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(象徴天皇のこれから:1)「象徴」とは、追求の末 8年ほど前、陛下「先のこと」言及

2016年08月14日 11時33分37秒 | 
(象徴天皇のこれから:1)「象徴」とは、追求の末 8年ほど前、陛下「先のこと」言及
2016年8月9日 (火)配信朝日新聞

 「生前退位」の意向を周囲に示していた天皇陛下が、自らの思いをビデオメッセージという形で広く国民に問いかけた。国内外に大きな反響を呼んだ「お気持ち」は、限られた人数の間で静かに検討が進められてきた。

 「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」。天皇陛下はビデオメッセージで、象徴天皇としての率直な思いを明かした。かねて近しい人たちには同様の思いを伝えてきたという。

 「常に先のことを見越して判断することが大切だと思います」。象徴天皇として自らはどうあるべきか。親交のある男性に、陛下は理想とする姿を切々と語った。「先のこと」には、皇室の将来への思いがにじむ。8年ほど前のことだ。

 同じ頃、陛下は変調を訴えた。ストレスによる胃腸炎と診断され、宮内庁幹部が「心労や心痛をじっと耐えていらしたと思う」と明かすなど、体調不良が表面化した時期だった。

 陛下は新憲法下で即位した初の天皇だ。憲法で「国民統合の象徴」と定められたが、具体的にどうあるべきかの定義はない。「陛下はきまじめすぎる性格。理想の天皇像を常に追い求めていたのでは」。幼少時からの同級生はそう語った。

 陛下は年齢を重ねるうち、不調を訴えるようになった。12年には心臓の冠動脈バイパス手術を受けた。「常に満身創痍(まんしんそうい)」(宮内庁関係者)で、疲労が色濃い姿が見受けられるようにもなった。

 ■宮内庁、内々に検討会

 体調が懸念される中、陛下は、退位について言及するようになった。宮内庁の風岡典之長官によると、陛下は5年前から、幹部や側近に「象徴としての務めを果たすことが困難となった場合に、どのように考えればよいのか」と折に触れて伝えていたという。2011年3~5月、7週連続で東日本大震災の被災地や被災者を見舞うなど、疲労が蓄積していたころだ。

 宮内庁は「年齢にふさわしい公務のあり方」を模索し、即位20年の09年に陛下の式典でのお言葉を原則なくすなどの軽減策を打ち出すものの、陛下はそのつど難色を示し、天皇としての務めを果たせなくなれば退位も辞さないとの考えを示すようになっていった。

 一方、その間にも、昨夏の全国戦没者追悼式では陛下が段取りを誤り、同10月に富山県で開かれた全国豊かな海づくり大会では式典中に段取りを確認して進行が遅れる場面があった。陛下は自らの体調に不安を強めていったとされる。

 宮内庁幹部や側近はこうした状況を踏まえ、今年に入って内々に検討会を始めた。宮内庁OBを交え、歴代天皇の退位の先例、外国王室の事例などを検討。首相官邸にも、陛下の意向を踏まえた検討内容として報告してきたという。

 「陛下は周囲が説得しても、お若い頃と同じ高度で飛び続けようとされる。それなら譲位も含め、選択肢を増やそうというのが支えるものの総意だった」と宮内庁関係者は明かす。

 風岡長官によると、陛下の意向を踏まえ、象徴のあり方についてのお気持ちを公にすることを昨年から検討。年末の陛下の誕生日会見で表明する案もあったが、宮内庁内での検討を優先すべきだとの意見があり、今年に入って公務との兼ね合いを見ながら日程を再度調整された。記者会見も検討されたが、テロップを付けるなどして多くの人たちに見てもらうことを考慮し、ビデオメッセージに決まったという。

 (島康彦)

 ■お気持ち文言、官邸と調整

 「陛下には、生前退位への強い思いがあると受け止めざるを得ない」。8日夕、天皇陛下のお気持ちを聞いた官邸幹部は、そう語った。

 首相官邸では、天皇陛下が生前退位の意向を持っていることが7月中旬に報道された後も、制度導入への慎重論が多かった。菅義偉官房長官は陛下の意向について「全く把握していない」と強調。安倍晋三首相の周辺は「陛下の意向を受けて検討に動けば、政治的行為になりかねない。天皇の位はこれまで通りの世襲しかない」と語っていた。

 今回の天皇陛下のお気持ち表明をめぐり、複数の政府関係者は首相官邸と宮内庁で事前に文言を調整したと明かす。

 「陛下の気持ちが強くて止められない」。ある官邸関係者は8月初旬、官邸幹部からこんな話を聞かされた。宮内庁が示したお気持ちの原案では生前退位により強い意向が示されていたが、事前調整で抑制的になったとも聞いた。首相周辺によると、宮内庁と官邸で1週間ほど前から調整を始め、3、4回ほど文案の往復があったという。「お気持ち表明は政治的になるのではないかという危惧があった」と話す。

 宮内庁以外の政府関係者によると、天皇陛下の生前退位を望む意向が政権中枢に伝えられたのは民主党の野田内閣の頃だったという。当時は天皇の公務の負担軽減にテーマが絞られ、有識者ヒアリングを通じて女性宮家創設などの論点整理がなされた。しかし、2012年末の衆院選後に政権復帰した自民党の第2次安倍内閣では、表だった議論はなされなかった。

 その後、13年11月に天皇、皇后両陛下が自身の葬儀などへの「お気持ち」を公表した。首相に近い閣僚経験者は、その時点で「安倍政権が陛下の退位に正面から向き合い始めた」と指摘する。ただ、天皇の退位のあり方が本格検討された形跡はうかがえず、内閣官房の皇室典範改正準備室は女性宮家創設を主なテーマとして検討を進めた。

 自民党の幹事長経験者が語る。「今の安倍政権には皇室問題に一家言ある人が多い。それもあって、柔軟な対応ができていないのではないか」

 (岩尾真宏)

 

 ■即位後の27年6カ月にわたる天皇、皇后両陛下の主な公務

内閣からの上奏書類への署名・押印   29498件

認証官任命式              2532人

信任状捧呈(ほうてい)式         819人

勲章親授式                916人

勲章受章者らからの拝謁(はいえつ)   2083件

外国元首・王族との会見          333件

離任外国大使夫妻らの引見        1051件

国内訪問                2080件

宮中祭祀(さいし)            820件

 (今年6月末現在、宮内庁まとめ)

 

 ■天皇陛下の公務の日数(宮内庁まとめ)

2015年 261/365(72%)

  14年 251/365(69%)

  13年 274/365(75%)

  12年 242/366(66%)

 〈全国1741市町村(東京23区含む)のうち即位後に天皇、皇后両陛下が訪れたのは535市町村。訪問件数は年平均75.4件〉

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