田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

偽りなき者(Jagten)

2014年11月25日 07時09分47秒 | 日記

偽りなき者

「セレブレーション」「光のほうへ」で知られるデンマークの名匠トマス・ビンターベアが、「007 カジノ・ロワイヤル」「アフター・ウェディング」のマッツ・ミケルセンを主演に迎えたヒューマンドラマ。変質者の烙印を押された男が、自らの尊厳を守り抜くため苦闘する姿を描き、2012年・第65回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞ほか3冠に輝いた。親友テオの娘クララの作り話がもとで変質者の烙印を押されたルーカスは、身の潔白を証明しようとするが誰も耳を傾けてくれず、仕事も親友もすべてを失ってしまう。周囲から向けられる侮蔑や憎悪の眼差しが日に日に増していくなか、それでもルーカスは無実を訴え続けるが……。(映画.comより)

 

 

 最近見逃した映画を見る機会に恵まれています。どっと古いものから比較的新しいものまで。手当たり次第になんでもかんでも録画している娘のおかげなのですが(笑)、録画し過ぎて「早く見て、消去して行って!」などと急かされたりもするわけです。興味のないものは「私はいいから、好きに消去しぃよ」なんてものなのですが、「おっ」と思うものは置いといてもらうわけです。

さて、マッツ氏の少し前の映画。この手の題材はあまり好きではなく、日本でも「それでもボクはやってない」という映画があったように、男性が一度そんなレッテルを貼られてしまうと、一生を棒に振る、というもので、今回は子供ですが、現実には自意識過剰な女性がいることも事実です。

こういう事件と言うのは、複数の要因が絡まり合って起きてしまいます。まず、主人公のマッツさんが離婚されて男一人暮らしであること。学校の閉鎖により職を失い、今は幼稚園の先生をしていること。

そして地元の親友であるテオの夫婦は、言い争いも多く、今日も朝から大声でがなりあっています。幼稚園児の娘クララはいたたまれず、外で座っています。そんなクララと幼稚園まで一緒に行く優しいマッツさん。クララはひそかにマッツさんに恋慕の情を抱いています。

そして、クララには年上の兄がいて、多感な時期の兄は性的な写真を「ほらほら、見ろ」と幼い妹に見せたり、卑猥な表現を使ったりします。

そして、男の子に比べておマセな女の子は、大好きなマッツ先生にキスしたりプレゼントを贈ろうとしたりします。皆に平等であるべき先生は、「口にキスはだめだよ」とか、「これは、他の男の子にあげなさい」などと、女心を踏みにじる発言をしてしまうのです。ここが大きな誤算でしたね。女の子は、男性が思うより大人なのです。

クララのプチ復讐が始まります。「先生なんて大嫌い」から始まって、ないこと、ないこと、話し始めてしまいます。兄から学習した付け刃の性的知識も、大人たちの誘導尋問によって完成されてしまい、後は何を言っても(例えば「嘘だったのよ」と言っても)、「恐ろしい記憶は、頭が消そうとするのよ。無理しなくていいわ」などと言われてしまいます。

一度こういう疑いをかけられてしまうと、あとは雪だるま式に「うちの子もそうだった」などというあり得ない証言が次々出てくるのは社会の常。この辺は今まで映画でも散々描かれて来ましたね。

私達は、主人公マッツさん側から鑑賞してるので、クララや周りの大人に腹が立つわけですが、しかし、よく考えるとどれもこれもが日常にあることなんですね。

たとえば被害者意識マックスなテオ夫婦。自分たちが言い争っていたことや、子供にそんな思いをさせていたなんて、カケラも気付いていません。あくまで「自分たちは普通だった」と思っています。でも、もし自分がその立場なら、きっと同じですよね。むしろその事件がきっかけで夫婦が結束すると言う。

また、一番の原因を作った兄貴だって、自分の言ったこと、したことなんて、とうに忘れてしまって「かわいそうなクララ」と涙を流しています。これも、teenagerなら、そうですよね。性的なおふざけなんて、日常茶飯事過ぎていちいち覚えているはずがありません。

そして、一番いけないと思ったのは、子供に誘導尋問を行った「専門家」と呼ばれる方々。ここは映画だから誇張されているのか、あまりにあまりな誘導でした。現実にはここまでの誘導はプロとしてあり得ないかも。

後から後から膨らむ「変質者」のレッテルにおびえる住民たち。村八分より悲惨な状態になります。それでも、もし自分が「その他大勢」の保護者だったら。「マッツさんは潔白だ」と固く信じるほどの付き合いがなかったら。多分大きな波にのまれたまま、皆と同じ行動を取りますよね。

結局、どれもこれも特別なことではないにも拘わらず、結果的にすべてのことが絡み合って既成事実が作られてゆく、という現実を目の当たりにすることになります。かわいそうなマッツさん。

ラストは一転、明るい展開を見せますが(何かのきっかけでマッツさんの嫌疑が晴れたのか、なぜか1年後には地域に溶け込んでいる)、これだけの騒動、完全に元の鞘に収まることなどあり得ないんじゃないかなぁ・・・と不安がマックスになったところで、あることが起きます。詳しくは説明されません。なんだったのか、あるいは幻視だったのか、よくわかりません。

でもやっぱり、人の社会は、そう単純ではないのです。

 

 

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