自律神経といえば、こどもの頃あがり症で、大勢の前で話したり、歌ったりするとのぼせたり動悸がしていた私は、雑誌広告の森田自律神経訓練法などというのに興味を引かれたことを思い出す。
自律神経。
英語にすると、「自動で」調節してくれる神経という意味で、「自分で」調節できる神経系ではない。
自動で作動するので、心臓よ動けと指令を出さずに、心臓は動き続けてくれる。呼吸もたとえ眠っていたとしても知らず知らずに続けてくれる。生かしておいてくれるのだ。
よって、「自分で」だと、思い通りにコントロールできたとしても思いっきり困ったことになる。
思い通りにはならないことで逆に助けられているのだ。
そもそも人類史上原始時代が圧倒的に長いので、人類がまだ狩りと猟のくらしをしていた頃。猛獣と戦ったり逃げるには末梢血管を収縮させてケガの際、あまり出血しないようにしたり。血圧を上げて脳や心臓の血流を増やしたり、瞳孔を開いて視認性を高めたりしてくれる交感神経系(闘争と逃走の神経)。逆に早く疲れなどから回復できるように、胃腸の働きを活発にしたり、末梢血管を拡張したり、余分なエネルギー消費を押さえたり、生殖に利するための副交感神経系(休息の神経)が発達してきた。
交感神経は脊髄から出て胸や腰の神経節から各作用点まで拡散し伸びて中枢神経系からの指令を伝達する。
副交感神経は脳幹からと骨盤部の脊髄から出て各作用点まで拡散し伸びて中枢神経系からの指令を伝達する。
いずれにせよ、細い神経線維のことですから、画像化・数値化するのが困難で、検査できないか、してもわかりにくいのが一般的。診断は問診を頼りにせざるを得ません。
さて、文明が進歩し、人類の多くは狩りと猟から解放されました。
紛争地とかでなければ、対戦型のスポーツでもやってれば十分に生かすこともできるでしょうが、一般の方ならケンカでもするか、車の暴走でもしなければ原始時代ほどその役割を生かすことはできないのではないでしょうか。
それでも、自律神経系は働き続けます。
自律神経系は必要性とその役割が減って、ゆがんだ形でくすぶっているのかもしれません。
そればかりか、お酒やタバコ、ギャンブル、コーヒーなど、ストレス、ある種の食べ物、香料などなど、巷には自律神経系に影響するものがあふれている。タチが悪いことに依存性のあるものもある。
内科外来をやっていて、自律神経系の失調症状には毎日日常的に遭遇しますし、放置するのは万病の元にもなりかねません。
平和で安全な形で本来により近い形で自律神経系を働かせるには、スポーツや観戦・ゲームなんかがいいのかもしれない。映画やドラマによる疑似体験もあるでしょう。最近ではバーチャル・リアリティーが進歩し、よりリアルな仮想体験ができるようになってきた。が、まだ「副作用」については情報が少なすぎる。できれば実体験が理想的なのは言うまでもないが・・・。
でなけりゃ、自律神経系作動薬や遮断薬というお薬もあります。各種ホルモンの影響をうけるので、ホルモン剤もありますが、どちらも使用目的外に副作用もあります。それも薬の開発によってより安全に、減ってはきていますが、、、。
あるいは人類はこの新しい環境にも適応するよう、ひそかに自律神経系を進化?(あるいは退化?)させてきているのかもしれません。
とはいえ、検査をしてもはっきりしない様々な症状をお持ちの方は、この際、是非自律神経系のことを調べてみて、自分に合った対策を講じてみてはいかがでしょうか?
この投稿は2019年2月の天童市報の一口健康講座のロングバージョンです。