41:29 | ホルモン・肉
「をかしら屋」の「を」は尾、「かしら」は頭。
「頭から尻尾まで食べ尽くす」のが「をかしら屋」のコンセプト。

当店のメニューにはもちろん「Pカシラ」が。
好評のオリジナルラーメン「コラー麺」のスープにも、粒(つぶ:豚の頭・顔そのまんま)が一頭分は行っていますし、トッピングにはスープに使ったかしら肉が。「かしらチャーシュー」も別添であります。

かしらは好評なんですよ。「かしら肉」ってなもんで、肉と同じ味ですし、歯応えがいいのは頬の筋肉ですよね。コラーゲンたっぷりです。
なかなか他では味わえないようで、皆さん喜んで感想を述べてくれます。

カシラ肉はいわちくさんでは、「ほほ肉」と「コメカミ」に分けて販売しています。
当店の「Pカシラ」は「ほほ肉」が主体。
「コラー麺」のトッピングは「コメカミ」、カシラチャーシューは「ほほ肉」を使っています。

ちなみに、この間までスポットで「牛カシラ」をメニューにしていました。ちょっと焼肉には固い。噛み応えが、あり過ぎ?
牛のカシラ肉はよく洋食の煮込んだ料理で提供されます。
良く動かすところですから筋肉が発達しているのかな。だから、煮込むとびっくりするほど柔らかくおいしくなる。弾力のある部位はコラーゲンが入っていますから、いいおだしがでるわけです。

さて、この豚カシラ肉(片仮名、平仮名混じっていますが気にしないで、なにせ気まぐれなパソコンですから)。一昔はソーセージ材料に使われていました。
食感、味が肉と同じですからソーセージには良くあいます。
ただ、分類上は内蔵ですから、「豚肉」とは表示できません。日本には、大昔に作った規則や法律がそのまま残っていますから。

ところが、最近、ソーセージ材料に使われなくなった。
なぜか。
答えは、「毛」です。カシラですから顔の部分。食肉工場のラインできれいに毛をそってくるんですが、やはり毛がつくことがあるんです。
それに、トンソクもそうだけど、死んでも毛は伸びます(以前、この件は書いたかな)。
で、厳格な日本の消費者、というよりクレームに敏感な流通側から攻められる。
次の項で書き直しますが、日本ではこの「毛」は不純物の混入となるんです。おおらかで、昔から肉を喰う習慣のあった欧米ではそんなことはないはずなんですが。
潔癖症で、最近は流通もマスコミも過敏ですから、触らぬ神に祟りなし、とソーセージメーカーはカシラ肉を使うことをやめました。
国産のカシラ肉を使うより、輸入の屑肉を使う方が安いですし。
食肉工場も、「毛一本ない」カシラ肉を作るのは大変です。一日何トンもでるカシラ肉から一本の毛も出さない。水洗い工程を繰り返し、目視検査を徹底するのには相当な手間とコストがかかります。
でも、カシラ肉は内蔵ですから高く売れるわけではありません。
この悪循環で、カシラ肉はますます安くなり、ますます売れなくなったわけです。

人間様のために命を落とす豚さん。余すことなく食べ尽くし、食べれないところは革製品のように工夫して使いこなすことが、豚さんの成仏につながると思います。
だから、こんな情況は困ったものなんです。

ここまでこのブログ記事を読んで、「なんで毛の異物混入を正当化しているんだ。プンプン。」と少し怒っている人も多いでしょう。
わからないと思いますが、書いてみます。
次の項でも書きます。

動物を喰うにはそれなりの覚悟と知識が必要です。
「肉」を喰うには、その肉がどんなふうにして作られたか、その豚さんや牛さんがどのように育てられているのか、知る必要があります。
食用の家畜と長い歴史のある国々では、この事が遺伝子(DNA?)となって子孫代々伝わっていますから、畜産からと畜、食肉製造への理解があります。余すことなく肉・内蔵(詳しく言えば、食肉・副産物・副生物)を使っています。
目の前にあるテーブルミートとなった「お肉」がどのような過程で作られたかわかったいるんですね。
だから、赤身の肉に脂肪が付いているのも、ときどきは肉まわりのものが付着しているのも自然なことなんです。
今どきの都会人は、真っ白な肌をしたきれいに洗われた大根より、畑の土がついて新聞紙に包まれた大根、葉も伸び伸び付いて虫に食われた跡がある方が「自然でいい!!」と売れるんですって。
同じなんですよ。自然物、植物(野菜・果物)も動物(豚肉・鶏肉・牛肉)、魚(鮮魚)も。
自然物だから規格にあわないものもあるし、一つ一つ違う個性があるし、好きなところだけ摂取したら循環しないし。自然の恵みって、自分の好きなところだけきれいに取れるわけじゃないんです。時には自然の印、ネギの葉の間に付く土や、リンゴに巣くう虫や、鰹の内蔵に付着する虫や、洗いきれないでホルモンの脂にただよう藁や、トンソクやカシラに付着したり伸びてきた毛や、果汁にただよう種のかけらや、そんなものが一緒に入ってきてもおかしくないんだと思います。

長くなりました。

長くなりついでに、もう一つ。

このカシラ肉。
これをおいしく食べている地方(都会ですが)があります。
埼玉県東松山市です。
ここの焼鳥、有名ですね。辛味噌だれで食べる「豚カシラ」の焼鳥です。
詳しくは、「ここをクリック」。
なんせ、日本で唯一、やきとり組合まであります。何軒もの焼鳥屋が狭い街にひしめいているみたいです。
なかでも有名な「かしら屋」。おっと、「をかしら屋」ではありません。本店「若松屋」のほかにも、大宮・浦和に何店舗か。
浦和の店に行ってみました。
なんせ、「カシラ串」しかでません。いやメニューは他にあるのに、黙っていても目の前のさらにポンとカシラ串が。食べ終わると、何も言わなくてもまたカシラ串が。
お客様の食べ具合を見て、四六時中焼いているカシラ串がタイミングよくでてきます。まるで花巻名物「わんこそば」ですよ。
もうまいった、というまで出てきますよ。(すいません、「もうまいった」はわんこそば。椀を伏せるまででてきます。)
辛味噌だれで何本でもいっちゃいます。20本くらいはたいらげたでしょうか。

このスタイル。カシラ串が看板の、もう一つの「をかしら屋」をたてるのが夢です。

どなたか太っ腹のスポンサーさんはいませんか。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。