「すべての事象は過ぎ去るものである。修行者よ、あなたたちは怠りなく修行につとめなさい」
お釈迦様の最後の旅での、修行者たちへの遺言である。
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すべての事象は過ぎ去っていく。立ち止まらない。そこにいつまでもある、ということがない。あったという跡形すらも見えなくなる。
過ぎ去って行くものに執着をしてそこにひとり立ち止まっている。過ぎ去ることなく悲しみに耽っている。苦しみに喘いでいる。楽しみに浮かれている。過ぎ去って行くものに悲しみを寄せ、苦しみを巻き付け、楽しみをつかまらせている。
道は遠い。仏陀への道は遙かに続いている。怠りなく、立ち止まらないで、なすべきことをなしなさい。修行を完成させなさい。仏智見を開いて、あなたたちすべてが仏陀と成りなさい。
自灯明 法灯明。自らを灯りとして歩きなさい、法を灯りとして歩きなさい。仏道を歩きなさい。法とは仏陀の説法、あるいは説法の中で説かれた仏智、あるいはその仏智に見えて来る真如、具体的な宇宙のエネルギーのことである。
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すべてのものは過ぎ去って行く。わたしが生きていたことも死んで行くことも、それがそこには留まってはいない。つまり、次へ次へと新しく新しく進展していくのである。其処に身を委ねていればいいのである。古いもの、古くなったわたしに執着はいらない。古くなったわたしに取りすがって泣いて悲しんで、取り残されてはいけない。
すべては新しく新しく次へ次へと進んで行くのである。わたしもあなたも、時間の宇宙も。