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“ 嵐が吹き消した 恵みのろうそくを 再び取り上げ、それに新しい明かりを灯さなければならぬ。” 教皇ヨハネ二十三世

file.no-67 『オゾンの不思議』

2007-01-26 16:19:24 | 書籍
水道水の塩素や各種薬品による殺菌は、臭いがキツイことだけでなく人体にも悪影響があることから、これを改善する動きが始まったのは意外と最近である。
それが、『オゾン』である。
オゾンとは、そう、上空30kmの彼方で進行中の「オゾンホール」で有名なアレである。
私は中学の頃の理科の授業で、当時まだエアコン・冷蔵庫、スプレーに使われることが普通であったフロンによって、オゾン層が完全崩壊すると聞かされた記憶がある。
あれは一種のギャグであったのだが、無知な中学生だった私は、なまじかホラー話を聞かされるよりも恐怖を感じたものです。
それでも「オゾン」の単語は記憶として焼き付けられたらしく、題名に惹かれ、本を買ったのが東京で働いていた2002年ごろ。それが、今回の書籍です。

オゾンとは、酸素原子と酸素分子が結合したものである。このへんは、中学理科を復習されたい。
O2 + O → O3  …の世界である。
オゾンには強力な酸化力があり、有害な細菌の類を殲滅でき、またオゾンは結合エネルギーが大変低いことから、すぐに分解され残留しないことが利点である。
このことから、ヨーロッパでは1906年には水質改良を目的に導入が開始され、その後一般にも普及、1990年代には合衆国も全面的に水道水の浄化においてオゾンに切り替えた。日本は、90年代後半にやっと導入。現在は、各地の浄化施設はオゾン方式に切り替えられている・・・というのが建前である。しかし、各家庭へ水道管を使って水を支給する間に、水質の劣化が進んでしまうことから施設内最終段階で、塩素を投入する「苦渋の処理」が行なわれている。

このオゾンについて書かれたのが、講談社の誇る知的読み物『BLUE BACKS』シリーズのナンバー1270であるところの、

『オゾンの不思議 毒と効用のすべて』
伊藤泰郎・著  講談社ブルーバックス 1999年 ¥820(税別)

(画像は、書籍表紙のもの)

著者の伊藤泰郎氏は、大気環境浄化プロセスの研究をなさっておられるとのことで、オゾンを使いいかに環境改善、維持を行なうかを目的にしておられるとのこと。
1999年にこそ発行されているが、版を重ねていまだに読み継がれている。
きわめて無害なオゾンを使い、大気や水質、各種の浄化を行なえば、これはたしかに社会にとって有益。また、人工的にオゾンホールを任意に開くことで、太陽光の全波長域を地上にまで到達させエネルギー確保に転用させることも視野に入れているらしい。まさに、科学万能と言わざるをえない。
人類社会の夢、無限・無害のエネルギー確保への一里塚とも言えるような研究である。

オゾンは、生成に何が必要か。
水あるいは空気である。
機具こそ複雑なものを使用するが、いまこの室内にある空気を使い、放電方式で無限にオゾンを生成できるのである。供給源として無限とされる理由は、そこにある。

オゾン殺菌の水は、従来の薬品殺菌した水に比べ、格段に美味しい。
水にもともと含まれている各種ミネラル以外に、薬品が入り込まないからだ。
突き詰めるところ、オゾンは酸素でしかなく、三時間ほどで完全に分解されるため、水に残留する心配もない。

この書籍は、そんなオゾンを、現在私たちの身近なところではどの様に使われているのかを紹介してくれる。
オゾンを活用することで、人類社会はどのような恩恵を受けることができるのか。
医療に転用することで、癌治療、他には皮膚病、歯槽膿漏の類の炎症をみせる病気への治療法確立も研究されている。
あるいは、オゾン水の成長促進作用を見込んで、水耕栽培における食糧確保へ。
・・・などなど、いろいろな局面でのオゾンの活用法を紹介している。

理系を目指す中高生には、将来への夢を育むためにも読んでもらいたい。
社会人でも、世の中をよくしようと研究をしている人々がいることを知るためにも読んでもらいたい。
環境汚染、医療問題、食糧危機といった難題が山積している、人類の未来へのひとつの光明としても、希望を抱いてもらうためにも読んでもらいたい。
これは、そんな一冊です。
   
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