ホルモン屋徒然草~珍しホルブロだ

新米ホルモン屋の親爺の日々。ホルモンのこと、店の出来事、周辺の自然や話題。

(仮題)誕生日の夜、そして雪の朝「ハンバーグのベル」でモーニングセット

2015-03-04 11:33:34 | をかしら屋
(続き)

昨日、
誕生日の昼、
ランチタイム。
前の日の絶不調からやや立ち直り、
豚内臓赤物6頭分をパーツに切り分ける。
ランチをこなしながらであるが、これが精一杯。
当店の場合は「舌の先から尻尾まで食べ尽くす」のがモットーであるから、
他店では捨てるところも細分化しパーツにする。
余計、手間はかかる。

いつものランチタイム。
開店間もなく、近くの会社のご一行様、ほか一組。
サラリーマン主体だから、12時前に来る客は少ないのだが。
そして、彼が来ると店がとたんに賑やかになって嬉しい。
いつものお決まりのオーダーで、ついにカレー丼はしばらく品切れか。

13時前、当店に珍しいご婦人の団体。
ランパス持って店漁るようなご一行様が、何を間違ったか迷い込み、「モツ煮丼」5つ。
せっかく婦女子にはまれな類の店に入ったのだから、いろいろ頼めばいいのだが、こういう団体にはカシラとそれに従う決まりの取り巻きという棲み分けが出来ているのだろう。
会計時に、あらっ「ワンコインランチ」にすれば良かったと。
そりゃ今日のワンコインランチは「コラーゲン丼」だもんね。
まぁ、間に合うかどうかは別にして。
覚悟はしていたが、コーヒーメニューを外していたおかげか定刻前にお帰りになる。
普段、旦那さんたちが利用する店を彼女たちはどう思ったか。

いやいや、味や内容はもちろんとして、会話とかその雰囲気を逸脱しないことが彼女たちには大事なのだろうと。
それはそれで、良し。

昼賄いは前日の分(リンゴ一個)を取り返そうと、ホルモン煮込み豆腐丼。
味はシンプル、上品なので、辛味噌を横に据えて食す。

体力保持と(体重保持ではない)長いシエスタ。
欠かせぬ習慣。
短めの夜の睡眠時間を補う。
問題は夜も昼も、食後すぐ寝ることで、胃袋だけ起きているのが辛いのか最近はよう怠けて、起床後の調子が悪い。
要因ははっきりしているが抜け出せない習慣もあると割り切りたいが、ここのちころ胃腸薬の世話になっているのは、らしくない。
らしくないのは、よろしくないのだと思う。
思うが、食べると睡魔が現れ、たちまち寝つく良い子は、その悪しき習慣から抜け出せるのかな?

夜の部、
火曜日は岩泉産「黒豚内蔵」の入荷日。
たんねんに一頭分の内臓を仕分けする。
17時半、下処理終了。

2週続いた雄豚のあとは、まだそんなに歳を召していないと思われるメス。



直腸にコブクロが付随していると、メス。



産道、子宮のほかにも部品多数あり、「黒豚内臓セット」は賑やかになる。
ワタシと常連N氏が密かに名付けた「彗星と星」は果たして卵巣なのか。
あのプチプチ感は他にないのである。

18時前、これから11名入れるかと電話。
その5秒後に現れしサラリーマン連盟。

3月3日は桃の節句であり、女児を持つお父さんは上司の様子を窺いながら早めに家に帰るから、外食、とりわけホルモン屋という男臭い店には暇な特異日である。

そこに現れし11名の天使。
しかるに、こちらはロンリー店主。
追い打ちをかけてホルモンヌ2名が「ごちゃ混ぜホルモン食べ放題スペシャル」を注文。

11名は「せんべろ」で、こうなりゃと生ビール11名×2杯=22杯と、キャベツ盛りとホルモン・豚バラ盛りを一気に出して、ホルモンヌ仕様のキレイなごちゃ混ぜホルモン+キャベツ+乙女の大盛りごはん2つをを仕上げる。

息が切れたころに、見ていたように助っ人の相方現る。

サラリーマン軍団は酒だビールだコブクロだ牛ハラミだなんだかんだと猛進攻。
相方も普段になく動き回る。

動きながらも愛する相方の餌を与えなくては。
なにせガソリンが切れるとたちまちエンストを起こし、さらに反抗期に入る。

今夜はチキンライスならぬポークケチャップライス。

うん、オイシイ。

相方が手伝いに来るようになって、ワタシの成長もいっそう目立つようになってきた。
原因は夜賄いで、それまでは昼賄いから仕事を終わって事務所でくつろぐ深夜まで固形物を摂取しなかったものが、相方の夜賄いの相伴にあずかることにより一食分のエネルギーが付加されたことによる。
これもまた、原因ははっきりしているがそうそう止まらないものである。
しょうがないから、行くところまで行くかと、ズボンの胴回りとベルトの穴を気にしながら覚悟を決める。


かけずりまわった夜の営業。
助っ人の相方が早めに帰り、客が退け、後片付けを小一時間して業務終了。

誕生日の、思いっきり区切りのいいはずの誕生日の夜は、やはり男子らしく港に出よう。
男には波止場が必要なときもある。



港にはバローロと、



ボルドーの有名シャトーのセカンドが待っていた。

そして、ある男とホスピスの物語をじっと聴く。

そのホスピスが清瀬にあると聴き、あの方を思い起こす。

吉行淳之介。
彼は肺結核の除去手術を清瀬の病院で行い、その入院中に芥川賞を受賞した。
清瀬というと、その不安げな透明感がワタシを包む。

話はずれるが吉行は喘息も患い(というかアレルギー系はあまた)、闘病記も多く書き残している。
闘病なのかおつきあいなのか、同じアレルギー持ちとしてはとても共感するものがある。

そのせいか、そもそもの文体が好きなのか、彼の名字と若くして無くなった大好きな従兄弟の名が同じだからなのか、吉行はワタシにとってとても大事な作家である。





波止場で「じっと手を見」たりしながら、店に戻り畳に寝る。

「マッサン」のために眠い目をこすり起きると、店の玄関から見る下界はいつのまにか雪であった。

二度寝を少し。

9時過ぎに意を決して起き上がり、NTTの支払いに近所のコンビニ。

帰りに「ハンバーグのベル」に立ち寄る。
この人気店が朝9時から11時までモーニングを出しているのだ。
コンビニでサンドイッチを買う金で、落ち着いた暖かい店でコーヒーとトーストにありつけれると思えば、もちろんそのモーニングセットを選ぶ。

外套のポケットには、最近、100均で「1.5」に買い直した眼鏡と(年ごとに進むものだ)、店の本棚からその吉行の文庫本「淳之介養生訓」を入れておいた。

奥の落ち着いた席に陣取り、少し読書に耽るか。





そうそう、大事な「モーニング」は298円(ドリンク、トースト、卵付き、税別)からというお安い値段。
今日は張り切って、チーズトースト(100円プラス)に替え、イチゴヨーグルト(100円)を追加。
コーヒーはおかわり(100円)した。

いつもならこの時間は事務所で帳簿つけなどの仕事。

朝にこうすごすのは贅沢のきわまりと言えよう。

大降りのコーヒーカップの湯気の間に、庭の柿の木に止まる雀のような羽根安めの短いシアワセを想う、誕生日の翌日の朝。