1
「やりたいことはみんなやれたさ。そうだよ、やりたいと思っていたことはなんでも」
2
僕らはこの台詞を言いたくてたまらないのだ。
3
そして実際そうなっているのだ。
4
僕らが心底やりたいと思っていたことはなんでもやれてこれたのである。
5
やれなかったこと、それは、やりたくなかったことであるか、あるいはやらなくともいいことだったんだ。
6
僕らはみんな魔法使いを生きていたんだ。そうさ、見事な魔法使いをね。
7
仏教の「所求円満して歓喜信受す」はこれを教えている。
8
求めるところはみな円満したり。ただ歓喜して信受すれば、如実にして如実来なり。
9
吾は唯(ただ)足るを知る者なり。足るを知ればことごとくみな円満成就す。
10
こうして僕らは仏陀の法を見事にこなしてきたのだった。しかもみんなが無意欲にして。
11
仏陀の法って? たとえば、澄み切った大空のことさ。
12
今日の秋の空のことさ。あれは仏陀の法という魔法使いが魔法をかけていたものだったのさ。
13
秋の大空澄み渡る。そしてこれがまさしく僕らがやりたくてやりたくてならなかったことだった。
14
こうして僕らはこれだけのことでうっとりとなってこの日を過ごした。