ねがいのいえ理事長 藤本真二のブログ

障害を持つ方たちに寄り添い支援する日々の中で感じたこと、そのほか伝えたい話題などを、思いのまま日記風に綴ります。

容疑者Xの献身

2008-10-19 23:02:49 | Weblog
 小5の夏、学校帰りに買ってきた世界一おもしろいと言われているミステリーを、あまりのおもしろさに夜まで一気に読み通した。その日から連日、一冊買ってきては一日で読み、世界のミステリーランキングを一週間読み続けた。ミステリーファン歴35年の始まりだった。

 その35年の中でナンバー1だと感動したのが、「容疑者Xの献身」。映画を観てきました。

 はじめから犯人がわかっている形式をとりながら、真相はすべて隠されたまま進行する実は本格ミステリー。そのトリックの壮大さがすべてのミステリー部門で賞を総なめにした理由だが、直木賞をとったのは、文学性の高い深い人間ドラマだからだ。原作に忠実な作りと役者の演技が、原作に劣らないくらい涙を誘った。 

 この作品の何が人の心をつかむのか。主人公が他人の犯罪を助けるという行為は別として、存在そのものが自分を支えてくれた相手に対して、あくまでも見返りを求めない献身をつらぬくというその愛情の深さ。

 人を支援する人間が、その行為によって自分も生かされているという共依存の状態にならないように気をつけなければならないと、支援者としていつも思っているが、容疑者Xの主人公にとってはそんなレベルの低い次元をとうに超越し、気高ささえ漂わす。

 心の言葉なので映画では登場しなかったセリフがある。

「こんなにも深い愛があること自体、知らなかった」

 パンフレットには主人公を演じた堤真一の思いが書かれていた。
「もしも犯罪があばかれずに愛する親子を守り通したとき、彼は親子の前からそっと姿を消したのではないだろうか」

 役になりきった人間のさすがの考察である。

 心の奥深くでうずまくたくさんの思い。その思いはどういうものなのか言葉にせずに、その存在をじっと胸の奥に感じていたい。

 そんな作品です。


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