あれは,あれで良いのかなPART2

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「まことちゃん御殿」はモラルの問題

2007年08月05日 12時00分40秒 | 法律問題
まことちゃん」などで知られる漫画家楳図かずおさんが現在建築中の自宅について,その外装が
あまりに奇抜すぎて周辺の景観を破壊するなどとして,近隣住民らが工事差し止めの仮処分をしました。

楳図さん自宅建築に待った=住民ら中止求め仮処分申請-東京地裁 (時事通信) - goo ニュース

これはモラルの問題だから大人の解決が理想的

今回の件は,簡単に言えば,楳図さんの自宅の外壁が「赤と白のストライプ」になることが,明らかに周辺とミスマッチだし,見ていて不快感すら覚えるということから工事差し止めを求めた,ということです。
ところが,基本的には,「自分の土地にどんな家を造ろうと自由」というのが,資本主義国家の大原則です。もちろん,都市計画法建築基準法などでは,「その土地には,どのような構造で,どのくらいの規模の建物まで作って良いか」という規制はしていますが,その基準さえクリアすれば,内外装や建物それ自体の外観についての規制はありません。とすると,基本的には「法による縛りがない以上,自由だー」(by 犬井ヒロシ風に)ということになります。
ただし,それでは確かに周辺環境にミスマッチな建物が建ってしまい,結果町並みがおかしくなるということも容易に想定されます。そこで,多くの自治体では,「景観条例」などを策定して,その町並みにふさわしい外観にしようという規制を行っています(もちろん,文化財保護法などの法律で外観規制している場合もあります。)。典型例として,近隣の国立市で,ケヤキ通りではケヤキの木より高い建物を造らないなどしているものがあげられます。
なお,近年景観法もできましたが,これは結局自治体で計画を作ることを定めているに過ぎず,この法律が直接の制約根拠にはなりません。

今回の場合,楳図さんが建築しているエリアには,まだ景観条例が策定されてなかっったようです。とすると,法的に規制する根拠が乏しいことになります。
もちろん,住民側は「景観保持義務や景観保持に対する権利は住民にある」という論拠で仮処分を行ったものと推測されますが,果たしてこのような権利義務が法的に認められるかどうかは,本格的に裁判をしなければ判断できないでしょうから,仮処分レベルでは「明確な権利義務ではない」といわれる可能性が高いと思われます。
また,外壁であれば,いつでも塗装で直せます。したがって,建物自体の構造が明らかにおかしいという場合でなければ,「いつでも修復可能だから,保全処分しなくても,その後の民事裁判の結果を見てからでも遅くはない」という判断をする可能性もあります。
そうなると,やはり仮処分は認めにくいのではないかと推測されます。

とはいえ,楳図さんも今後この家で生活するとなると,近隣住民とは近所づきあいをすることになります。とすれば,「隣近所は敵」という環境よりも「お互い仲良く」という方が,何かと都合がよいのではないでしょうか。これは,別に楳図さんに限らず,一般的にそういえるでしょう。
とすると,譲れるべきところは譲り,お互いに妥協できる範囲で自宅を建築するのがよいのではないでしょうか。
つまり,この問題は「モラル」の話なのです。

一方で,武蔵野市に景観条例がないことを批判する意見も出ています。もちろん,行政が完全に放置することは問題がありますが,景観条例とは,「地域の景観の保全」ということですから,まずは地域住民のコンセンサスを得る必要があります。ところが,住宅街の場合は,これがかなり難しい作業となります。特に色の制限は,住民の個性が多種多様ですから,みんなの意見をまとめながら制限することは難しいです。それに,景観条例も立派な「所有権に対する制約条例」ですから,一歩間違えると憲法29条の問題となり得るため,かなり慎重な議論が求められるのです。
したがって,景観条例がない=怠慢,という方程式は,必ずしも妥当ではないのです。もちろん,以上の問題をクリアしながらあえて放置していたというのであれば,怠慢と言われても仕方ないとは思いますが。

はたして,この問題,どのような形でけりが付くでしょうか。楳図さんも大物なのですから,大物なりの「大人の解決」を望みたいものです。

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