天からふってきたお金/アリス・ケルジー・文 岡村和子・訳/岩波書店/1964年
楽しいトルコのホジャ話。
金曜日はマホメット教徒が寺院にお祈りに行く日。ホジャは、ずっとむかし僧院でべんきょうしたことがあったので、金曜日になると、きまった時間に説教壇にのって、アラーの神さまの話をしなければなりませんでした。
しかし、いくら、ホジャでも いつもいつも話すことがあるわけではありません。
一回目は、「みなさんには、わたしが、これからなにを話そうとしているか、おわかりかな?」と、問います。本人が何を話そうかわかっていないわけで、ほかの人にはわかるはずがありません。そこでホジャ、「ほんとうにわからんですな? では、こんな大切な話を、なんにもわからんあなたがたに、はなしたところで、なんにもならない。むだというものだ。」と、説教壇をおります。
しかし苦手な金曜日は、すぐにやってきます。このときも、「わたしが、これから、どんな話をするか、みなさんにはおわかりかな?」と問います。この前のことがあったので、みんなは、「はい、わかります。」と、こたえました。すると。ホジャは、「なに、みなさんには、わたしがいおうとしていることが、わかっておられる?」と、不愉快な表情を浮かべ、「それじゃ、わたしが話をするまでもない」と、さっさと説教壇をおりてしまいます。
つぎの金曜日も、「わたしが、なんの話をするか、みなさんにはおわかりかな?」と問い、この前の金曜日のことをかんがえていた人たちが「わかりません」、この前の前の金曜日のことをかんがえていた人たちは「わかります」と、こたえると、ホジャはこたえます。
「わかっている人と、わかっていない人がおるようだ。では、わからない人は、わかっている人からきいてください。」というと、鼻歌を歌いながら、説教壇をおりていきました。
ホジャさん、つぎの金曜日は、どうしたことやら!。