ぼうしをかぶったオニの子/川崎 洋・作 飯野 和好・絵/あかね書房/2008年
絵本は2008年に出版されていますが、1979年におなじあかね書房から出版された童話集「ぼうしをかぶったオニの子」(あかね創作どうわ6)におさめられています。
小学3年の国語教科書にものっていますから、教材研究や指導案もあって参考になります。
物語の舞台は、夕焼けがきれいな秋から初冬の時期。ただ節分の時期なので語ってみてもよさそうです。
帽子をかぶったオニの子が、死んでいると思ったワニに、ホオノキのおおきなはっぱを何時間もかけて、かけてやると、ワニがめをさまします。
ころして、宝物をとろうとするやつから長い長い旅をしてすっかりつかれたワニが眠っていたのでした。
ワニのおじいさんは、宝物をしらないオニの子に、宝の隠し場所の地図をおしえ、宝物ってどういうものか、自分の目でたしかめるようにいいます。
あたたかい葉っぱのふとんをつくってくれたオニの子に対する感謝の気持ちと「たからもの」をしらないという稀有な存在に驚いたにちがいありません。
オニの子は苦労して地図のバツ印のある場所にたどりつき、きりたつようながけの岩場から、美しい夕焼けを見て・・・・。
オニの子が宝物をしらない理由や地図のありかが、なんともうまくできています。
綺麗な夕焼けを「たからもの」と思ったオニの子。もしかすると世代間の価値観の違いも示しているのかもしれません。そして、物質的なものに執着して大事なものを見失っていることへの警告かも。
年長者を敬う礼儀正しく優しい素敵なオニの子です。オニの子は、夕焼けを見たとき、思わず帽子をとりますが、本当の自分にかえった瞬間だったかもしれません。帽子をかぶっているうちは仮の姿です。
そのごのワニについては、なにもふれられていませんが「わしのたからものをあげよう。これでわしもこころおきなくあの世にいける。」というセリフが暗示しているようです。