あれは,あれで良いのかなPART2

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福岡飲酒死亡事故判決に含まれたメッセージ

2008年01月09日 01時01分11秒 | 裁判・犯罪
酒気帯び運転の上で事故を起こし,その後救助活動をしないで逃走したことなどから3名の子供が亡くなった事故について,福岡地裁は危険運転致死罪の成立を認めず,業務上過失致死罪及び道路交通法違反の併合罪として懲役7年6ヶ月の判決を言い渡しました。

「過失」の判断、やりきれなさ残す 福岡3児死亡判決(朝日新聞) - goo ニュース

裁判官の苦悩が見える

この判決については,多くの方が批判的に論じています。もちろん,感情論としては十分に分かります。
しかし,裁判はあくまでも法に基づいて行われるものです。したがって,法が決めたこと以上の判決をすることは許されませんし,裁判所が勝手に法律を作ってもいけません。
また,裁判は,法廷に出された証拠だけがすべてです。ワイドショーや評論家のごたくは一切判決の資料にはなりません。

という前提の元で,今回の判決を検証すると,裁判所は「危険運転致死罪の構成要件を充たす証拠がなかった」と判断したといえます。すなわち,「飲酒」自体はもちろん認定できたものの,もう一つの要件である「正常な運転ができない状態」についての認定が難しい」と考えたのです。もう少し具体的に言うと,「正常な運転ができない状態」の認定を「できなかっただろう」では足らず,「確かにできなかった」という確実な証拠がなければこの要件を具備しないと判断したのです。
すなわち「疑わしきは被告人の利益」という刑事裁判の大原則に則ったのです。

しかしながら,裁判所はこの被告人に対する憤りはかなり強く感じていたものと思われます。それは,業務上過失致死罪と道路交通法違反の併合罪の最高刑である7年6月を言い渡したからです。
通常の量刑相場の場合,言い渡せる罪の上限を言うというのは相当に悪質と判断される事例のみです。そして,交通事犯の場合,上限いっぱいとなるケースは結構少ないものです。そんな中で量刑上限を言い渡したというのは,本件事例がものすごい悪質と判断したことに他なりません。
以上を踏まえると,この判決に含まれるメッセージは「危険運転致死罪は適用したくてもハードルが高すぎてこの事例では認定できない。ここは被告人の利益を考える憲法上仕方がない。しかし,なんとしてでも厳罰を科したい。ならば,できる範囲内で最高刑にしよう。」というものではないでしょうか。

もちろん,この事例で「危険運転致死罪は認定できる」と判断する裁判官もいるかも知れません。この辺は,裁判官が法廷でどのような心証が作られるかによります。
そう考えると,仮に本件が控訴された場合,高裁で逆転判決になる可能性は十分あり得ます。高裁では,事実認定は基本的に行わず,もっぱら法解釈が中心となります。今回認定された事実を高裁の裁判官がどう解釈するのか,これは蓋を開けてみなければ分かりません。

ちなみに,個人的見解としては,以前も書きましたとおり危険運転致死傷罪の構成要件をもう少し明確化かつ簡略化するべきであろうと思います。具体的には,飲酒運転による事故はすべて危険運転致死傷罪にするという位にしてもよいのかなあ,って思います。
いずれにしても,立法や行政サイドがこの判決をどう評価するか,そこが注目点かもしれません。すべては飲酒運転による事故0の為です。

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