ねがいのいえ理事長 藤本真二のブログ

障害を持つ方たちに寄り添い支援する日々の中で感じたこと、そのほか伝えたい話題などを、思いのまま日記風に綴ります。

やっと一息

2008-10-13 23:27:48 | Weblog
 目が回るほど超多忙のピークを走り抜け、ようやく一息つくことが出来ました。来年からの展開に向けての準備を終え、あとは許可がおりるかどうか審査を待つのみです。

 その間にも感動的な出会いや出来事がありました。リアルタイムで書けませんでしたが、振り返ると。

 同じさいたま市内に、養護学校の先生だった方が家族の会と一緒に運動して開設された通所の施設がある、という話を利用者の方たちから聞いていました。そしてそこがとてもいい場所で、そんなところをもっと作って欲しいというみなさまの要望をかねてからうかがっていました。その方に一度はお会いしたいと思っていましたが、先週見学をうけていただきました。

 公務員をやめて生活を支援する立場に転じたというそのお話を聞いたときから、通じ合える人だと予想していましたが、お会いして、こんなに近くにこんなに分かり合える方がいらしたのだと、感動しました。

 そして、利用者の方たちと一緒に歌ったり踊ったりしていた職員のエネルギッシュな姿がすばらしいと感じました。福祉職員はこうでなければならない、というお手本のようでした。

 このような方たちと一緒に協力し合いネットワークを作っていけたら、地域は変わっていくかもしれないと、わくわくしました。

 昨日は新人スタッフの研修でした。ねがいのいえを開くことになった沿革から心のケアの理論と実技まで、一日がかりでしたが、ねがいのいえの仕事を数ヶ月経験し、利用者のことを理解しひとりひとりを思い浮かべながら受ける研修は、みんなの心に深く届いたようです。最後は涙ぐむ人もいました。明日からの日常の場面で生かされていくことを信じています。

 しかし。

 あまりにも忙しかった・・・。買ったのに読んでないミステリーがたまってるし。今は一日ゆっくりと東野圭吾を読むことができたら嬉しいなあ・・・「容疑者X」を早く観に行きたい・・・

介護のしごと

2008-10-08 00:34:41 | Weblog
 テレビ東京のドキュメンタリ-や経済ニュースから興味深い情報を入手している毎日。今日の「ガイアの夜明け」は、介護にかかわる人たちの特集でした。

 ひとりで30人も50人もお世話しなければならない施設の夜勤で、ひとりひとりに向き合う介護を実現できない職員の苦悩は深いと思います。また、給料が低くて結婚できない、家族を養えない、という理由で退職する人があとを絶たない世状の中、来年の制度見直しに向けて、介護報酬の見直しに注目が集まっていることは、重要なことだと思います。

 しかし。

 介護の現場は「きつい」とか「きたない」とかという言葉ばかりが報道される昨今、本当にひとりひとりに寄り添う介護を実現したら、利用者のみなさまから受け取る癒し、つらい現実も忘れさせる喜びが満ち溢れている、介護の現場にはそんな力があるという原点の報道が忘れられていないだろうか。そんなことを思いました。

 少なくともねがいのいえに集まるスタッフは、利用者から癒しを与えられ、仕事に喜びを感じながら、毎日を送っています。たしかに、生活が成り立たないほどに給料が低ければ仕事は続けられないでしょう。しかし、低いとはいってもなんとか生活は成り立つレベルで、毎日を癒しと喜びを感じながら仕事ができるのなら、がんばっていける。そんなメッセージの発信があってもいいのではないかと思いました。高齢者や障害者との関わりの中で、毎日出会う笑顔や新しい発見の中に、人とかかわる大きな喜びがあることを、もっと取り上げて欲しい。そんなふうに感じました。

 もちろん、ねがいのいえの給料がこれでいいとは思っていません。介護報酬の見直しは心から望んでいます。がんばっているスタッフが適正に評価される介護報酬になることを願ってやみません。

冬来たりなば、春遠からじ

2008-10-06 23:56:04 | Weblog
 4月から始めたキックボクシング。最近ようやくスパーリングもどきをしてもらえるようになり、今日初めて3ラウンド耐えぬくことができました。起きている時間はすべて仕事中の自分にとって、唯一仕事から離れる時間です。ローキックを蹴られた左足をひきずりながら、さわやかな疲労を感じながら帰ってきました。

 本日の話です。信じられないような突然の苦労に見舞われた利用者の家族から、「ねがいのいえがなかったらどうなってたことかと思います」と言われました。また、スタッフから、送りに行った子のご家族が泣いていたという報告を受けました。

 世の中は本当に、大変なことが弱い立場の人たちに容赦なく襲いかかります。過去にも、どうしてこれほどまで、ある特定の人にばかり、これでもかというほどの不幸が訪れるのかと神様をうらんだことがあります。

 ボランティアでたくさんの方を支援していた頃、たくさん感謝されました。プロではないことによって過剰にいただくその感謝は、自分にとって爽快なものではありませんでした。今はちゃんと報酬をいただいて支援していますので、なんら感謝の必要はなく、プロのサービスとして行き届かない点は、遠慮なく苦情をくださって結構なのです。われわれはプロとして、支援を必要としているみなさまに、苦情を言われないような質の向上を常にめざします。

 願わくば。ねがいのいえという小さな団体の力だけで、世の中のすべてはおろか、この周辺のさいたま市・上尾市の困っている人たちをすべて支えることはできません。私たちは、専門家と呼ばれるたくさんの仲間にがんばって欲しいのです。制度にないことはできないとか、障害の重い人はできないとか、医療的ケアがあると受けられないとか、その時間はやってないとか、そんなことは言わずに。人の生活というのはそんなものじゃないんです。その日、その時間が困っていると言われたら、たとえ深夜でも早朝でも正月でも、なんとかしますと言ってあげて欲しいのです。

 現に、「ねがいのいえ」というたった40坪の一軒家に看護師がひとりいるだけの事業所で、100名の会員を24時間体制で支え、どんな障害の方も受け入れるという運営を実現しています。やる気と工夫でできるのだと、私たちは日々感じています。

 2年前に信じれないような不幸が重なった利用者の家族に、今年ようやく幸福が訪れました。それは私たちの心にも温かい幸せを運んでくれました。毎日かかわるその利用者のお子さんを本当に愛らしいと感じます。

 私たちは利用者のみなさんから、毎日たくさんの愛情と癒しをいただいています。今、悲しみの中にいる方たちにも、1年後、2年後、きっと幸せな日々がやってくることを信じ、願っています。

新たな展開

2008-10-05 18:24:54 | Weblog
 自立支援法は様々な問題をはらみ批判を浴びていますが、問題になっているのは、利用者の一割負担や、事業所が立ち行かないほどに低く設定された介護報酬であり、その問題は早急に見直してもらわなければなりません。しかし従来の福祉政策ではできなかったことが自立支援法によって可能になったことは、今後障害を持つ方が遠くの施設へ行かずに、生まれ育った町で家族から自立して生きていくことを可能にしてくれるのだという法の理念を、ご家族も事業者も理解しなければなりません。

 今、障害福祉界を圧倒的な力でリードしている団体が、愛知県知多半島にあります。ねがいのいえと同じように、NPO法人で一軒家のレスパイト事業からスタートし、徐々に成人の方の働く場所を整備していき、現在はグループホーム、ケアホームまで運営している「社会福祉法人むそう」。

 最も注目を浴びているのは、知的障害の方たちが働く場所として、ラーメン店を運営している点です。プロの料理人に開発と指導を仰ぎ、地域でも評判の味を生み出し、大繁盛しています。同じ建物の一角では、身体に障害を持つ方が、アジアン雑貨店の店長をつとめます。今年から駅前の商店街に、日本そば屋を開きました。

 代表の戸枝さんがそのノウハウを惜しげも伝授するセミナーを昨年受講しましたが、驚くべきは、話の中に、「ビジネス」や「ビジネスモデル」という言葉が頻繁に出てくることです。

 従来、福祉の人間は「ビジネス」という言葉から最も遠い存在であり、福祉をビジネスとしてとらえるという概念がなかったのです。もちろん自分もそうでした。

 しかし国全体の財政が厳しい中、福祉が特別に予算を投入してもらえる時代ではないことが誰しもわかるこの時代に、いかにして福祉団体も採算をあげて、かつ、働く障害者の給料を上げていくのか。そこにビジネスの概念は必要だというメッセージを、戸枝さんから受け取りました。

 ねがいのいえも今後、利用者の方たちの成長に合わせて、働く場所や暮らす場所の整備に進んでいきたいと思っています。それは難しいことだと思っていましたが、今までつかえていたものが取れて、勇気を持って進んでいける気がします。

 今後の新しい展開が決まりましたら発表いたします。