フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

9月7日(日) 晴れ

2014-09-10 14:28:03 | Weblog

8時、起床。

ホテルの朝食(和洋バイキング)。普段の生活では朝食はパンでおかずも軽めだが、今日は昼食をデザートレストランでとる予定なので(スイーツ2種)、朝食はしっかり食べておこうとご飯の(おかずも)お替りをした。

ホテルを10時にチェックアウトし、電車の時刻まで40分ほど余裕があったので、埠頭に行ってみる。

雲がねぶたに見える。

「〇〇銀座」というのは全国各地にあるが、ここでは、駅前の一角、飲食店が集まった小さな路地が「駅前銀座」を名乗っている。青森駅から離れた場所にも「〇〇銀座」があるのだろうか。「

10時39分発、奥羽本線の普通電車に乗って、弘前へ。

津軽平野を行く。

「ね、なぜ旅に出るの?」
「苦しいからさ。」
「あなたの(苦しい)は、おきまりで、ちつとも信用できません。」 -太宰治『津軽』より―

40分ほどで弘前に到着。

改札口に高瀬君の姿があった。今日は一日、弘前周辺を彼に案内してもらうことになっている。

昼食は大鰐にあるデザートレストラン「シュバルツバルト」を1時に予約してくれている。そこへ行くには12時30分発の大鰐線に乗るのだが、それまで1時間ほど時間があるので、大鰐中央線の中央弘前駅までぶらぶら歩くことにする。

道幅が広く、高い建物も少ないので、歩いていて空が広く感じられるのが地方都市の特徴である。

今日は日曜日だが、歩いている人が少ないのは青森と同じであり、地方都市一般の特徴である。週末のレジャーは、自動車に乗って近郊のモールへ行く人が多いのだろう。

弘前昇天教会。大正9年に建設された日本聖公会の教会堂である。弘前は空襲に遭わなかったからこうした古い建物がそのまま残っているのだ。

教会の次は世俗の場所、弘前中央食品市場をのぞく。清濁併せ飲む(?)のだ。

食品市場の一角に、海産物の商店の名前が出ているのに、古本屋(?)があった。不思議な空間である。

高瀬君がよく行くというカフェ「ひまわり」。馴染みのカフェがあるというのはいいことです。都市生活者の基本といっていい。

弘前の若者たちに人気があるという地元のおしゃれ雑貨店「ホーム・ワークス」。

独特のデザインの弘前中三百貨店。ジュンク堂書店が入っている。

ジュンク堂書店は一流の書店である。なぜなら社会学コーナーの棚に拙著『日常生活の探究』(左右社)が置いてあるから。

もしかしたら前日、高瀬君が仕込んでおいたのかもしれない。

弘南鉄道大鰐線の起点、中央弘前駅。JRの弘前駅からは1.3キロほど離れているが(徒歩16分)、弘前市の繁華街(中心部)にはより近い。大鰐線はこの中央弘前と大鰐温泉で有名な(私は知りませんでしたが)大鰐駅を結ぶ13.9キロの鉄道で、現在は1時間に1本の運行で、いつ廃止になってもおかしくない赤字路線である。そういう路線であるから、当然、風情はある。

大鰐線の車両は古い東急東横線の車両が使われている。吊革に東急デパートの広告が(鉄道ファンへのサービスであろうが)そのまま残っている。

昭和の子どもである。

「ちとせ」という駅があった。漢字では「千歳」ではなく「千年」と書く。

14の駅があるが、起点の中央弘前駅と終点の大鰐駅以外はすべて無人駅である。

終点の大鰐駅に到着。所要時間は約30分。

南口と北口があり、メインは南口だが、「シュバルツバルト」に行くには北口の方が近い。

秋の日の駅に北口南口  たかじ  *安住敦の「しぐるゝや駅に西口東口」のパクリです。

かつて北口の駅前に「喜多口」というカフェがあったようである。南口の駅前には「皆美口」というカフェがあったのかもしれない(ありません)。 

焼けて廃墟となった「喜多口」。

営業をやめたガソリンスタンドの前に咲くコスモス。

崖下に肩を寄せ合っている三軒の商店(営業しているのだろうか?)。

突然、目の前に、ヨーロッパ風の家屋が出現する。ここがデザートレストラン「シュバルツバルト」である。

残念ながら店内撮影禁止のため外観しか紹介することができない。当然、美しいスイーツの写真も・・・。

しかし、翌日、再度訪問して(開店一番の客として)、特別にマダムの許可を得てスイーツの写真を撮ることができた。よって下のピーチメルバの写真は翌日撮ったものである(私はここで二日続けてピーチメルバを食べたのである)。

ソーサー型のシャンパングラスに入って運ばれてきたピーチメルバ。なんという美しさ!

コンポートした桃、アイスクリーム、ラズベリソースの三位一体は「まやんち」のピーチメルバと同様だが、「まやんち」のピーチメルバは皿の中央にアイスクリームをドーム型に配置し、スライスした桃を花びらのようにその周囲に敷き詰め、そこに(桃にのみ)ラズベリーソースを掛け、ラズベリーの実を2粒添える(実は必ず向かって右側に置かれる)。これに対して、「シュワルツバルト」のピーチメルバはグラスの底にアイスクリームを敷き、その上に半分に割った桃(食べやすいように切れ目を入れてある)を置き、上からラズベリーソースを掛け、ミントと水飴細工とスライスしたラズベリーの実を添える。「まやんち」のピーチメルバが可憐な乙女であるとすれば、「シュバルツバルト」のピーチメルバは優雅な貴婦人である。

食感については、「まやんち」の桃はスライスしてあるので口当たりがまろやかで官能的でさえある。見かけは乙女だが、小悪魔的なところがある。一方、「シュバルツバルト」の桃はスプーンでザクッと掬って口に運ぶので桃を丸ごと(半分だが)頬張っているような触感がある。見かけは優雅だが、ワイルドなところがある。ロリータvsチャタレー夫人か(笑)。

アイスクリームとラズベリーソースの関係は、「まやんち」では分離しているものを口の中で融合させるのに対して、「シュバルツガルト」では口に運ぶ時点からすでに渾然一体となっている。西洋思想vs東洋思想か(笑)。

ずっと「まやんち」のピーチメルバばかり食べて来たので(去年は7つ、今年も7つ)、それがピーチメルバの普遍的な姿であるように錯覚していたが、「シュバルツバルト」のピーチメルバを見て、食して、ピーチメルバの世界が広がった気がした。これからピーチメルバの旅に出ようかしら。

ピーチメルバの他にもう一品、この店の看板メニューであるシュバルツバルターキルシュトルテも食べた。ドイツ語だとなんだか厳めしいが、「黒い森のチェリーチーズケーキ ピスタチオのアイスクリーム添え」である。こちらは残念ながら写真は撮っていない。ミロの絵画のように楽しげで、色とりどりの味わいを楽しめる。

(参考)「まやんち」のピーチメルバ

 大鰐駅2時半発の電車で弘前に戻る。ワニがキャラクターのようであるが、もちろんワニが昔生息していたわけではなく、鰐とは大きな山椒魚を意味する古語である。土地には大山椒魚の伝説があるらしい。

電車の進行方向に岩木山が見える。

2両編成の電車はガラガラである。

3時、中央弘前駅に到着。

中央弘前の駅は土淵川沿いある。

吉野町緑地公園には地元出身の藝術家奈良美智の犬のオブジェが置かれている。以前はこの公園は犬を連れて入ることは禁止されていたが、いまは大丈夫とのこと。そりゃそうでしょ。

歓楽街のような一帯を探索する。

「先生、ちょっと寄って行きましょうか」

「いや、今日はやめておこう」

*架空の会話です。

路地裏探険隊の一番の人気スポット(らしい)。

世俗を離れて、最勝院の五重塔を眺める。

100円で鐘をつくことができる。煩悩を打ち払うかのように、思い切り鐘を突く高瀬君。

再び、世俗へ。

「先生、やっぱりちょっと寄って行きませんか」

「またか。もう一度、鐘をついてきたまえ」

*架空の会話です。

世俗な世界の探索を続ける。

この建物は素晴らしい!「ありのままの姿見せるのよ~」と歌いたくなる。

われわれはどこへ行くべきだろうか?

日本基督教団弘前教会。今日は聖と俗の間を行ったり来たりする一日だ。

弘前教会は明治39年に建てられた。プロテスタントの教会らしく、室内の装飾は少なく清廉な雰囲気。

土手町にあるカフェ「万茶ン」(まんちゃん)で一服。昭和4年の創業で、太宰治も通っていたという。発音がなんとなく「まやんち」に似ている。

店員さん(高瀬君のお知り合いの大学院生)のお勧めで、焼き林檎のアイスクリーム添えとコーヒーのセットを注文。

高瀬君がよく行くという成田書店(古書店)。昔の弘前の風景を撮った写真が載っている雑誌『あおもり草紙』のバッグナンバーを高瀬君が購入し、私にプレゼントしてくれた。

そろそろ陽が傾いてきた。

駅前のホテルにチェックイン。

13階の部屋からは弘前の街(駅の東側)がよく見える。

高瀬君の運転する車に乗って「いもや」へ夕食を食べに行く。

天ぷら定食を注文して、お好みであれこれ揚げてもらった。安くて美味しいので何度も追加注文していたら女将さんに笑われてしまった。とくにホタテの天ぷらが美味しくて二度注文した。

「いもや」と聞いて、「あれっ?」と思った方もいるだろう。そう、神保町や早稲田にある「いもや」と同じ暖簾の店である。私がときどき行く早稲田の「いもや」のご主人は一番上の兄弟子で(間もなく80歳になる)、ここのご主人は61歳。私と同世代である。話し好きの方で、私も人見知りはしない方であるから、会話がはずんだ。ご主人が高校を出て上京されたのは、私が早稲田大学に入学したのと同じ1973年のことだった。10年ほど「いもや」で修業をされて、30歳のときに故郷弘前に戻られて店を開いたのである。

ご家族をとても大切にされる方で、奥様にはいまでも誕生日に手紙を書かれるという。

美味しい天ぷらと素敵なお話でお腹も心も満たされた。

高瀬君の運転する車で大鰐の温泉まで足をのばす。

明るく大きな月を眺めながらの露天風呂は最高だった。

ホテルに戻り、高瀬君とはここでお別れ。今日は本当にありがとう。

1人の街歩きも楽しいが、ガイドされての街歩きも楽しいものである。いろいろな場所をよく知っているというだけではなく、高瀬君を仲介者として、「シュバルツバルト」のマダムやシェフ、「いもや」のご夫妻と知り合えたことがありがたい。私は一人旅を好むが、決して人間嫌いなんかではなく、むしろ旅先では人と話をするのは好きである。

よい一日だった。お休みなさい。

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