で、「カシラ」記事の続きです。
食文化について少しだけ、前のは長文でしたから短くふれます。
最初の会社で飲料の本部担当を勤めていたころ。
フランスのレモン果汁のメーカーとライセンスを結び、レモン100%果汁を販売しました。
レモン果汁というと「ポッカレモン」。圧倒的なシェアです。飲料というよりは調味料として使われてきたレモン果汁を、100%レモンとして飲料としても訴求する事にしました。
このレモン果汁。いろいろなことを学びました。本当に語り尽くせないくらい・・。
その中で印象的な事を一つ。
このレモン果汁。原料はフランスの工場から直接仕入れるんです。
新製品として爆発的に売れましたから、まずぶつかったのが原料入手。
販売予算がたてれず大狂い。でも原料は遠い国から輸入。
船便ですよね、普通は。でも欠品が重なり、営業支店から、大手量販店からクレームが来て、しかたなく空輸。
輸送費だけで原価が飛び跳ね、大赤字でした。
たくさん売れると、比例してクレームも多発。
そのほとんどが、「異物混入」と「変色」。
対策を練ったんですが。フィルターとか、当時珍しい冷蔵コンテナでの配送とか。
でも、根っこは原料だと。特に生産本部・工場が強硬に言い張る。
フランスから若社長が来日しました。これが絵に描いたようなフランス青年。背が高くノーブルです。
片言の英語とフランスに留学していた相棒の通訳で、けっこう仲よくしたんです。
で、このクレームについての彼らの見解は、「当然あり得る現象ですね。自然なものを、その良さを壊さないように製造しているんだから。」。
自然果汁の良さを詰めているんだから時にはレモンの種のかけら(これが我が日本の異物混入のクレーム対象)は入ります。自然の味を活かすように作っていますから、夏の暑い時は果汁の色は変化しますよ。当然味にも少しは影響します。
と、涼しい顔です。
「ナニガ、オカシインデスカ。コレガ、シゼンデス。」みたいに。本当になぜクレームとなるのか不思議そうでした。
フランスではこんなクレームはありません。
もっとも、日本では一万分の一(一万個に一個)のクレームがあれば品質管理上、大きな問題となりますが、欧米では10万個に一個あれば、となるようで一桁おおらかなんですが。・・これは余談として。
そう自然の恵みだから、あったり前よ。と、私も思うんです。
でも、会社に戻ると、そこは日本国。
再現性のない商品は(つまり少しでも違う商品があったら)全てクレームにつながる「悪い」商品なのです。
ははっ。なんだろう、この求められる厳格さは。
・・・・・・
次の会社でも、18㎝の長さのパンから少しでもはみ出たり短いウインナーは返品。脂身が一ミリでも厚い豚ロース肉は返品。トンソクの指の間にほんの少しだけど、たぶん死後、生えてきた毛が混入していれば大手量販店から始末書および売価返品(売りもしないのに、販売リスクを負えという傲慢さ)と欠品保障を求められる。
東京の主婦からは、「このカルビ。脂身があるからイヤ。」と返品。おいおい。
どのハムメーカーもそうだが、生き物を加工したハムの重量はまちまちで当たり前なはずなのに、求められるのは「同じ重量表示」の規格品。しょうがないから大きいものを入れる。「500グラム」と全て表示せよとなれば、全て500グラム超。景品表示法もJAS法も、表示より少ないのは違法だが、多いのは認められるから。
なんせ、「あの方に送ったハムより、そちらの方に送ったハムが見た目少ないんです。」といクレームはあるし。お利口な主婦さん達は、表示重量が同じでも実際は大きいのがあることがわかっているから、特売なんかでは手で重量を図りお求めになる。
ちょっと話はずれたけど、なんだろう、この潔癖性を求める兆候は。
確かに口にするものだから慎重を重ねなければいけない。
でも、ほとんどの食品は生きているものから作る。人間にも、だから多少の差を受け入れる体ができている。
たぶん、ハムが豚から、ステーキが生きている牛から、フライドチキンが鶏から、豆腐が大豆から、ご飯が農家だ手をかけて作る米から、じゃがいもが土の中から掘り出されることが、こんなことがわからない人、実感できない人が増えているんだろうな。
自然を自然として受け入れることができないのかな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このフランス産原料のレモン果汁。
確か二年で生産中止となりました。
私も責を問われ(たのかな)、別の製品担当に異動となりました。
勉強になったんです。その後も食品に携わる者としての私に。
食文化について少しだけ、前のは長文でしたから短くふれます。
最初の会社で飲料の本部担当を勤めていたころ。
フランスのレモン果汁のメーカーとライセンスを結び、レモン100%果汁を販売しました。
レモン果汁というと「ポッカレモン」。圧倒的なシェアです。飲料というよりは調味料として使われてきたレモン果汁を、100%レモンとして飲料としても訴求する事にしました。
このレモン果汁。いろいろなことを学びました。本当に語り尽くせないくらい・・。
その中で印象的な事を一つ。
このレモン果汁。原料はフランスの工場から直接仕入れるんです。
新製品として爆発的に売れましたから、まずぶつかったのが原料入手。
販売予算がたてれず大狂い。でも原料は遠い国から輸入。
船便ですよね、普通は。でも欠品が重なり、営業支店から、大手量販店からクレームが来て、しかたなく空輸。
輸送費だけで原価が飛び跳ね、大赤字でした。
たくさん売れると、比例してクレームも多発。
そのほとんどが、「異物混入」と「変色」。
対策を練ったんですが。フィルターとか、当時珍しい冷蔵コンテナでの配送とか。
でも、根っこは原料だと。特に生産本部・工場が強硬に言い張る。
フランスから若社長が来日しました。これが絵に描いたようなフランス青年。背が高くノーブルです。
片言の英語とフランスに留学していた相棒の通訳で、けっこう仲よくしたんです。
で、このクレームについての彼らの見解は、「当然あり得る現象ですね。自然なものを、その良さを壊さないように製造しているんだから。」。
自然果汁の良さを詰めているんだから時にはレモンの種のかけら(これが我が日本の異物混入のクレーム対象)は入ります。自然の味を活かすように作っていますから、夏の暑い時は果汁の色は変化しますよ。当然味にも少しは影響します。
と、涼しい顔です。
「ナニガ、オカシインデスカ。コレガ、シゼンデス。」みたいに。本当になぜクレームとなるのか不思議そうでした。
フランスではこんなクレームはありません。
もっとも、日本では一万分の一(一万個に一個)のクレームがあれば品質管理上、大きな問題となりますが、欧米では10万個に一個あれば、となるようで一桁おおらかなんですが。・・これは余談として。
そう自然の恵みだから、あったり前よ。と、私も思うんです。
でも、会社に戻ると、そこは日本国。
再現性のない商品は(つまり少しでも違う商品があったら)全てクレームにつながる「悪い」商品なのです。
ははっ。なんだろう、この求められる厳格さは。
・・・・・・
次の会社でも、18㎝の長さのパンから少しでもはみ出たり短いウインナーは返品。脂身が一ミリでも厚い豚ロース肉は返品。トンソクの指の間にほんの少しだけど、たぶん死後、生えてきた毛が混入していれば大手量販店から始末書および売価返品(売りもしないのに、販売リスクを負えという傲慢さ)と欠品保障を求められる。
東京の主婦からは、「このカルビ。脂身があるからイヤ。」と返品。おいおい。
どのハムメーカーもそうだが、生き物を加工したハムの重量はまちまちで当たり前なはずなのに、求められるのは「同じ重量表示」の規格品。しょうがないから大きいものを入れる。「500グラム」と全て表示せよとなれば、全て500グラム超。景品表示法もJAS法も、表示より少ないのは違法だが、多いのは認められるから。
なんせ、「あの方に送ったハムより、そちらの方に送ったハムが見た目少ないんです。」といクレームはあるし。お利口な主婦さん達は、表示重量が同じでも実際は大きいのがあることがわかっているから、特売なんかでは手で重量を図りお求めになる。
ちょっと話はずれたけど、なんだろう、この潔癖性を求める兆候は。
確かに口にするものだから慎重を重ねなければいけない。
でも、ほとんどの食品は生きているものから作る。人間にも、だから多少の差を受け入れる体ができている。
たぶん、ハムが豚から、ステーキが生きている牛から、フライドチキンが鶏から、豆腐が大豆から、ご飯が農家だ手をかけて作る米から、じゃがいもが土の中から掘り出されることが、こんなことがわからない人、実感できない人が増えているんだろうな。
自然を自然として受け入れることができないのかな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このフランス産原料のレモン果汁。
確か二年で生産中止となりました。
私も責を問われ(たのかな)、別の製品担当に異動となりました。
勉強になったんです。その後も食品に携わる者としての私に。