荻野洋一 映画等覚書ブログ

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北林谷栄、佐藤慶、W・リュプチャンスキー 死去

2010-05-08 03:46:42 | 映画
 北林谷栄、佐藤慶、ウィリアム・リュプチャンスキーと、偉大な映画人の訃報が続いてしまった。それぞれの享年は98、81、72。

 さきほど、改めてIMDbでリュプチャンスキーのフィルモグラフィを眺めていたのだが、すばらしい作品が綺羅星のごとく並んでいる。フランスのカメラマンでは、好きな作品を一番たくさん手がけてくれた人だった。当たり前のことだが、彼の撮影なくして、ジャック・リヴェットの傑作群は存在し得なかっただろう。雑誌「夜想」の〈ヌーヴェルヴァーグ25周年〉号あたりが、リュプチャンスキーを必須の固有名詞として意識した最初だったと思う。それにしてもあれは最高の号でしたねえ。あの号が刊行されて早四半世紀。諸行無常である。
 北林谷栄は映画人というよりも、劇団民藝の創立メンバーであって、演劇人と言ったほうがいいだろうが、これまでたくさんの映画でも彼女を見てきた。『大誘拐 Rainbow Kids』(1990)が生涯の代表作ということになるはずだが、個人的にもっとも好きなのは、市川崑『鍵』(1959)のラストですべてを掻っさらってしまう家政婦、大島渚『太陽の墓場』(1960)の血も涙もないバタ屋の女房といったところ。下層社会や寒村の意固地な老婆ばかり演っていたけれども、当の本人は銀座生まれ、歯切れのいい江戸っ子だったとのこと。あの『山の音』の姑役の長岡輝子がじつはフランス演劇の正統的理解者であったりするのと並び、むかしの演劇人というのは、その本性にこちらが無知であるために、あとで「へえ!」とびっくりさせられてしまうケースが多い。
 そして、佐藤慶! わが青春の口火を切ってくれた数々の作品において、その畏るべき顔貌と声で私を惹きつけてやまなかった俳優! 戸浦六宏、小松方正、渡辺文雄、あるいは殿山泰司と、大島組のメインプレーヤーが次々と鬼籍に入るなか、昨年公開の『カイジ 人生逆転ゲーム』では、『儀式』(1971)の桜田家の当主役を彷彿とさせる、隠然たるカリスマを嬉々として演じていたので、その健在ぶりを頼もしく思っていたところだった。また昨年は、松本清張原作、和田勉演出のNHKドラマ『中央流沙』(1975)が再放送されて、この傑作を初めて見ることができた年でもあった。これまた隠然たる中央官庁の局長という役をすさまじい迫力で怪演していて、「やっぱり佐藤慶はすごいなぁ」とのんきに感心していたのだが…。
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2 コメント

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Unknown (じょーたろ)
2010-05-09 23:45:33
こんばんは。

僕も少ない経験から「鍵」が彼女の(市川崑の中でも)一本だと思います。
佐藤慶は大島渚のイメージが強いですが、他監督との仕事でも強烈でした。

いつまでも生きていてほしい人 (中洲居士)
2010-05-11 03:32:08
じょーたろさん、こんばんは。

シナリオライターの市川森一さんが、佐藤慶さんの死去に言葉を寄せ、「いつもまでも作品に出ていてほしい人」と言ったそうです。
佐藤慶という俳優のあり方を的確にとらえた言葉だなあと思いました。

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