ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

坂道を駆け下りるごとく・・・

2015-04-08 16:22:21 | 日記
このブログの「困った夫婦物語」に登場のK子が
ますます、どんどん、壊れてきている。

物取られ妄想は盗られるものが現金に限定され
毎日のように空っぽの財布を胸に抱いては
「なぜ私ばかりが狙われるの?」と泣いている。
(しかし翌日になると万札ぎっしりの財布を持って
コンビニに行くのだから、こっちこそワケがわからない)

K子によれば、泥棒は親指ほどに小さくなって
毎晩、換気口から出入りしているらしい。

妄想はそれに及ばず
家には最近、自分以外に二人の人が住んでいると言い
一人は病気で部屋の奥で寝ている
もう一人は風呂場にいて自分がご飯を差し入れている、のだとか。

「ほら、そこにいるでしょう?」
夜、そう言って風呂場を指差されたりすると
妄想とは知りながらも気味悪いものである。

ものの意味を認識することが難しいこともあり
時折、セーターの袖に足を突っ込もうとする。
スカーフをグルグルと渦巻状にして、頭に載せていたりもする。

排泄も自分で処理するのが困難らしく
共用トイレに入ったK子をドアの外で見守っていたら
待てど暮らせど出てこない。
どうしたのかとそっと中を確認してみたら
床にあふれた便を自分で片付けようとして
手も、靴もぐちゃぐちゃになっているではないか。

「ひどいんです。こんなところでウンチをする人がいて
だから私、片付けているんです」

(いやいや、入る前はキレイでしたよ。私、確認しましたから)

おとといの夜勤では
午前3時ころに廊下をうろつくK子を発見。
居室とは違うフロアまで、エレベーターで降りてきたらしい。
両手にはジャケット、湿布薬の袋、手紙の束、輪ゴムの箱と
関係性不明なものを抱えており
ズボンは途中までしか上げられなかったらしく
リハパンが丸出しである。

そして私の顔を見るなり
「ああ、いいところでアナタに会えたわ。
私の出発はいつかしら?」

なんのこっちゃ?と思いつつ
ヨロヨロとした足取りを支えながら居室に送っていくと
その床にはゴミが散乱。
なんといつも装着している入れ歯までゴミのように落ちていた。

なんだか悲しくなってくる。
この間まで物取られ妄想はありながらも
自分のことは自分でしていた彼女が
どんどんどんどん壊れていく。

認知症の方だけが住むグループホームならいいが
ウチのように健常で頭のクリアな高齢者もたくさんいると
K子のような高齢者は陰口を叩かれるし失笑の的にもされる。

高齢者の価値をさげないことが介護の鉄則だが
こんな生活で
K子の価値は維持できるもか…

最近のK子の対応は困難きわまるが
そんなことより何より、K子を見ていると悲しみがあふれてならない。