ふしぎなサンダル/世界むかし話 中南米/福井恵樹・訳 竹田鎮三郎・絵/ポプラ社/1979年
たいそうなお金持ちが飼っているブタの世話をしていたファニート。
両親が貧しかったので6歳!から働いていましたが、お金持ちの主人が遠く離れた牧場にひっこししても、ブタの世話をしていました。
いつも歩きづめに歩いていて、帰る頃にはもう外はまっくら。
歩くときには、親が寒い思いをしないですむように、薪によさそうな木切れをひろって、持ち帰っていました。
ある日、ブタが鼻をふんふんして地面を掘って、なにかひっぱりだしていました。見るといい薪になりそうなのでファニートはひろって持ち帰ります。
お父さんは、これがなにかわかっていましたが、なにもいいません。ファニートは10年間ブタの世話をして、みょうな木切れも部屋のまわりを取り囲む壁のようになりました。
やがて金持ちがブタを全部売り払ってしまったので、ファニートも仕事を失います。
するとお父さんは、みょうな木切れを銀貨づくりの工場にもっていって、まるい銀貨に変えます。
みょうな木切れというのは、じつは山賊たちが地面のなかにかくしておいた純銀でした。
しばらくして、金持ちが、またブタを飼いだし、その世話を頼みにファニートのところへやってきますが、以前家があったところは、品のいい家が建っており、家じゅうがバラでおおわれていました。
ここはファニートの家でした。ファニートは、町でいちばん貧しい人をまねいて、食事を提供していました。どうして、そんなことになったのかは、金持ちにはわかりませんでした。
6歳から働くというのは、昔はめずらしくなかったかもしれませんが、お金持ちになって貧しい人へ食事を提供するというのは、なかなかできることではありません。
純銀をかくしていた山賊はびっくりしたでしょうが、もとは盗んだもの。それが人を助けることになったのは、山賊にとってもよかったかも。
神さまは、家計を助けていたファニートをだまって見過ごすことはありませんでした。
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