あれは,あれで良いのかなPART2

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よく分かる(?)シリーズ ブルドックvsスティール対決東京地裁決定

2007年07月01日 00時59分58秒 | よく分かる(?)シリーズ
ブルドック社が企業防衛策として講じた新株予約権発行は違法であり無効であるとしてスティール社が新株予約権無効確認の仮処分申立てについて,東京地裁は「ブルドック社の対応は相当である」として申立てを却下する決定をしました。
スティール社は東京高裁に抗告しました。

東京地裁、総会決議経た防衛策の合理性認める(ロイター) - goo ニュース

判断した裁判長はライブドア事件と同じ

この決定,ライブドア事件と非常に似ているため,裁判所がどのように判断するのか非常に注目を集めましたが,結果的にはブルドック社に軍配をあげました。
しかし,今回の決定は,ライブドア事件の際にライブドアの主張を認容した時と同じ裁判官が裁判長として担当しました。したがって,一見すると真逆の判断をしているようですが,実は今回の判断はしっかりと筋が通っています。そこで,今回はこの決定や周辺事情について解説したいと思います。

1 今回の決定の超要旨
(1) 株主平等原則に反するのでは?

  スティール社にもお金を渡しているので,対価はある。よって,株主みんなに同じ利益がいっているため,不平等とはいえない。
(2) 株主予約権発行は明らかに買収対策ではないか?
  買収対策の必要性の判断は株主が行うべきである。今回,株主の特別決議で「OK牧場」と言ったので,問題はない。ただし,株主がOK牧場といったから無条件に許されるというものではなく,株主に情報を提供して正しい判断をさせること,株主に不利益になるような場合は認められないこともある。

2 ライブドア事件との比較(私見)
(1) 株主平等原則の点

  ニッポン放送は,フジサンケイグループだけに株式の第三者割り当てを実施しようとしたため,株主たるライブドアにはそれに対応する利益を交付しませんでした。だから,ライブドアは不公平に扱われたため,株主平等原則に反するといえます。
  一方,今回は,スティール社には現金で対価を支払っているため,一応株主に全員に同じだけの利益がいっていることになります。だから,「みんな平等」といえると判断したと思われます。
  おそらく,高裁では「株と現金とでは価値は本当に同一か」という点が争点になると思われます。
(2) 新株予約権に経済的対価がない点
  まず前提として,ライブドア事件時には今の会社法が施行されていなかっため,企業防衛策としての新株予約権(新株引受権)は明文化されていませんでした。この点が,判断として変わる点にはなります。
  その上で,ニッポン放送はあくまでも取締役会での決議であったこと(もちろん,当時の商法では問題のない手続)に対し,今回は取締役会の決議をさらに株主総会の決議でお墨付きをもらいました。そういう点では,「株主の意向を確認した」といえるため,裁判所としては尊重に値すると判断したと思われます。
  ただし,株主総会が万能とは言っておりません。この点は,新旧会社法を通じて「株式とは本来は会社の資本金の問題である」という考え方をとっており,安易な保身目的の新株は認めないよ,という裁判所の強い姿勢が出ているといえます。ここは,ライブドア事件の思想は受け継いでいるといえるでしょう。
  したがって,高裁では,「はたして本当に株主に不利益はないのか」という点が争点になると思われます。

3 今後の行方
  高裁の判断は全く検討付きませんが,仮にブルドック社が勝てば,事実上スティール社のTOBは失敗で終わることになるでしょう。
  一方,仮にスティール社が逆転勝利したとしても,株主総会では80%の株主が買収反対の意向を示している以上,TOBに応じるとは思えず,やはり結果的にTOBは失敗に終わる可能性が高いと思われます。
  どちらにしても,スティール社にはかなり不利な状況にあるといえます。

4 他の企業への影響
  「株主総会の特別決議」をいかに得られるかという点を考えるようになるでしょう。
  ただし,繰り返しますが,裁判所は決して「株主総会の決議が万能」とは言っておりません。この点を誤解した企業があったとすれば,そこはとんだしっぺ返しを食らうでしょう。
  究極の防衛策は,いつも主張しているとおり,「企業業績に見合う株価の維持」にあります。

以上です。果たして,高裁はどう判断するでしょうか。注目です。

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