Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

中山七里「おやすみラフマニノフ」

2013-01-09 00:31:02 | 読書感想文(国内ミステリー)




愛知音大定期演奏会の第一ヴァイオリン首席奏者に選ばれた、ヴィルトゥオーソ科の城戸晶は、演奏会で
大学が所有するストラディバリウスのヴァイオリンを弾けることと、プロへのきっかけをつかむために
練習に励んでいた。しかし演奏会の前に、完全密室で保管されているはずのストラディバリウスのチェロが盗まれ
たことで状況は一変。犯人捜しで疑心暗鬼になるオーケストラのメンバーたち。しかし事件はそれだけにとどまらず、
彼らの周りで次々と不可解な出来事が起こる。事件が表ざたになることを畏れた大学側は、警察に届ける代わりに
臨時講師の岬洋介に調査を依頼するが…。


※ここから先はネタバレあります。要注意!






「さよならドビュッシー」の終わり方がちょっと腑に落ちなかったので、その続編の「おやすみラフマニノフ」も
読んでみました。続編なので、「さよならドビュッシー」のその後についても触れてるかと期待したのですが、
残念なことにかすりもしませんでした。一応、前作の主人公だった少女がちらっとだけ登場するものの、物語には
まったく絡んでこないので、「ああ、この話の中では前作はもう完結しちゃってるんだな」と納得しました。
(時系列的には前作と今作は少しかぶってます)

協調性のない、ひとくせもふたくせもあるメンバーばかりの学生オーケストラが演奏するのは、ラフマニノフの
ピアノ協奏曲第2番。指揮者は新進気鋭の天才ピアニスト…とくれば、「のだめカンタービレ」を思い出す人は
多いんじゃないでしょうか。私はドラマも映画も未見ですが、原作の漫画を読んでいたので、小説を読みながら
何度ものだめを思い出しました。まあ、岬洋介と千秋は全っ然性格が違うけどさ。

「さよならドビュッシー」では、作者が用意したトリックにまんまとひっかかり、「ムキー!」となってしまいました。
しかし今回の「おやすみラフマニノフ」では、細かい伏線にも目を光らせたので、真犯人もその動機も主人公の晶の
抱える思いも、おおかた当てることができました。やったーわーいわーい。でもホントはあっと驚くトリックで
まただまして欲しかった…かな。やっぱりミステリーはサプライズがないとね。どどーんとね。

前作は主人公がピアニストを目指していたのでピアノがメインでしたが、今作の主人公はオケのコンマスなので、
ヴァイオリンとオーケストラの描写がとても多かったです。くどいくらいに。特に、ストラディバリウスの楽器の
素晴らしさを表現するのに相当なページを割いているので、クラシックに疎い私でもストラディバリウスの音を
聴いたことがあるような気になりました。実際のところは、聴いたこともなければ聴いてもストラディバリウスだと
わからないと思いますが。ははっはー。

ただ、ストラディバリウスがいかに素晴らしいか、ピアノ協奏曲第2番ができるまでにラフマニノフがどんだけ苦労したか、
クラシック音楽に関するウンチクを語るのにページを使いすぎた感はあります。そのへんをもう少しシンプルにして、
時価2億円の名器の紛失、天才音楽家一族の知られざる闇の部分、貧乏音大生が抱える秘密、天才指揮者兼ピアニスト兼
名探偵の推理、などのミステリー要素を掘り下げてくれたほうがこちらにはありがたかったです。だって、やっぱりどれだけ
言葉を尽くしても、音楽は耳で聞かないとその良さがわからないところがありますから。

それにオーケストラが出てくるのに、そのメンバーが物語で重要な役を演じてないのは寂しいです。三角関係っぽい
人たちもいたのに、彼らがどうなったのかよくわからないままに終わってしまい、すっきりしません。もっとも、
結末が尻切れトンボっぽいのは、前作も同じでしたが。

「さよらなドビュッシー」もこの「おやすみラフマニノフ」同様、舞台が名古屋でしたが、前者より後者のほうが
地名などよりローカル色が濃かったです。名古屋周辺に在住の方なら、他地域に住んでる人とは違った読み方が
できるんでしょうね。

クライマックスの前に出てくる集中豪雨のエピソードは、ちょっと唐突というか雑というか。突然の災害で混乱する
住民たちをなだめるために、避難場所にあったピアノを使って岬洋介と共演することで、晶が音楽への情熱を取り戻す
という展開は構わないのですが、そこまでのお膳立ての流れがぎこちなすぎて。その前に出てくる、集中豪雨の被害に
苦しんだ住民の言葉が重かっただけに興ざめでした。まあ、この演奏シーンは想像すると面白いんですけどね。
映像化するならぜひ見てみたいです。

それにしても、「さよならドビュッシー」といい、「おやすみラフマニノフ」といい、文章から受ける雰囲気は
軽い感じなのに、内容は徹底的に救いがありません。たとえ犯人が分かっても、主人公たちは必ずしも前途洋々と言えず、
ハッピーエンドと簡単に言うことができない。それでも、素晴らしい演奏ができたことで、彼らは満足するのだから、
音楽とは本当に恐ろしいものですね。いやマジで。

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