ホルモン屋徒然草~珍しホルブロだ

新米ホルモン屋の親爺の日々。ホルモンのこと、店の出来事、周辺の自然や話題。

レモン果汁

2007-06-22 10:13:52 | 第1紀 生きる
で、「カシラ」記事の続きです。
食文化について少しだけ、前のは長文でしたから短くふれます。

最初の会社で飲料の本部担当を勤めていたころ。
フランスのレモン果汁のメーカーとライセンスを結び、レモン100%果汁を販売しました。
レモン果汁というと「ポッカレモン」。圧倒的なシェアです。飲料というよりは調味料として使われてきたレモン果汁を、100%レモンとして飲料としても訴求する事にしました。

このレモン果汁。いろいろなことを学びました。本当に語り尽くせないくらい・・。
その中で印象的な事を一つ。

このレモン果汁。原料はフランスの工場から直接仕入れるんです。
新製品として爆発的に売れましたから、まずぶつかったのが原料入手。
販売予算がたてれず大狂い。でも原料は遠い国から輸入。
船便ですよね、普通は。でも欠品が重なり、営業支店から、大手量販店からクレームが来て、しかたなく空輸。
輸送費だけで原価が飛び跳ね、大赤字でした。

たくさん売れると、比例してクレームも多発。
そのほとんどが、「異物混入」と「変色」。
対策を練ったんですが。フィルターとか、当時珍しい冷蔵コンテナでの配送とか。
でも、根っこは原料だと。特に生産本部・工場が強硬に言い張る。

フランスから若社長が来日しました。これが絵に描いたようなフランス青年。背が高くノーブルです。
片言の英語とフランスに留学していた相棒の通訳で、けっこう仲よくしたんです。
で、このクレームについての彼らの見解は、「当然あり得る現象ですね。自然なものを、その良さを壊さないように製造しているんだから。」。
自然果汁の良さを詰めているんだから時にはレモンの種のかけら(これが我が日本の異物混入のクレーム対象)は入ります。自然の味を活かすように作っていますから、夏の暑い時は果汁の色は変化しますよ。当然味にも少しは影響します。
と、涼しい顔です。
「ナニガ、オカシインデスカ。コレガ、シゼンデス。」みたいに。本当になぜクレームとなるのか不思議そうでした。
フランスではこんなクレームはありません。

もっとも、日本では一万分の一(一万個に一個)のクレームがあれば品質管理上、大きな問題となりますが、欧米では10万個に一個あれば、となるようで一桁おおらかなんですが。・・これは余談として。

そう自然の恵みだから、あったり前よ。と、私も思うんです。
でも、会社に戻ると、そこは日本国。
再現性のない商品は(つまり少しでも違う商品があったら)全てクレームにつながる「悪い」商品なのです。

ははっ。なんだろう、この求められる厳格さは。

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次の会社でも、18㎝の長さのパンから少しでもはみ出たり短いウインナーは返品。脂身が一ミリでも厚い豚ロース肉は返品。トンソクの指の間にほんの少しだけど、たぶん死後、生えてきた毛が混入していれば大手量販店から始末書および売価返品(売りもしないのに、販売リスクを負えという傲慢さ)と欠品保障を求められる。
東京の主婦からは、「このカルビ。脂身があるからイヤ。」と返品。おいおい。
どのハムメーカーもそうだが、生き物を加工したハムの重量はまちまちで当たり前なはずなのに、求められるのは「同じ重量表示」の規格品。しょうがないから大きいものを入れる。「500グラム」と全て表示せよとなれば、全て500グラム超。景品表示法もJAS法も、表示より少ないのは違法だが、多いのは認められるから。
なんせ、「あの方に送ったハムより、そちらの方に送ったハムが見た目少ないんです。」といクレームはあるし。お利口な主婦さん達は、表示重量が同じでも実際は大きいのがあることがわかっているから、特売なんかでは手で重量を図りお求めになる。

ちょっと話はずれたけど、なんだろう、この潔癖性を求める兆候は。
確かに口にするものだから慎重を重ねなければいけない。
でも、ほとんどの食品は生きているものから作る。人間にも、だから多少の差を受け入れる体ができている。
たぶん、ハムが豚から、ステーキが生きている牛から、フライドチキンが鶏から、豆腐が大豆から、ご飯が農家だ手をかけて作る米から、じゃがいもが土の中から掘り出されることが、こんなことがわからない人、実感できない人が増えているんだろうな。

自然を自然として受け入れることができないのかな。

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このフランス産原料のレモン果汁。
確か二年で生産中止となりました。
私も責を問われ(たのかな)、別の製品担当に異動となりました。

勉強になったんです。その後も食品に携わる者としての私に。

かしら

2007-06-22 08:41:29 | ホルモン・肉
「をかしら屋」の「を」は尾、「かしら」は頭。
「頭から尻尾まで食べ尽くす」のが「をかしら屋」のコンセプト。

当店のメニューにはもちろん「Pカシラ」が。
好評のオリジナルラーメン「コラー麺」のスープにも、粒(つぶ:豚の頭・顔そのまんま)が一頭分は行っていますし、トッピングにはスープに使ったかしら肉が。「かしらチャーシュー」も別添であります。

かしらは好評なんですよ。「かしら肉」ってなもんで、肉と同じ味ですし、歯応えがいいのは頬の筋肉ですよね。コラーゲンたっぷりです。
なかなか他では味わえないようで、皆さん喜んで感想を述べてくれます。

カシラ肉はいわちくさんでは、「ほほ肉」と「コメカミ」に分けて販売しています。
当店の「Pカシラ」は「ほほ肉」が主体。
「コラー麺」のトッピングは「コメカミ」、カシラチャーシューは「ほほ肉」を使っています。

ちなみに、この間までスポットで「牛カシラ」をメニューにしていました。ちょっと焼肉には固い。噛み応えが、あり過ぎ?
牛のカシラ肉はよく洋食の煮込んだ料理で提供されます。
良く動かすところですから筋肉が発達しているのかな。だから、煮込むとびっくりするほど柔らかくおいしくなる。弾力のある部位はコラーゲンが入っていますから、いいおだしがでるわけです。

さて、この豚カシラ肉(片仮名、平仮名混じっていますが気にしないで、なにせ気まぐれなパソコンですから)。一昔はソーセージ材料に使われていました。
食感、味が肉と同じですからソーセージには良くあいます。
ただ、分類上は内蔵ですから、「豚肉」とは表示できません。日本には、大昔に作った規則や法律がそのまま残っていますから。

ところが、最近、ソーセージ材料に使われなくなった。
なぜか。
答えは、「毛」です。カシラですから顔の部分。食肉工場のラインできれいに毛をそってくるんですが、やはり毛がつくことがあるんです。
それに、トンソクもそうだけど、死んでも毛は伸びます(以前、この件は書いたかな)。
で、厳格な日本の消費者、というよりクレームに敏感な流通側から攻められる。
次の項で書き直しますが、日本ではこの「毛」は不純物の混入となるんです。おおらかで、昔から肉を喰う習慣のあった欧米ではそんなことはないはずなんですが。
潔癖症で、最近は流通もマスコミも過敏ですから、触らぬ神に祟りなし、とソーセージメーカーはカシラ肉を使うことをやめました。
国産のカシラ肉を使うより、輸入の屑肉を使う方が安いですし。
食肉工場も、「毛一本ない」カシラ肉を作るのは大変です。一日何トンもでるカシラ肉から一本の毛も出さない。水洗い工程を繰り返し、目視検査を徹底するのには相当な手間とコストがかかります。
でも、カシラ肉は内蔵ですから高く売れるわけではありません。
この悪循環で、カシラ肉はますます安くなり、ますます売れなくなったわけです。

人間様のために命を落とす豚さん。余すことなく食べ尽くし、食べれないところは革製品のように工夫して使いこなすことが、豚さんの成仏につながると思います。
だから、こんな情況は困ったものなんです。

ここまでこのブログ記事を読んで、「なんで毛の異物混入を正当化しているんだ。プンプン。」と少し怒っている人も多いでしょう。
わからないと思いますが、書いてみます。
次の項でも書きます。

動物を喰うにはそれなりの覚悟と知識が必要です。
「肉」を喰うには、その肉がどんなふうにして作られたか、その豚さんや牛さんがどのように育てられているのか、知る必要があります。
食用の家畜と長い歴史のある国々では、この事が遺伝子(DNA?)となって子孫代々伝わっていますから、畜産からと畜、食肉製造への理解があります。余すことなく肉・内蔵(詳しく言えば、食肉・副産物・副生物)を使っています。
目の前にあるテーブルミートとなった「お肉」がどのような過程で作られたかわかったいるんですね。
だから、赤身の肉に脂肪が付いているのも、ときどきは肉まわりのものが付着しているのも自然なことなんです。
今どきの都会人は、真っ白な肌をしたきれいに洗われた大根より、畑の土がついて新聞紙に包まれた大根、葉も伸び伸び付いて虫に食われた跡がある方が「自然でいい!!」と売れるんですって。
同じなんですよ。自然物、植物(野菜・果物)も動物(豚肉・鶏肉・牛肉)、魚(鮮魚)も。
自然物だから規格にあわないものもあるし、一つ一つ違う個性があるし、好きなところだけ摂取したら循環しないし。自然の恵みって、自分の好きなところだけきれいに取れるわけじゃないんです。時には自然の印、ネギの葉の間に付く土や、リンゴに巣くう虫や、鰹の内蔵に付着する虫や、洗いきれないでホルモンの脂にただよう藁や、トンソクやカシラに付着したり伸びてきた毛や、果汁にただよう種のかけらや、そんなものが一緒に入ってきてもおかしくないんだと思います。

長くなりました。

長くなりついでに、もう一つ。

このカシラ肉。
これをおいしく食べている地方(都会ですが)があります。
埼玉県東松山市です。
ここの焼鳥、有名ですね。辛味噌だれで食べる「豚カシラ」の焼鳥です。
詳しくは、「ここをクリック」。
なんせ、日本で唯一、やきとり組合まであります。何軒もの焼鳥屋が狭い街にひしめいているみたいです。
なかでも有名な「かしら屋」。おっと、「をかしら屋」ではありません。本店「若松屋」のほかにも、大宮・浦和に何店舗か。
浦和の店に行ってみました。
なんせ、「カシラ串」しかでません。いやメニューは他にあるのに、黙っていても目の前のさらにポンとカシラ串が。食べ終わると、何も言わなくてもまたカシラ串が。
お客様の食べ具合を見て、四六時中焼いているカシラ串がタイミングよくでてきます。まるで花巻名物「わんこそば」ですよ。
もうまいった、というまで出てきますよ。(すいません、「もうまいった」はわんこそば。椀を伏せるまででてきます。)
辛味噌だれで何本でもいっちゃいます。20本くらいはたいらげたでしょうか。

このスタイル。カシラ串が看板の、もう一つの「をかしら屋」をたてるのが夢です。

どなたか太っ腹のスポンサーさんはいませんか。

森のキッチン

2007-06-22 00:02:03 | 第1紀 生きる
岩手子ども環境研究所(森と風のがっこう)からメールをいただいた。
「森のキッチン」づくりワークショップのご案内である。

葛巻町の山間にある小屋瀬小中学校上外川(かみそでがわ)分校跡に「森と風のがっこう」ができてしばらくたつ。
コマーシャル撮りに使ったこの分校跡を、消費者向けのイベント企画でまた再会するとは思ってもいなかった。
主宰者は岩手県立児童館いわて子どもの森館長でもある吉成信夫氏だ。

長い縁になっている。企画を通じ出会い、この上外山には何度も足を運んでいる。
会社の企画の打ち合わせでも、プライベートでも。
写真の青い車両。この中のベンチに横たわっていると、時を忘れる。憂さを忘れる。
cafe 森風」もなごむ。
ここへは打合せや本番のお子様ご招待企画で十数回は泊まっただろう。
吉成氏とカフェで日本酒を酌み交わしながら彼の教育論に耳をかたむけた事を想いだす。

さて、本題に戻る。
メールでのご案内は、「土や石を生かした野外スタジオづくり」への参加について。
転載歓迎という事で、長文ですがメールのまんまコピーします。

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★参加者募集
「土や石を生かした野外スタジオづくり」
第2回7/14-16(その1)、第3回8/25-26(そ
の2)

6月に行われた第1回のワークショップでは、パーマカルチャーの
考え方をもとに、環境と調和した食べられる景観づくりを行いました。
森と風のがっこうの校庭が、子どもたちが遊んでまなべる食育の場「食
べ物の森」へと動き始めました。

さて、7月8月のワークショップは、ここにあるもの(間伐
材や廃材、石、干し草など)を活かし、かまどや土壁等をセルフビルド
で創り上げ、自然素材を使った建築、ものづくりをまなぶことができま
す。
子どもたちと森をつなぎ、風や空気、日差しを子どもたちが身体で感じ
ながら自分の感覚を外にひらいていく場-森のキッチンを創り上げてい
きましょう。


◆日程
●「土や石を生かした野外スタジオづくり」
その1 第2回 7月14-16日 2泊3日
その2 第3回 8月25-26日 1泊2日
▼講師:小池雅久さん(美術・彫刻家、RIKI-TRIBAL代表)
 森のキッチンの中核となる野外スタジオ。周辺地域にある自然素材や
廃材を生かし、かまどなどの作り方を学びながら、参加者方々と一緒に
作っていきます。カフェ森風のイスを手掛けた小池さんをお招きして、
アート的な要素も取り入れた楽しいワークショップです。
 また、8月は地元の小学生も交えて、森のキッチンの装飾を行
います。
※1回のみの参加も可能です。各回、初日13:00開始・最終
日14:30解散

★7月、8月のワークショップで創り上げていく野外スタジ
オのイメージができあがってきました!
・間伐材や廃材の柱や屋根。
・明り取りの空きビンを埋め込んだ土壁。
・おいしいご飯の炊ける土のかまど。
・植物を利用した日差しよけ。
・ストローベイル(干し草)のイス
・雨水利用の洗い場
・バイオジオフィルター(水生植物を利用した排水処理)
等々の案が出てきています。
イメージ図等はこちらをご覧下さい。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~morikaze/event/morikitchen/gaiyo.html

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皆さん、「オープンスタジオのイメージ」図を見ました。
いや~、わくわくしますね。
行ってみたい。参加して作ってみたい。ここで飲みたい。
・・けど、まあ仕事ですから。
時間がある人はぜひご参加を。

私の経験では、なにかが変わりますよ。人生の行く末に対するあなたの考え方が。
葛巻の上外山へ行ってみませんか。