どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

2021年12月01日 | 絵本(日本)

      秋/かこ さとし/講談社/2021年

 

 加古さんが亡くなられたのは2018年5月2日ですが、この絵本が出版されたのは今年の7月。
最初の原稿は1953年に書かれていますが、出版までの経緯については、加古総合研究所の鈴木万里さん(加古さん長女)のあとがきがあります。

 おいしい果物がどっさりなる秋が大好きだったという私。”私”とあって、当時の体験がもとになっているようです。

 トウモロコシの葉が風にゆられ、ヒガンバナの行列。白い風に赤トンボがかさかさ音をたてて、野原にはノギクやアカマンマやらが咲き乱れる秋。

 「戦争がおわって、戦争のない秋の美しさが続きました。」と結ぶ最後には、秋桜が咲いています。

 児童の疎開、勤労動員で勉強もままなくなり、物資の不足、食料が困窮した1944年の秋。

 学徒勤労動員で働いていた工場で盲腸炎になり、工場付属の病院で手術をします。傷口がおちつくまでなにも食べたり飲んだりせずに、じっと寝ていなくてはなりません。身のまわりを世話をしてくれたのは関西弁で話すこわいおばさん。のどがカラカラで水をたのむと、オナラがでるまではあかんと、にらまれてしまいます。ようやくオナラがでた翌日、盲腸炎の手術をしてくれた先生に召集令状がきました。

 病院の地下壕で、敵の爆撃機に近づいて墜落した戦闘機の飛行士が、落下傘がひらかず地面に落下する光景を目撃。

 手術してくれた先生の戦死、病院で世話してくれたおばさんの息子さんの死が続きます。

 戦争はどうして、こんな人たちを 元気で、明るくて、いい人たちを、次々殺していくのだろう。

 どんな苦しみだって、戦争の苦しさにくらべたら 耐えられるだろうに。

 青い空や澄んだ秋晴れは、戦争のためにあるんじゃないんだ。空襲や戦争のために、青く澄んでいるなら、こんな秋なんかないほうがいいんだ。

 加古さんの強い憤りです。

 

 「戦争がおわって、戦争のない秋の美しさが続く」光景をいつまで続けられるでしょうか。

 「子どもたちへ、今こそ伝える戦争ー子どもの本の作家たち19人の真実ー講談社2015年」に加古さんも自身の体験を書かれていますが、この絵本に出てこないエピソードもありました。


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