荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『イングロリアス・バスターズ』 クエンティン・タランティーノ

2009-12-15 13:13:15 | 映画
 クエンティン・タランティーノの新作『イングロリアス・バスターズ』を見ていると、すぐに時間が経過してしまう。「もう少し見続けていたい」という思いが、何やら切なく胸に通り過ぎていくのである。通常はディレクターズ・カットであるとか、バージョン違いの特典映像といった類にはまったく関心を示さない者でさえも、「マギー・チャンが登場するとかいう幻のロング・バージョンが現れたら、また見てもいいかな」などとつい思い込まされてしまう、そういう魔力がある。
 タランティーノの近作の充実ぶりに、正直に言うと、大変ショックを受けている。もはや巨匠の風格である。ただ、ゴダール、ベルトルッチ、ヴェンダース、ロメールらと違って、これといった有望なエピゴーネンを今のところ生み出していない。世界の映画青年たちの心を鷲掴みしているわりには意外なことだが、タランティーノの模倣は、やめたほうがいい。
 しかしとにかく、現在のタランティーノは面白い。今どき、映画ネタの引用行為を嬉々としてぶちまけて、鼻つまみものにならないほどの可愛げと魅力があるのだから、タランティーノ映画には、もはや人徳みたいなものが備わっているとしか言いようがない。


TOHOシネマズ日劇他、全国で上映中
http://i-basterds.com/

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11 コメント

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Unknown (無名)
2009-12-15 23:42:39
ロングバージョンにはマギー・チャンが出演するという話があったのですか。ランダ大佐をディカプリオが、ハマーシュマルクをナターシャ・キンスキーが当初演じる予定だったという話は聞いたことがありますが。レニ・リーフェンシュタール主演の山岳映画の次にあの劇場でかかる予定だったのが、クルーゾーの『犯人は21番街に住む』で、ショシャナがクルーゾーの「U」と「Z」を磨いていたという話を観終わってから聞いて、もう一回見落としたところを見に行こうと思っています。あまり自分の駄文を晒したくはないのですが、今回はリンクを置いていきます。申し訳ないです。
Unknown (じょーたろ)
2009-12-16 00:12:36
こんばんは。

傑作「デス・プルーフ」の厚みのあるチェイスでノックアウトされた僕には「イングロリアス~」はおとなしい印象を受けたのが正直なところです。


フィルムセンターの火災 (中洲居士)
2009-12-16 15:53:29
無名さん、こんにちは。

リンク先を拝読しました。とても参考かつ勉強になりました。フィルムセンターの火災についての体験記も読み応えがありました。有難うございます。
さてマギー・チャンの件ですが、私もきちんと調べたわけではなく、どこかで読んだ記憶を頼りに書いただけです。たしか、マダム・ミミュー役ということですから、ショシャナの「伯母さん」ということになりますかね。実際に出演したものの、編集でカットになったのか、撮影前にそういうシーンが割愛されたのかはわかりません。どうもあやふやですみません。
実力 (中洲居士)
2009-12-16 15:54:17
じょーたろさん、こんにちは。

そりゃあもちろん、わたくしも『デス・プルーフ』の方がはるかに気に入っています。でもタランティーノ監督の実力はちゃんと出ている映画ではあったと思います。
Unknown (jennjenn)
2009-12-16 23:05:59
ヒットラーに映画『国民の誇り』を、君の最高傑作だ、と絶賛されたゲッペルスが感動で涙ぐむとき、その横で思わずもらい泣きするゲッペルスの愛人通訳ジュリー・ドレフュスの表情に、じつはいちばん感動しました。
NHKフランス語講座のジュリーさんが、ヒットラーとゲッペルスの横で、まるで沢村貞子のように(?)もらい泣きするなんて、感慨ひとしおです。
Unknown (tattaka)
2009-12-17 00:37:38
最近観た映画が「イングロリアス‥」くらいですが、複雑な気持ちで観ました。紛れもなく凄い作品ながら認めたくない自分があり、そこにゴダールに対する時との違和感を覚えます。
久しぶりにビデオでヴェンダース「エンド・オブ・バイオレンス」を観てしまったのも無意識へのタランティーノの働きかけかと思うほどです。
もしかしたらこの人はゴダールより観客を考えないように撮るのでしょうか。
沢村貞子 (中洲居士)
2009-12-17 07:50:08
jennjennさん、お早うございます。コメントを寄せていただき有難うございます。

沢村貞子のようにもらい泣き、などと言われると、わたくしの気持ちは『イングロリアス~』を離れて、そっちの方に引き寄せられてしまう。「さて、沢村がもらい泣きする映画というと、いっぱいありそうだなぁ」と記憶を探ってしまいます。
Unknown (中洲居士)
2009-12-17 08:12:26
tattakaさん、お早うございます。コメントを寄せていただき有難うございます。

「認めたくない自分があり」というのは、よく理解できます。だいたい敵(タランティーノ)の方が先に、私たちのような日本で映画ブログなどやっている連中を認めていないでしょう。はっきり言ってゴミ以下だと思っていると思います。

オリヴィエ・アサイヤス『イルマ・ヴェップ』には、マギー・チャンを信奉する一方でジャン=ピエール・レオーを打倒すべきものとして、口から泡を飛ばす映画評論家が風刺的に登場しますよね。わたくしは、タランティーノというのはあれだと思っています。したがってわたくしは、自分がタランティーノから日々打倒されている存在、それもかなり下の下の存在なのだろう、と自覚しております。
そういう観点から、わたくしは、tattakaさんの「複雑な気持ち」になられたという気分を共有する者です。
男泣き・もらい泣き (jennjenn)
2009-12-18 09:04:15
「沢村貞子のように(?)もらい泣き」というのは半分冗談ですが、ゲッペルスの男泣き(!)から愛人ジュリーのもらい泣きという、東映任侠映画のような泣きの連鎖を、タランティーノがナチスのトップ相手に対してあえて演出したことには、思わずホロリとなりました。
Unknown (大木)
2009-12-20 14:02:36
遅ればせながら私も見てきました。この映画は私の中では今年のワーストに入ります。この映画はアメリカで大うけしたと聞きます。観客のことを考えていないというより、単純に観客の受けを考えすぎたため、不可避的にそれが一部のもので他の観客まで気のまわりようがなかったというのが正直なところでは・・・。中洲さんの言われるように、けっしてゴミのようには考えていないと思うのですがねぇ(その度胸もないだろうし、結果的にそうとられても仕方ないかもしれませんが)。 映画オタクがそのまま監督をやっているイメージが私から離れないので、そのあたりがタランティーノの限界のような気がしてます。この映画に対して別に正しい(?)史実云々について言いつもりはさらさらありません。でも中国がこんな映画をつくったら日本のみなさんどうですか?なんてつまらない質問をついついしてみたくなります。絶賛ばかりのブログを見てると・・。

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