バレエ&音楽日記

舞台は一期一会。素敵な舞台にまた出会えますように…。

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シュツットガルト・バレエ『オネーギン』(12/2大阪)

2008-12-03 18:31:12 | 海外バレエ
前回の来日時には『オネーギン』は東京だけでの上演でしたので、ずっと見たい見たいと思っていた作品です。念願かなって、ようやく見ることができました。しかも、「現代最高のオネーギン・ダンサー」と称されるイェリネクのタイトル・ロール!たった一度の機会を心から味わいました。

振付/ジョン・クランコ
音楽/ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
編曲/クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳/ユルゲン・ローゼ

ジェームズ・タグル指揮/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

オネーギン/イリ・イェリネク
レンスキー/フリーデマン・フォーゲル
ラーリナ夫人/メリンダ・ウィサム
タチヤーナ/アリシア・アマトリアン
オリガ/カーチャ・ヴュンシュ
乳母/ルドミラ・ボガード
グレーミン公爵/ダミアーノ・ペテネッラ

第一幕、第二幕でのタチヤーナは、「つまらない田舎少女」と言ってしまうのはちょっと違うような…なんというか、確かに「まだ垢ぬけない夢見がちな少女」ではあるのでしょうけど、良家のお嬢様としての気品は備えているような感じがしました。年齢の設定は17~18歳?アマトリアンのタチヤーナはもうちょっと下かも?今の感覚でいうと、「女子校育ちで世間知らずの中学生」のような。
髪型を見て思ったのですが、オリガとタチヤーナの年齢はオリガの方が上なのではないか、と。オリガは髪をアップ・スタイルにしていますが、タチヤーナは束ねて編んでいますよね。で、オリガは恋の駆け引きや鞘当てなんかもやってのけるくらい成熟した女性、と。この方がしっくりきませんか?

そしてオネーギンとレンスキーですが、レンスキーは疑うことを知らずに人生を謳歌している若者といった感じに見えました。対してオネーギンですが、自分を見失っているように感じました。根っからの悪いヤツじゃなくて、思い通りにならない自分の人生に失望しているんじゃないかな、と。タチヤーナとオネーギンが二人になった場面でも彼はずっと自分の殻の中にいて、ふと思い出したようにタチヤーナをリフトする…ですが、本心からの行動ではないのでタチヤーナもどうしていいかわからない、そんな場面ではないでしょうか。しかも、本ばかり読んでいる少女なのですから、物思いにふけっている洗練した大人の男性に憧れるのは不思議じゃないですよね。でもオネーギンとしては、そんな「子供」を対等の女性として見られないというのもうなづけると思いました。
寝室の場面では、いかにもシンデレラを夢見る少女といった雰囲気。やはり、彼女はまだ恋に恋する子供。そんな彼女が夢見る鏡のPDDの中でのオネーギンは理想の男性として美化されていたような?

殊に第二幕では、オネーギンは自分を見失っているので、疑いを知らず朗らかに笑うレンスキーに苛立ったのかもしれないと思いました。婚約者であるオリガは無邪気にからかってやろうと思っただけなのでしょうけれど、ジョークの通じない純情なレンスキーには通じなかったのですね。オリガも、「あら、困りますわ~」みたいな感じでオネーギンに接していれば違ったかもしれないけど、オネーギンはそんな雰囲気じゃなかったです。
決闘の前のレンスキーのソロは、彼が純粋な人間であったが故に周囲を信じられなくなった、そんな思いがよく伝わりました。オネーギンはもちろん友人の婚約者を奪ってやろうなどと考えていたのではないので、こんなバカなことやめようじゃないか…と何度もレンスキーをなだめようとしていました。ですが、レンスキーは純粋であるがゆえに一度火がつくと燃え上がってしまうんですね。この純粋さが生んだ悲劇だった…。

第三幕は華やかな公爵邸での舞踏会。若く美しい奥様があのタチヤーナ。かつて、自分が拒絶したタチヤーナ…。しかし、美しい大人の女性になれたのは夫の愛が故とも考えられますよね。イェリネクのオネーギンは確かに驚愕していたようです。アマトリアンのタチヤーナは、確かに洗練された美しい奥様でした。どれだけの日々が過ぎ去ったのでしょうか。レンスキーを死なせてしまったという十字架を背負って、どのように生きてきたのでしょう?頬はこけて、しがない中年男性となり果てていたオネーギンを見て、それでもタチヤーナはかつて愛した人と一目でわかったんですよね。失恋して、しかもその相手によってオリガの婚約者を失って、それでも自分を愛してくれる公爵のもとで痛手を癒してきた…目の前にかつて愛した人が現れ、しかも自分の愛を求めている。タチヤーナの愛をもし得ることができたら、オネーギンは自分を取り戻すことができたかもしれません。しかし、辛い時から支え続けてくれた夫や家族のことを考えた時、タチヤーナの心は夫を裏切ることができなかったのでしょうね。もし独身でいたら、何も迷うことなくオネーギンの胸に飛び込んだでしょうに…。

イェリネクは『眠り』にはキャスティングされていないので、大阪の『オネーギン』が最終日でした。渾身の演技、素晴らしいオネーギンを披露してくれたイリに感謝です。あと、ただのおじさんではない、ダンディなグレーミンはペテネッラ。彼はまだドゥミ・ソリストなんですよね。踊りのキレがあって、サポートも優しくて、本当に素敵でした。
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4 コメント

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Unknown (uno)
2008-12-04 22:55:21
Odetteさん、こんばんは。
『オネーギン』、素晴らしい舞台でしたね!
Odetteさんのレポを読みながら舞台が思い出されて、また感動してしまいました。とくにやはり、イリ・イェリネクのオネーギンが素晴らしかったです。「自分を見失っている」という感じ、すごくわかります。私も、渾身のオネーギンを見せくれたイリに感謝したい気持ちになりました。
また見る機会があるといいですね!
イェリネク素晴らしかったです! (Odette)
2008-12-05 00:59:17
unoさん、こんばんは。
私には『オネーギン』を全幕で見るのは初めての機会でしたので、一瞬たりとも見逃すまい…って感じで気合を入れて見ていました。
一時閉館が迫るフェスティバルホール、入口の前の廊下にはこれまでに舞台を踏んだマエストロやオペラ、バレエ、オーケストラの写真が飾ってありました。フェスティバルホールにはボリショイの公演でまだ行く機会がありますので、ホールにありがとうって言いたいです。
最初の全幕『オネーギン』がイェリネクでよかった!と心から思いました。席は前から10列目くらいだったのですが、第三幕になると激しい息遣いまで聞こえてきました。本当に「オネーギンがいる」って感じでしたよね。
あと、ルグリとルディエールの「手紙のPDD」もちょこっと思い出しています。ロシアのお話なので、ロシア人のキャストでもぜひ見てみたいです。マラーホフとか、マラーホフとか、マラーホフとか…(笑)!
パドドゥがきれいでした (sweetbrier)
2008-12-06 22:34:54
こんばんは。「オネーギン」大阪公演、すばらしかったですね。3年前の来日公演にも持ってきてくれたので、当分は日本で全幕を見ることができないかと思うと、残念です(私は前回の公演を見逃しました)。

私はイェリネクのオネーギンが、とても孤独な人に見えました。誰とも心を通わせたり寄り添わせたりできないひと。彼(イェリネク)は、不幸を背負わせたら今のシュツットガルト随一のダンサーかも?ですね。

それにしても、パドドゥがどれもきれいでした。
Unknown (Odette)
2008-12-08 23:52:41
sweetbrierさん、こんばんは。コメントをいただいてからお返事が遅くなってしまってすみませんでした。
先ほど、ちょうどレポートを拝見してきたところです。オペラ『エフゲニー・オネーギン』の歌詞など織り交ぜて書いていらして、あぁ、こんなこと考えて踊ってるのね、と。心情がよりよくわかりました。

>彼(イェリネク)は、不幸を背負わせたら今のシュツットガルト随一のダンサーかも?

なるほどー!そうかもしれませんね。というより、幸せいっぱいのイェリネクを想像できません(笑)。

今度、オペラのDVDを探してみたいと思います。
さぁて、次はアレクサンドロワの白鳥ですね!今回は二階席なので、コール・ドも楽しみたいと思っています。

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