大沼法龍師の言葉

故・大沼法龍師の著作の中から、お気に入りのものを、皆さんに紹介させていただきます。

6 商売の秘訣

2007-08-31 17:58:30 | Weblog
 渡辺華山の許へ出入の商人が『何卒先生に一筆いたゞきたい』と願うと『商家の銘』を書き与えた。一、召使より早く起きよ、一、十両の客より百文の客を大切にせよ、一、買人が気に入らぬ品を返しにきたならば売る時よりも丁寧に受けよ、一、繁盛に従ってますゝゝ倹約せよ、一、小遣は一文より記せ、一、店を開きたる時のことを忘るな、一、同商売が近所にできたらば懇意を厚くし互いに励めよ、一、出商を開いたら三ヵ年食料を送れ、私としては一、役僧よりも早く起きなければならない、一、金持の門徒よりも貧しい門徒を愛さなければならない、一、法務の破約の時はなお丁寧に挨拶せねばならない、一、門徒の人気があればある程身の行いを慎まなければならない、一、一粒のお米も門信徒の汗膏だから冥加を重じなければならない、一、開基の苦衷を偲んで懈怠を離れなければならない、一、隣寺とは仲よく互に好意を持って助けあわねばならない、一、役僧は自分の手足だから出来得るだけ愛さなければならない。立派なことは言い得るけれども実行のできないことを懺悔せずにはいられない。
                                 (「教訓」p6~p7)