1973年に起こったアメリカの大富豪ジャン・ポール・ゲティの孫が誘拐された事件を、「オデッセイ」「グラディエーター」など数々の名作を送り出してきた巨匠リドリー・スコット監督のメガホンで映画化したサスペンスドラマ。73年、石油王として巨大な富を手に入れた実業家ジャン・ポール・ゲティの17歳の孫ポールが、イタリアのローマで誘拐され、母親ゲイルのもとに、1700万ドルという巨額の身代金を要求する電話がかかってくる。しかし、希代の富豪であると同時に守銭奴としても知られたゲティは、身代金の支払いを拒否。ゲイルは息子を救うため、世界一の大富豪であるゲティとも対立しながら、誘拐犯と対峙することになる。ゲイル役をミシェル・ウィリアムズ、ゲイルのアドバイザーとなる元CIAの交渉人フレッチャー役でマーク・ウォールバーグが出演。ゲティ役をケビン・スペイシーが演じて撮影されたが、完成間近にスペイシーがスキャンダルによって降板。クリストファー・プラマーが代役を務めて再撮影が行われ、完成された。(映画.comより)
映画通の方ならご存じの、ケビン・スペイシー曰く付きの映画。クリストファー・プラマーが引き受けてくれてよかったですね。これも巨匠リドリー・スコットのなせるわざか。しかし、こちらしか見ていない私は、最初からこの役はプラマーだったようにしか見えなかったのでした。
「ロスト・ハイウェイ」というデヴィッド・リンチの映画を見たときに、主演のバルサザール・ゲティは大金持ちゲティ家の御曹司だ、と聞きました。でもあんまりその筋のことを知らなかった私は「ふぅぅん」くらいにしか思わなかったのでした。今回の映画を見る限りでは、バルサザールは当事者ではなかったようですが、なるほどうなるほどの大金持ちだったわけですね!
しかし犯人もアホですよね、大金持ちだからその孫を誘拐しよう、なんて安易すぎますよね。すんなり行くとでも思ったのでしょうか。そんなにコトが簡単なら、とっくに誰かがやってるはずです(笑)。やるほうは単純に「金持ちだ」と思ってやるのでしょうが、現実はそれほど単純ではありません。一代たたき上げのプラマーは当然厳しく、息子はそのプレッシャーに耐えられなかったのか、あるいは元々ボンクラだったのか、最終的には廃人のようになってしまってます。その嫁ミシェル・ウィリアムズは地方検事の娘と言う出自で、自らも優秀な女性ですが、夫でさんざん苦労したあげく、離婚となると厳しい条件を出され、何ももらわず手ぶらで離婚し必死に働いている状況です。しかも息子が誘拐されて、その対応は日夜を徹して行われています。祖父はびた一文出さないし(そんなことに応じれば他の孫も狙われてしまう、という彼の言い分もわかる気がする)、「自分こそは犯人だから現金を持ってこい」という”自称犯人”がわんさか出てくるし、マスコミは「大金持ちのくせにお金を出さないケチな奴ら」と言わんばかりの報道をするし、しまいには母親の愛情や資質を疑うような報道も。でもね、お金があるのは本当に当主(クリストファー・プラマー)だけであって、離婚して必死に働いているシングルマザーにそんな大金、本当にないんです。みんな妬み・そねみが一緒くたになって、言いたい放題。殺生なもんです。
まぁ事件が事実である以上、結末は最初からわかっているわけですが、犯人グループの中にも金持ちのボンを憐れんで優しくしてくれる奴がいたり(その役がロマン・デュリスだったり!)、金になる男は悪人(?)同士で売買されたり(これには驚いた。よく考えるとなるほどだけど)、まぁいろいろなことが起きます。
マーク・ウォールバーグなど、普通の正義漢も出てくるのですが(それでも彼だけミシェルの5倍?50倍?のギャラで撮り直したと聞いたので素直に見れない)、基本”ヒトの悪の側面”ばかりがクローズアップされる映画なので、気をしっかり持って見ないといけません。それでも疲れてしまいますけど。元気なときに、どうぞ。