あれは,あれで良いのかなPART2

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よく分かる(?)シリーズ 相続放棄について

2005年07月05日 00時55分18秒 | よく分かる(?)シリーズ
花田勝氏が実は相続放棄の申述をしていたという報道がありました。
相続放棄といわれると,何となく分かったような分からないような感じではないでしょうか。
そこで,今回は相続放棄について説明したいと思います。

第1 そもそも相続の範囲について
1 ここで相続の範囲を確認しましょう。俗に第1順位から第3順位まで分かれています(括弧内は相続分)。
(1) 第1順位 配偶者(1/2),子(1/2)。子供が死亡して孫がいる場合は孫が相続人になります(代襲相続といいます。)。
  また,子供は養子であっても相続人になります。また,非嫡出子(分かりやすくいえば愛人の子供)も相続人になります(ただし,他の子供の半分しかもらえません)。
  なお,愛人は相続人にはなりません。
(2) 第2順位 亡くなった人に子供(孫,ひ孫なども含む)がいない場合
       配偶者(2/3),親(1/3)
。親が死亡している場合は祖父母が相続人になります。
(3) 第3順位 亡くなった人に両親(祖父母なども含む)がいない場合
       配偶者(3/4),兄弟姉妹(1/4)。
兄弟姉妹が死亡している場合は,その子供(甥姪)のみ相続人となります(第1順位と異なり,甥姪が死亡していた場合,その子供は相続人となりません)。
2 まとめ
(1) 配偶者は常に相続人になります(離婚したら相続人になりません)。
(2) 相続人の順序は,亡くなった人を基準に下(子供),上(親),横(兄弟姉妹)の順に決まります。
(3) 花田家を例にすると,妻は離婚しており,子供は二人いるため(他はいないと仮定),相続人は貴乃花親方と花田勝氏の2名になり,相続分は半々になります。

第2 相続放棄とは
1 相続放棄とは
  相続放棄とは,読んで字のとおり,相続を放棄することをいいます。
  これにより,放棄した人は最初から相続人ではないことになります。
  つまり,遺産は1円たりとももらうことはできません。そのかわり,借金も1円たりとも払う必要がありません。
  したがって,親が多額の借金を残して死亡した場合,借金を払いたくなければ相続放棄をすればその後一切責任を負うことはない,ということになります(もちろん,財産があってももらえないことはいうまでもありません。)。
2 相続放棄の効果
  相続放棄すると,相続人ではなくなることから,相続の範囲も変更します。
  例えば,仮に花田家を例にした場合,貴乃花親方と花田勝氏の二人が相続放棄をした場合,その子供達に代襲することはなく,第2順位,すなわち親(二人から見たら祖父母)が相続人となります。

第3 相続放棄のやり方や注意事項
1 申立方法
  相続放棄は,家庭裁判所で申述をして受理をしてもらうことで成立します。
  ただし,注意したいのは,「受理」とは単に家庭裁判所に申立書を提出することではなく,家庭裁判所で審査して「受理した」旨の通知が出た時点で初めて認められることになります。
2 相続放棄ができる期間
  相続放棄は,被相続人(亡くなった人)が死亡して3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。ただし,亡くなったことを知ったのが3ヶ月以上たってからという場合もあるでしょうから,そのような場合には,亡くなったことを知ったときから3ヶ月という救済条項も用意されています。この救済条項,実務では後述のとおり,かなりうまく活用されています。
3 相続放棄ができない場合
  次の場合,相続放棄はできません。
(1) 遺産を隠した,使った(そりゃそうだ)
(2) 3ヶ月過ぎちゃった(当然!)
(3) 借金返しちゃった(これが盲点!)
  特に,(3)は気を付けましょう。親が借金を残した場合,貸金業者からは丁寧な文書で「例え5千円でもいいから返済していただけないでしょうか。」という手紙が届きます。これに対して,仏心で払ってしまうと,債務を引き継いだことを認めたということで,相続全体を認めたことになってしまい,相続放棄ができなくなってしまうことがあります。ご注意あれ!!
4 相続放棄による影響
  これは,何度も言っているとおり,「相続人ではない」ことになります。
  注意したいのは,親子の縁が切れるとかいう意味ではありません。妖しい貸金業者は,よく「相続放棄するってことは,親子の縁切るってことだよ。」という脅しをかけてきますが,無視しましょう。
  したがって,墓守や仏壇のことは,問題なく継承できます(ただし,それ自体が財産価値としてすごい場合は別ですが。)。
  また,一度放棄してしまうと,撤回はできません。よく調べたら,財産あったのかよ,と思っても手遅れです。ご利用は慎重に!
5 救済手段
  よくある事例として,死亡後3ヶ月過ぎた頃に貸金業者がやってきて,「実は,亡くなった人に金貸してたんだ。で,3ヶ月過ぎたから,あんた相続放棄できないよねえ。じゃあ,払え。」というものがあります。
  この場合,法律的には,金貸しの言うとおりなのですが,これじゃああんまりということで,最近の裁判所の傾向として,「このような場合は,金貸しの請求が来た時を死亡を知ったときとして考えてあげよう」という方向で解釈しています。つまり,この金貸しが来てから3ヶ月以内であれば,相続放棄が可能となりうることになります。
  ただし,すべての家庭裁判所(というか裁判官)がこの考え方を取っているとは限りません。でも,こんなことがあった場合は,すぐに家庭裁判所に相談してみましょう。

第4 花田家の場合(推定)
報道及び報道による家族関係を前提にすると次のとおりとなります。
1 花田勝氏が相続放棄をしたことにより,相続人は貴乃花親方1人となります。
2 したがって,遺産(借金も含む)はすべて貴乃花親方が引き継ぎます。一方,花田勝氏は遺産に関して何ら手にすることはできません。
3 よって,遺産分割を巡る裁判はあり得ないことになります
4 仮にこの件で紛争があり得るとしたら,花田勝氏が遺産の一部を使ってしまったり,または隠していた場合です。この場合は,貴乃花親方は,花田勝氏に対して返還請求をすることができます。

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