どんぴんからりん

昔話・絵本いろいろ。語るのを目的としたものでしたが・・。それにしてもまるで森に迷い込んだ感じです。(2012.9から)

せかいいち うつくしい ぼくの村

2018年05月31日 | 私家版
 (あくまで個人的な私家版です)

 日本から西へ6200キロ離れたところにアフガニスタンという国があります。めったに雨が降らないので、乾いた土と砂ばかりの国のように思われています。でも、万年雪をかぶった高い山がつらなり、森や見わたすかぎりの大草原もあって、春になれば花が咲き乱れ、夏になれば、果物がたわわに実るうつくしい自然がいっぱいの国です。

 小さな男の子、ヤモの住むパグマンの村でも、毎年、風にゆれる 木の実の音を聞きながら、村の人たちは家族そろって、あんずや、すももや、さくらんぼをもぎとります。
ヤモも、兄さんのハルーンと競争でかごいっぱいのすももやさくらんぼをとります。
とりいれは 1年じゅうで いちばん 楽しいときです。この時期、村じゅうがあまいかおりにつつまれます。

 でも、ことしの夏、兄さんは いません。兵隊になって、戦いに行ったのです。
 アフガニスタンでは、もう何年も、民族どうしの戦争がつづいています。戦争は国じゅうに広がり、若者は次つぎと戦いにでかけていきました。

 あまいすももと 真っ赤な さくらんぼが、ロバのポンパーの背中で 重そうにゆれています。
 きょう、ヤモは はじめて ポンパーと、町へ果物を売りにいくことになりました。兄さんの代わりに、父さんの 手伝いをするのです。
 「母さん、いってきます」 ヤモは、父さんと朝早くでかけます。「おーい、ヤモ。おでかけかい」 村の人たちが声をかけます。
 「うん。とうさんと 一緒だよ」「そうかい、そうかい。たくさん売れると いいね」
 「さくらんぼは いかが! ちいさな あまい たいよう、パグマンの さくらんぼ!」
 ヤモは みちみち 父さんに 教わった文句を繰り返します。
 街道は 日がのぼって、急に 暑くなってきました。
 町へ向かうバスやトラックが、ヤモたちを追い越していきます。

 町につきました。羊の市もたって、にぎやかな こえが あっちからもこっちからもきこえてきます。戦争なんかどこにもないみたです。
 入り豆売りのおじさんが、大声をはりあげています。焼き肉やパンの焼ける匂い、絨毯や本の匂い。
 町の賑わいに、ヤモは むねが ドキドキします。
 人の いきかう 大きな広場で、いよいよ店開きです。
 「とうさんは この広場で すももを 売るから、ヤモは、まちの なかを まわって さくらんぼを売ってごらん」
 「ぼく ひとりで?」
 「ポンパーが ついているさ。ポンパーは まちじゅう しらない ところは ないんだから」
 しかたなく ヤモは、ロバのポンパーにひっぱられるようにして あるきだしました。
 ポンパーに つれられて、ヤモは まず 屋根付きバザールにいきました。色とりどりの小さな店が所狭しとならんでいます。
 買い物をする人。お茶を飲む人。
 「こんな ところで うれるかな?」 ヤモは心配になりました。
 勇気を出してよんでみました。
 「えー、さくらんぼ」 誰も ふりむいてくれません。
 もっと 大きな声で いわなくっちゃ。「さくらんぼー、パグマンの さくらんぼ!」
 果物屋の前を とおるときは 小さな声で、「・・・・さくらんぼ」
 りんりん、シャンシャン。「じゃまだ じゃまだ! あぶないぞ!」馬車タクシーが、鈴を鳴らして通り過ぎます。
 町は いそがしくて 目がまわります。さくらんぼは ちっとも 売れません。
 ヤモは がっかりして、道ばたに 座り込みました。すると、小さな女の子がやってきて「パグマンの さくらんぼ ちょうだい」と、いいました。
 ヤモはうれしくなって、うんとおまけをしてやりました。
 それから ヤモの さくらんぼは、とぶように 売れはじめました。
 「ぼうや、わたしにも おくれ。むかし、パグマンの近くで 果物をつくっていたんだ。なつかしいな」と、片足のない男の人がいいました。
 「おじさんは 戦争に いってたの?」
 「ああ、そうだよ。おかげで 片足をなくしてしまってね」
 ヤモはドキッとしました。ハルーン兄さんの顔が 思いうかびました。
 おじさんは すぐに さくらんぼを 口にいれました。
 「うーむ、あまくて、ちょっと すっぱくて、やっぱり おいしいなあ! パグマンの さくらんぼは 世界一だ」

 ヤモは、まだ半分以上も売れ残ったすももの前にいる父さんのところへいきました。
 「父さん! みんな 売れちゃった!」
 「そうか! それじゃ 一休みして、ご飯を食べにいこうか」
 父さんは となりのおじさんに 店番を たのみました。
 美味しい においのする食堂で、ヤモは 父さんと 遅い昼ご飯を 食べながらバザールであったことを話しました。
 「戦争で片足をなくしたおじさんも 買ってくれたんだよ。パグマンのさくらんぼは、せかいいちだって。父さんと 食べようと思って とっといたんだ。」
 ヤモは、ひとにぎりの さくらんぼを とりだしました。
 「よく 売れたようですな?」
 となりに すわった おじさんが 声を かけてきました。
 「いやあ、このヤモの おかげですよ。なにしろ うえの息子が 戦争にいってましてね」
 「それは 心配ですな。南の方の戦いは、かなり ひどいというし」
 「来年の春には 帰ると いってたんですがね」
 ヤモは 甘いお茶を 飲みながら、父さんたちの話を聞いていました。ハルーン兄さんなら 大丈夫、きっと 春には 元気にかえってくると、ヤモは信じています。でも、なんだかむねがいっぱいになってきました。
 「ヤモ、あとで びっくりすることが あるよ」
 そんなヤモに、父さんが そっと いいました。
 「え!? なになに。おしえて?」
 「さあ、その前に もう一仕事。残りのすももを 売ってしまわなくちゃ。」
 ヤモは 最後に残ったさくらんぼを 大切に食べると、おじさんに さよならを いって食堂をでました。

 「すもも!すもも! パグマンのすももだよ」
 広場のモスクから お祈りの声が ながれてきます。町は、静かで 落ち着いた色に つつまれました。
 ヤモは すももを売りながら、ずっと父さんの 言ったことを考えていました。
 「びっくりすることって いったい なんだろう?」

 ようやく、すももも 全部売れました。
 「さて、それじゃあ びっくりするところに いくと するか」
 父さんはまっすぐ 広場を横ぎっていきます。
 ヤモは とても じっとしてなんていられません。
 父さんの 肩の上で、大きな声で歌います。
 「♪なんだ、なんだ? びっくりすることって なーんだ?」
 そこは 羊の市場でした。父さんは、もうけた お金を全部使って、真っ白な子羊を一頭買いました。 ヤモのうちの はじめての 羊。こんな きれいな 羊は、村の だれももっていません。
 「さあ ポンパー、家へ かえろう。羊をみたら、きっと みんな おどろくよ」
 ヤモは大喜びで村へもどってきました。なつかしい においが します。たった一日 いなかっただけなのに、とても 長い たびから かえったような きがします。

「パグマンはいいな。せかいいちうつくしいぼくの村」
 ヤモは、そっとつぶやきました。

「ハルーン兄さん、はやく かえっておいでよ。うちの家族がふえたんだよ」
 ヤモは 父さんに たのんで、白い子羊に 「バハール」という名前をつけようと思いました。「春」という 意味の名前です。
 でも、春はまだ先です。

 この年の冬、村は戦争で破壊され、今は もうありません。

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おばけのババヤガー・・ロシア

2018年05月31日 | 絵本(昔話・外国)

               おばけのババヤガー/カロリコフ・再話 カバリョーフ・絵 宮川やすえ・訳/岩崎書店/1988年

 ババヤガーがでてくればロシア。

 ここでは、主人公のマリョーシカを助けてくれる存在です。

 マリョーシカは、いじわるな姉たちからきずだらけにされた”たかの王子”を探しにでかけますが、これが大変な旅。なにしろ三足の鉄のくつをはきつぶし、三本の鉄の杖をつきへらし、三つの鉄の帽子がやぶれるほどの遠くまでたずねるというもの。

 最初のババヤガーは、魔法の銀のさら、金のたまご。
 二番目のババヤガーは、ひとりでに 刺繍をする銀のわくと金のはり。
 三番目のババヤガーは、ひとりでに 金の糸が出る糸巻き。

 もうひとり?助けてくれるのは、おおかみ。

 おおかみが連れていってくれたのは、ガラスのお城。この城には魔法使いの女王がすんでいて、”たかの王子”は、ここにとらわれていました。

 ババヤガーからもらったものを女王にあげて、ぐっすり眠っている王子にあおうとしますが、どうしても目をさましません。ところが三日目にマリョーシカの涙が、王子の肩に<ぽとり>とおちると・・・・。

 鉄のくつや鉄の杖、鉄の帽子がこわれるまでの旅の困難さがあまりでてこないのがややもの足りません。

 ババヤガーがすんでいる小屋は、ちゃんとおなじみの、にわとりの足にのっています。

 ババヤガーも、話によっては主人公を助けてくれる存在ですが、この絵本の中には、ババヤガーは描かれていません。

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