なんにもせんにん/唯野 元弘・文 石川 えりこ・絵/鈴木出版/2017年
山口県の昔話がもとになっています。
むかし、ある村の仕事もせず遊んでばかりの若者。
その日も、朝からぶらぶらしていると、道に小さい壷をみつけます。なかをみてみると、小さな小さな男が入っていました。か細い声に耳をすませてきくと、「わしゃあ、なんにもせんで、いつもあそんでるもんがすきなんじゃ。おまえさんちにつれてって、いっしょにくらしてくれんか?」と言っているようでした。
小さい男と同居することになった若者ですが、日暮れまで遊んで家に帰ってみると、小さな男が大きくなっていました。
若者が遊んで帰ると大きくなる男。どんどんおおきくなって家からはみだすほど。
若者は寝るところがなくなり、土間で、次には家の外で寝る始末。
そんなとき「稲刈りがいそがしくて手が足りんから、てつだってくれ」と村人から声がかかります。
しぶしぶ働いて、若者が家に帰ると、男がちょっぴり朝より小さくなっています。若者が次の日も次の日も稲刈り手伝ってかえってみると、男は元の大きさに。
男は若者が一向に遊ばなくなったので、「おねがいだ。わしを 壺に入れて、すててくれ。なんにもせんで、あそんでばかりいるもんに ひろってもらうから」と若者に頼みます。若者は男を壺に入れ、拾った場所におきにいきますが・・・。
「なんにもせん」というのは、なんにもしないという意味だったんですね。題名を見たとき「せんにん」というのは仙人とおもっていました。
でも、この壺また誰かに拾われたのか気になります。拾われないのは、みんな懸命に働いているということ。
稲刈りをしている若者のしたに、だんだん小さくなる男が六つえがかれています。
稲刈りの手間賃をもらった若者は、「働く喜び」まで得たのでしょう。
村人はちゃんと若者のことを気にかけていたのでしょう。タイミングの良い声がけです。
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