ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

ケイコの寂しい春

2018-04-15 23:07:01 | 日記
動脈硬化閉塞症で入院したハルオ。
拘縮した足にはもはや血液がうまく循環せず
このまま腐るのを待つか、切断か
しかないのだという。

あ~ん、ハルオ。
どんな身体になってもいいから、早く帰ってこ~い。
アナタの身体介護はラクではないけれど
いないとやっぱり寂しいわ。

さてさて、ハルオの不在を寂しがっているのは
私たち職員だけではない。

彼の妻であるケイコ
重度の認知症を患うケイコも
どうやら夫がいないらしいことに気づき
ますますおかしな行動を見せ始めている。

毎晩のことだ。
排泄介助に行くと、部屋にケイコがいない。
またハルオの部屋だな。
隣のハルオの部屋を覗くと、ケイコは必ずそこにいる。

しかも、なぜかベッドサイドの床で放尿、あるいは脱糞。
それをなかったことにしようとして
手や足、その辺にあるタオルやオムツを使い
尿や便で汚れた床を拭いている。
(いや、正しくはグチャグチャにしてくれている)

マーキングか!?

ここは私の大切な人の部屋!と主張しているのか!?

夜勤中にそれをやられると泣きたくなるが
ケイコが気の毒で
私たちは黙々と片付ける。

ハルオよ、どうかケイコより先に死なないでくれ。

おっさん、檻の中から叫ぶ。

2018-04-10 23:39:58 | 日記
折り紙インストラクターとなったおっさんが
苦悩している。

折り紙教室立ち上げの際に知り合った絵画教室の先生から
自分の作品展に出品しないかと誘われ
喜んで応じたはいいが、何せ時間がない。

夜も仕事の休みもひたすら作品作りに没頭しているが
とにかく細かい折り紙の世界。
折っても折っても作品完成には程遠く
もうイヤだ~!と、時折悲鳴を上げている。

去年だったか
息子と飲みながらおっさんの話で盛り上がっていたとき
彼は言った。

「あの人は自分からすすんで檻の中に入って行きながら
“助けてくれ~!”って叫ぶタイプ」

さすが息子。
父親のことをよ~くわかっているようで。


ハルオ、入院!

2018-04-03 23:26:46 | 日記
ハルオに異変がおきている。

※もしかしてたまにこのブログを読んでくださっている
貴重な読者には申し訳ないが、改めてハルオの紹介を。
ハルオとは、全身拘縮のため食事以外は寝たきり、しかも
耳の聴こえがすこぶる悪い96歳男性で、もう一つ言うなら
激しい認知症・ケイコの夫である。

彼がコール魔、叫び魔と化したのは
桜のつぼみが膨らみかけていたころのことだった。

夜間にコールボタンを連打しては
「起こしてくださ~い!」。
今は夜中ですよぉ、寝ていてくださいね。
そう言っても
「ぼかぁツンボだから、聴こえねえんだよ。まいったなあ」
と、返してくる。

そのうち、連打が止む。
やっと寝たか。

いいや、そうではない。
エレベータで彼の居室のあるフロアまで降りると
野太い声を張り上げて「お~い、お~い!」と叫んでいる。

これじゃ、近隣の利用者まで起きてしまう。
あわてて居室に向かい、彼と相対する。

ハルオさん、なぜ叫ぶの?いったいどうしたいの?
すると「いやね、起きて体操でもしようと思って」。

おい、ハルオ!
お前は日中、車椅子で食堂に連れて行こうとすると
「ぼかぁ寝ていたいんだ。寝かせてくれよお」と懇願するのに
なぜ、夜間に起きたがる!?

そんな夜が2、3週間ほど続き・・・

今月に入ってから、ますますハルオがおかしくなってきた。

車椅子に移乗して食堂に行こうとすると
「ちょっと待って。その前にトイレに行ってきます」
(おいおい、お前は寝たきりなんだぞ~~)

あんまり叫ぶので居室に行ってみると
「会社に行かないといけないんだ。後輩が待ってるから」
(おいおい、お前は何十年も前に引退してるんだぞ~~)

ハルオさん、何年生まれでしたっけ?と問うと
「明治元年です」
(おいおい、お前は150歳か!?)

ちょいとおかしい。
そこで今日、病院に連れて行った。

検査の結果、なんとハルオは閉塞性動脈硬化で
痛みを訴えていた足には血栓ができていた。

おかしな発言も、どうやらそれが原因であるらしい。

ありゃりゃ、事態はそこまで深刻だったのか。
高齢者のおかしな言動を見ると
認知症になってしまった!
認知症が進んでしまった!と考えがちだけれど
重篤な病気が要因となっていることもあるんだなあ。

本人や家族には申し訳ないが
こちらとしてはいい勉強になりました。

明日から入院が決まったハルオよ、どうか元気に帰ってきておくれ。
介護は大変だけど
アナタがいないと、私たちはさびしい。