ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

私、思い上がっていました。

2018-01-18 00:14:43 | 日記
自負があった。

いっときは廃人同然だったおっさんを立ち直らせ
笑って暮らせるようにしたのはこの私だと。

ところがそれは飛んだ思い上がりで…。

もちろん私が彼を支えてきた部分は少なくなかったと思うけれど
でも、おっさんは私が想像する以上に努力してきたのだ。

それに気づいたのはおとといのこと。

私が夜勤の日に、おっさんが一人で飲みに行く店がある。
安いわりにおいしい立ち飲みの店で
家に帰ってもご飯の用意がないから
彼はそこで夕食かたがた軽く飲んでくるのだ。

去年の秋ごろから、たまに、私も一緒に行くようになった。

おとといもそう。
近所のスーパー銭湯でホカホカした帰り
その店でビールを一杯飲んで行こうということになった。

暖簾をくぐると、新参者の私でもわかる常連客が3人。
いずれも30から40代の男性だ。

おっさんを見て、3人がそれぞれに「どーも!」と挨拶してくる。
みんな笑顔だ。
おっさん、すっかり顔なじみになったんだね?
10年前に逃げるようにしてやってきた知らない土地でも
おっさん、行きつけの店と知り合いができたんだね?

嬉しくなり、私は
「主人がいつもお世話になって…」を込めた笑顔で会釈する。

しかし、当のおっさんはなぜかあまり愛想がない。
いや、もちろん彼等の「どーも!」に対して
にこやかに「どーも!」と返しはしたのだが
そのあと、たとえば「寒いですね」とかいうお愛想がまったくない。

ねえねえ、アソコの人は誰?
「ああ、あの人はこの間、一杯どうぞとビールをご馳走してくれた」
じゃ、カウンターの隅っこにいる人は?
「彼はいつも喋りかけてくるんだ」

え、そんなに親しみを持って接してくる人たちに
アナタ少し愛想がなさ過ぎやしない?

本来、おっさんは愛想とか愛嬌が服を着ているような男である。
(威張り腐った社長時代はそれを失いかけていたが)
人懐こい笑顔と止まらないオシャベリが売りの男である。

だからこそ、勤務先であるデイサービスでも
ジイチャン、バアチャンたちから大人気らしいのに…。

愛想がなさ過ぎない?という私の問いに、おっさんはこう答えた。

オレだって学習してるんだよ。
オレはずっと酒で失敗してきた。
大酒飲んでは部下を罵倒し、友だちと口論してきた。
もう、そんな失敗はしたくないんだ。
せっかく仕事帰りに一杯飲めるいい店を見つけたのに
そこで知り合った人とケンカになったら
もうオレはこの店に来られなくなっちゃうだろ?
だから、ここへ来たらニコニコしてるだけのオジサンに徹してるんだ。

優しく愛嬌はあるが、酒を飲むとキレて手がつけられなかった男。
それが家も職も地位も失って
はじめて“自制”を心掛ける。

若いときからカレを知る私からしたら
薬物依存症が完治するくらいの、ものすごい努力だ。

おっさん、よく頑張ってきたね。

昔、反省するならサルでもできる-ってコマーシャルがあったけど
アナタは反省するだけじゃなく
ちゃあんと行動していたんだね?

人が人にしてあげられることは限られている。
成長したり、立ち直ってその後の人生を歩んだり
そんなときに一番大切なのは
やっぱりその人自身の努力なんだ。

私がおっさんにしてきたことなんか実はちっちゃいことなんだと猛省。

いいよ、ここは。
と、その日の酒代は私が払ったのだった。







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