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↑のエントリーのように、7月17日に横須賀で本部講習会があって、その場で長槍の使術についての重大な指導があり、「繰り込み突き」は基本的には使用不可ということだった。これまで稽古をやっていく中で前提にしてきたことが全て崩れてしまう変更であり、正直驚きだ。この件について今回は少し考察してみたい。
まず、用語について。いろいろ検索して調べてみたところ、ひとまず下記のような理解で問題無いかと思う。少なくともこの文中ではこういう定義ということでよろしくお願いします。
繰り込み突き
長槍で左手が前に来る半身の構えを取ったとする。左手でジョイント部付近、右手で石突(柄の端のゴムキャップ)付近を持つ。左手の中で柄を滑らせながら右手で石突を押し込みリーチの長い突きを放つ。
投げ突き
左手を柄から完全に離し、ワンハンドで突き込む。
投げ槍
どうでもいいや 投げ突きに同じ。棒や長剣でなく、長槍の話であると強調したいときに使われているか。
直突き
両手ともに滑らせることなく、完全に保持したままの突き。普通の突き。
さて、以下の本部通達で安全講習会を実施する旨アナウンスされている。
http://www.internationalsportschanbara.net/jp/honbu/cgi-bin/news.cgi?date=20160528&nth=1
この中では長槍の投げ突きについて非常に問題視されており、投げ突きを中心にする選手は出場停止とかなり強い言葉で書かれている。
それを受けて、今回実施された横須賀の本部講習会では長槍の講習ももちろん実施されている。当日のタイムスケジュールであるが、9時集合で10時頃から講習会開始。始めに基本動作の審判講習で、短刀、短槍、杖の審判目合わせを全員で行われている。それが昼休憩を挟んで2時半頃までかかっており、最後に長槍と短刀の打突の指導になる。これは2手に別れて並行で実施され、参加者は好きな方を選んで受講する形になった。
冒頭のブログのケンダイさんは長槍の部に参加しているが、その話によればここで繰り込み突きNGの指導が出た。
1対1の打突試合の実技形式で講習が行なわれ、講師の田邊賢一氏が審判に付いた。参加者が順次試合をやっていき、ケンダイさんは3~4組目の出番だった。ケンダイさんは長槍については決して素人ではなく、段を保有しておりこれまでの大会でも一定の成果を残している。この日も普段練習している通りで遠間からの繰り込み突きを仕掛けたところ、待てがかかった。間合いが遠いからといって最初から繰り込み突きを出してはいけない、とのことで叱責を受けた。衆人の前で激しく怒られたそうだ。また、一度直突きを出した後、足りないリーチを補う意味で繰り込み突きを出すべきだ、という指導も合わせてなされた。
これを聞いていくつか疑問が浮かぶ。
まず、この指導がどのような趣旨に基いてなされたのかということだ。
当時その場のニュアンスまでは伝わっていないのだが、このときの発言を伝聞する限りでは、間合いが遠いからといって安易に繰り込み突きに頼るのは良くない。踏み込みや体の安定性を疎かにしないよう、極力直突き中心の運用をするべきだ、という剣士としての心構えを指導されているように聞こえる。もちろん今回は安全講習会なのだから、安全面を確保するために繰り込み突きを控えるよう指導する言葉のあやだったのではという想像はできるのだが、そこがいまいちはっきりしない。
第二に、ルール上どのような運用がされるのかも不明だ。
「競技規則ならびに審判規則(2012年3月改正)」
http://www.spochan.or.jp/pdf/2012_kyougi_shinpan_kitei.pdf
ルールブックでは「刺突の動作中に片手を離すことは差し支えないが、動作の開始時において片手を離した状態であることは許されない」とある。この一文をどのように解釈するかにもよるのだが、投げ突きについてはこれで禁止されていると読めなくもない。安全講習会実施の通達でも投げ突きは危険視されているので、一律禁止の方向だと考えられる。
しかし繰り込み突きについては明確に禁止とはなっていない。初手から繰り込みを放つのは不可ということだが、だからと言って全面禁止とはしていない。それではどのような条件なら許容されるのか。連続技の2段目以降でなければ出せないという、以前に長槍の部で存在した足払いと同様な運用となるのだろうか。それともある程度突き合った後、流れに応じて出す分にはOKということだろうか。また、適切でない繰り込み突きを行なったときはどうなるのか。一発反則負けになるのか、警告で済むのか。
そもそもこの旨が現状ルールブックに記載されていない。これではあの有名・実力者の選手がやるならOK、といった恣意的な判断や判定の地域差が生まれる恐れがある。また得物自由で長槍と対峙した場合、繰り込み突きが来ることを前提とするかしないかで適正な間合いが大きく異なる。ルールとしてしっかりと明記する必要があると考える。
それから、繰り込み突きNGと聞いて最初に思い付いたのは、石突付近を保持して極端に長く持つやり方だ。これは問題無いのか。
ルールブックでは長槍の把持可能部位は記載されていない。棒と長巻については別図まで設けて明記されているが、長槍については「必ず、両手で長槍の持ち手部分を把持し、」とだけしか書かれていない。であれば、ルールの中で合理的に判断すれば極力長く持ったほうがリーチが稼げて有利なので、柄の端を持つという選択もあっていい。安全性向上という趣旨は外してそうだし、そもそもそれやって面白いのかということになりそうだ。とは言え柄の端を保持することが有効であるのならば、勝つためにベストを尽くすというスポーツマンシップからもそうせざるを得ない。それにアメリカとかフランスとか絶対空気読まなさそうだ。
結局、現状の情報では、やっていいライン・やってはいけないラインがはっきりせず、現場合わせで様子を見ながらやっていくしかないようだ。安全上の理由という趣旨は理解するので、得物自由での他の得物との整合性、およびルール上の不適合点を整備したルールブックの改正を待ちたいと思う。
あと、今年の世界大会とかどうなるのでしょうかね?海外まで周知徹底できているのか少し心配だ。
今週の稽古で、実際に繰り込み突き無しのルールで長槍の試合をやってみた。長槍の部としては悪くない。しかし得物自由になると大幅な弱体化は避けられないだろう。
次回、詳しく感想を書きたい。
コメントありがとうございます!
感謝ついでによろしければ各用語の解説もこの場でお願いできますか。
イコールと考えていいのかな?