大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

百貨店ビジネスモデルの限界/ブックオフ出資の本当の狙いとは?

2009年05月26日 | ニュースの視点
12日、三越伊勢丹ホールディングスは、2010年3月上旬に伊勢丹吉祥寺店を閉店すると発表した。

ここ数年赤字が続いており、収益の改善は難しいと判断したもので、伊勢丹が都内の店舗を閉鎖するのは、八王子店の閉鎖以来、30年ぶりとのことだ。

今回の閉鎖対象となったのは吉祥寺店だが、注目すべきは新宿本店だと私は思う。

というのは、伊勢丹の新宿本店は、伊勢丹の売り上げの約半分を背負う大黒柱といえる店舗であり、伊勢丹全体の調子の良し悪しは、新宿本店の調子に依存するところが大きいからだ。

そして、ここ数年の伊勢丹の主要店舗別売上高の推移を見ると、今回閉鎖される吉祥寺店よりも、売上高の総額が大きいだけに、新宿本店の方が売上高の下落額は大きい、という事実が分かる。

つまり、問題は吉祥寺店に限ったものではなく、伊勢丹の屋台骨そのものにあると言えるだろう。

伊勢丹などの「百貨店」は、その名の通り「百貨」を売り物にしているが、このコンセプトが今の時代にマッチしなくなってきていると思う。

今の消費者が求めているのは、百貨ではなく、「一貸」店だからだ。だから安くてお洒落な洋服が欲しいと思えば、ZARAやH&Mに行ってしまうのだろう。

また、百貨店で数万円の高級アパレルを購入する人が急速に減少しているというのも、伊勢丹にとって厳しい状況に追い討ちをかけている。

結局、若者客はZARAやH&Mに、そして年配客はしまむらに持っていかれてしまったというのが現在の状況だ。

百貨店というビジネスの在り方そのものにメスを入れて、再考しなければならない時期が来たのだと私は思う。

13日、ブックオフコーポレーションは、大日本印刷が筆頭株主になったと発表した。

今後はブックオフが開拓した中古市場と販路を活用する方針に転換するとのことだが、これは「建前」としての発表であって、本当の狙いは「ブックオフをつぶす」か、あるいは「ブックオフの価格統制をする」ことにあると私は見ている。

現在ブックオフに出資している会社は、大日本印刷を筆頭に、講談社・集英社・小学館などだが、これらの会社は、中古本の市場を活用して販路を広げようなどとは考えていないと思う。

彼らの思考にあるのは、「自分たちが新本販売にあたって困ることがないようにしたい」ということだけだろう。

つまり、ブックオフの値段を思うように操作したいために出資(投資)しているのであって、私には「まじめ」な出資(投資)とは思えないのだ。

世界に目を向ければ、アマゾンがキンドルを発売し、電子書籍の新しい市場を作り上げようとしている時代に、日本の出版業界は何とも情けない限りだ。

そもそも、日本の出版業界がブックオフというビジネスに脅威を感じていること自体、私に言わせれば、ナンセンスだ。

本屋自体が売り場面積の20%くらいを店内ブックオフのようなコーナーにしてしまえば、ブックオフを恐れる理由などないはずだ。そして、その方が利用者にとっても利便性は高いだろう。

再販制度が崩れるという指摘はあると思うが、それを考慮に入れても検討する価値がある仕掛けだと思う。

このビジネスモデルは、かなり以前から私は発表しているのだが、日本の出版社や本屋はどこも実行していない。

日本の出版業界は古い体制にしがみつくことに執着し過ぎている。アマゾンがキンドルを日本に普及させようとしても、それを受け入れようとしない風潮さえ感じる。

自らの古い利権を守ることだけでなく、頭を切り替えて新しい市場を作り出すことを、ぜひ考えてもらいたいところだ。

15 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
既にやっているところがあります (sedorilife)
2009-05-26 23:08:04
下記の件ですが、広島のフタバ図書と言う本屋は、新刊書に併設して中古本のコーナーを設けた本屋を展開してますよ!

-----------------------------------------------
本屋自体が売り場面積の20%くらいを店内ブックオフのようなコーナーにしてしまえば、ブックオフを恐れる理由などないはずだ。そして、その方が利用者にとっても利便性は高いだろう。

再販制度が崩れるという指摘はあると思うが、それを考慮に入れても検討する価値がある仕掛けだと思う。

このビジネスモデルは、かなり以前から私は発表しているのだが、日本の出版社や本屋はどこも実行していない。
-----------------------------------------------

神保町でもやってます (AK)
2009-05-27 01:54:41
神保町の東京堂書店や三省堂でも古本の併売をやってますね。

no title (あああああ)
2009-05-30 01:50:49
品揃えとか業界固有の消費者からしたらどうでもいい理由で新刊が野放図に増えるより、過去の出版物を有効利用してもらった方がいいです。

最近本を定価でほとんど買っていません。高すぎるから。出版社も大手含めてもっとつぶれればいいと思ってます。紙ももったいないし。売れ残った本は裁断してるんでしょ? 環境に悪いよ。
Unknown (上の二人。)
2009-05-30 16:48:40
上の二人。ここでの論点はそこ(併売をやっているところがあるかどうか)じゃないから。みんな冷めた目でみてるよ。
Unknown (Unknown)
2009-06-01 20:45:38
この方だれですか?
Unknown (Unknown)
2009-06-02 21:47:52
>みんな冷めた目でみてるよ。

一番冷めた目で見られているのはこの人のような。。
Unknown (あああああ)
2009-06-05 19:02:35
とりあえず無駄に刷って無駄な返品作業とか無駄な裁断しなくていいから。
そんなに出版物いらないから。携帯とかネットとか暇つぶせるもの、他にいくらでもあるから。必要ないよ。
いやいや本質を読まないと (疾風天使)
2009-06-10 10:02:59
他の作家の本はブックオフで買っても構わないが大前さんの本は新刊で買いなさいということです。万引き厳禁
変えるべきは変え、守るべきは守る (motor)
2009-06-10 12:55:43
出版業界には、新しい時代にマッチするような変革を期待します。
そして、たとえ形が変わっても、大切な文化を守り続けて頂きたい。

>私には「まじめ」な出資(投資)とは思えないのだ

憶測は良いとしても、それを元に批判を展開するのは如何なものかと。
上記の人に同意見です。 (TK)
2009-06-13 16:31:53
業界の考えはその人たちにしかわからないものです。

>本屋自体が売り場面積の20%くらいを店内ブックオフのようなコーナーにしてしまえば、ブックオフを恐れる理由などないはずだ。

恐れる?古本は最初から古本ではない、最初に新品を本屋で買った人がいるわけですよ。

本屋の20%がそのようなことをやったら売り上げの足を引っ張ると思いますがね。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。