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「いい音ってなんだろう」

2009年05月19日 | 音楽・演奏とか
「いい音ってなんだろう あるピアノ調律師、出会いと体験の人生」村上輝久著

ピアノテクニカルアカデミー初代所長だった村上氏の著書。
私が在学していたときは、確か特別講師というお立場でしたが、物腰の優しい穏やかな方だったという印象でした。何を講義してもらったのか良く覚えてないのが残念!!


そんな氏の本で、たまたま図書館で発見したので借りて読んでみました。

飾らない謙虚な文章ながらとても描写的で分かりやすく、スラスラと一気に読めてしまいました。
そしてとても奥深くて面白い。


タイトルにもあるように、村上氏の半生を振り返りながら綴っているのですが、とても劇的。

ヤマハに入社して調律師として働き出すが、しばらくして営業部へ転任。
再び調律部門へ戻るが、今度はミラノへ移動。タローネの元で研修を摘みながら働くこととなるが、そこでピアニスト・ミケランジェリと出会う。
そこでミケランジェリに認められ、ツアーや国際イベントに同行。そこでリヒテルを始め様々なピアニストとも出会う。
一方日本では、ヤマハ初の本格的コンサート用グランドピアノ「CF」が開発され、海外紹介への一端を担う。

そんな感じにサラッと書いてありますが、常に第一線で活躍している。大変にすごいことです。

そして常に真摯に仕事と向き合っている。素晴らしいことです。


すごいなと思うのが、ピアニストとのやりとりで微調整をしていく様。

リハーサルを終わってミケランジェリは一言、
「ピアノの音をもう少しリッチにしてほしい」
さて、どうすればよいか。リッチとは豊かさ等の意味だから、響きがもっと欲しいということに違いないと、さっそく整調の手直しに移った。
    ~中略~
作業としては、ハンマーと弦との間隔を0.2ミリ広げ、それに合わせて全体調整をし直し、響きの豊かさを出したのである。翌日の本番前ゲネプロで、ミケランジェリは大変ご機嫌よく、安心した。

随所にこんなやりとりが、、、


文章にするとこれだけのことだけど、その労力は大変なものです。

そして、それ以上に、このわずかなタッチを敏感に感じ取るピアニストと、それをくみ取る調律師のそれぞれの感性の高さの素晴らしいこと。

ああ、こんな仕事が出来るようになったらなんてステキだろう、、、等と思いながら読んでました。


随所で「だから○○をどれだけどうした」という具体的な作業法が書かれていて、それも参考にさせていただきながら、でもそれ以前に、やはりピアニストと調律師の真摯な態度が素晴らしい。

これは、調律分からない人にもお勧めしたい一冊です。

ああ、返す返すも当時の講義を忘れてしまった自分が恨めしい。。。





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