病院破壊、死を待つ負傷者 マリウポリ包囲、救援遮断
【ロンドン共同】ロシア軍の包囲攻撃で病院が破壊されてから一気に状況が悪化した。ウクライナ南東部マリウポリでは、救援を断たれた入院患者や負傷者がただ死を待つ絶望の地と化した。銃砲撃の合間、野ざらしの知人の遺体に身元を記した紙を挟み、せめてもの弔いに。3月20日に脱出した地元テレビ記者マクシム・フラボフスキーさん(33)がオンライン取材に実態を語った。
ロシア軍の侵攻開始後も状況を伝えようと、しばらくマリウポリに残ったが、インフラ攻撃で停電となり、携帯電話が使えなくなった。空爆が続く中、毎日徒歩で近所に住む母親や友人らを訪ね安否を確認。町が日に日に破壊されていくのを目の当たりにした。「きのう半壊だった建物は、きょうには壁1面だけに。攻撃が激しくなるにつれ恐怖感も強まった」
病気やけがをしても搬送や治療のすべがなくなり「死を待つ人は少なくなかった」。自宅周辺の道路に何人もの遺体が横たわっていたが、攻撃が続くため収容が難しく1週間放置された人も。
そうした中に知人もいた。フラボフスキーさんは、その人の名前や家族らの連絡先を紙片に書き、遺体に挟んだ。「行方不明者とされないように」。そう祈った。長年の同僚だった50代の男性カメラマンは脚の付け根に爆弾の破片が刺さり死亡した。「とても心が痛む。何とひどいことだ」
マリウポリの民間人死者は推定2万1千人だがフラボフスキーさんは「実際はもっと多い」と話す。がれきに埋もれたままの人や、地下シェルターで亡くなった人が多数いるからだ。ロシア軍は市内住宅のほぼ全てを破壊した。「なのにどうして『ウクライナ人を助けている』と言えるのか」。ロシアのプロパガンダに怒りをあらわにした。
停電で通信や放送ができなくなり、妻、母らと徒歩で町を離れた。今は東部ドニプロに身を寄せるが、同僚がいる西部の町に一日も早く合流し、報道活動を再開させたいと願っている。
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