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“ 嵐が吹き消した 恵みのろうそくを 再び取り上げ、それに新しい明かりを灯さなければならぬ。” 教皇ヨハネ二十三世

file.no-25 『 不味い! 』

2005-05-06 20:49:02 | 書籍
美味しいものを食べたいのが、人の性。
ですが、時として、「不味い」ものに出会うのもまた、人の世の常。
これは、小泉武夫さんがこれまでに出会った不味いものについてのエッセイです。

不味い!
 小泉武夫:著 新潮社:刊 2003年

「昔の野菜は美味しかった」
「昔の水は、川の水でも飲めたし、美味しかった」
そう、土地の古老の人たちは言うと思います。
私の里も、畑には鶏糞を発酵させたものを撒く所為か、夏に獲れるトマトや胡瓜は野菜らしい青臭さがあり、とても美味しい。
井戸水も、どの家でも汲み上げて飲んでいるし、山に分け入って、湧き出ている清水も飲むことができる。
ですが、現代の日本では、かつて見られたこんな風景がどんどん少なくなっていますね。

小泉教授の筆になるこの本にも、野菜の不味さについても書かれています。
この本は、旅先のホテルで飲んだティーバッグの緑茶の不味さや駅前の食堂のカツ丼の不味さ。
不味いビールやピーナッツ、蕎麦や鰻、学校の給食など教授自身の体験から、モノの不味さについて書かれた痛快なエッセイなのです。

食の怪人でもある教授ですから、鴉の肉や食用のについても一筆書かれています(笑)

かつては、野菜、水、蕎麦、鰻・・・ビールにしても美味しかったものです。
それが、なぜこうも美味しくなくなってしまったのか。
その原因についても、爽やかな切り口で語られていて、とても読みやすい本です。

不味い食べ物をテーマに書かれた本なんて、食通ぶった本だなんて思いませんか?
この本は、そんなことはありません。
「本当は美味しいはずのものを、よくもここまで不味くさせたなぁ」という教授の溜息が聞こえてきそうな、本当の食べ物を愛する人たちへ贈る一冊なのです。
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