田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

マップ・トゥ・ザ・スターズ(Maps to the Stars)

2015年01月25日 17時02分37秒 | 日記

 「イースタン・プロミス」の鬼才デビッド・クローネンバーグが、「キッズ・オールライト」のジュリアン・ムーア、「イノセント・ガーデン」のミア・ワシコウスカ、「マルコビッチの穴」のジョン・キューザック、「トワイライト」シリーズのロバート・パティンソンら実力派キャストを迎え、ハリウッドでリムジン運転手として働いていた脚本家ブルース・ワーグナーの実体験をもとにハリウッドセレブの実態をシニカルに描いた人間ドラマ。セレブ相手のセラピストとしてテレビ番組も持つ父親ワイスを筆頭に、ドラッグ問題を乗り越えて有名子役として活躍する息子ベンジー、ステージママとして息子を献身的に支える母親クリスティーナら、典型的なハリウッドのセレブ一家であるワイス家。順風満帆な暮らしを送っているかに見える一家だったが、ある問題を起こしてフロリダの施設に入れられていた長女アガサが戻ってきたことにより、これまで隠し通してきた秘密が明らかになっていく。母親役を演じたジュリアン・ムーアが第67回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞。(映画.comより)

 

 

 

 ハリウッドの裏事情を描いた映画は数あれど、こんな悪趣味な映画は少ないと思う。作品の出来の良し悪しではありません。単に女優にそこまでさせることもどうかと思うし、セレブの家庭の設定も極端すぎる。いくらなんでもそんなことってあるのかな、って思います。まぁ自分が見てないだけで、「ムービー43」なんて映画もあったようですし、有名女優に下品なことをさせるのももはや普通なのかもしれませんが。

しかし、細かい話は下の<ネタバレ>で書くとして、全体として話にしまりがないように思えます。監督は結局何を言いたかったのか。主人公たちはなんだったのか。普通ではない人たちが出てくるわりには話が上滑りしているように思いました。

さて、主人公の一人、ジュリアン・ムーアは母(これが最近よく見るサラ・ガドン!相変わらず美しい)が有名カルト女優だったという二世俳優。でも、自分自身に代表作はなく、年齢のこともあって、最近ではめっきり落ち目です。

そしてここにセレブ御用達のセラピスト、ジョン・キューザックがいます。彼はテレビで自分の番組を持つほどの有名人で、息子は有名子役と来ています。当然妻(オリヴィア・ウィリアムズ)はステージママですね。彼らは豪邸に暮らす3人家族に見えますが、実は病院か施設かに入っている娘がいたんですね。それがミア・ワシコウシカ。彼女は未成年の時に、家に火を付けたかなんかの問題児で、自身も全身にやけどの跡があります。そんな彼女が退院(退所?)を機に、世間に出て来ます。そして施設内から文通していたキャリー・フィッシャー(本人!)の紹介でジュリアンの個人秘書となるのです。

これにリムジン運転手のロバート・パティンソンも絡み、幾重にも話が展開します。

母親に性的虐待をされている幻想をしょっちゅう見るジュリアン・ムーア(これは真実なのか、彼女の思い込みなのかは最後までわからない)、彼女をなぜか下着姿にさせてからセラピーマッサージを施すジョン・キューザック、パーティ三昧の子役息子など、クセのある奴ばっかりです。

役が欲しくて必死なのに、欲しかった役を取られた若い女優にショッピングモールで遭っても「まぁ~なんてかわいい息子ちゃんなの」って愛想を言わなきゃならない現実(ジュリアンね)。いやらしいことに、すぐれた脚本(採用してもらえる脚本?)を書きたいがために、「やけどを負った子の話を書いているのよ」などと言ってミアに近づいて来る奴ら。キャリー・フィッシャーだって、それが目当てに文通してたのですから。どいつもこいつもまったくヘドが出ます。

ほとんど病的なジュリアンは、便秘でなかなか出ないトイレ中にミアを呼んで「彼氏(ロバート・パティンソンのことね)とは、どうなってるの。寝たの?」などと便器に座ったまま聞く無神経さ。しかもオナラまで2発。思わず目を背けてしまいます。

役を持って行かれた若い女優の息子ちゃんが、目を離したすきにプールで溺死などという事件が偶発的に起こり、彼女が役を降りることになったとき。マネージャーに話を聞いたジュリアンは、当然最初は驚きます。「そんなことがあるはずない。昨日会ったのに」って。「あんなかわいい子にどうしてそんなことが」って。でも、ふた呼吸くらい置いて、マネージャーが「その役はあなたにって、プロデューサーが」と言ったくらいからの「そんな。あの役は彼女がやるべきよ」と始まる会話の上っ面感ったらハンパない。思わず「ショーガール」の、階段での突き飛ばし事件を思い出しました。

最後まで否定していた彼女は、しかしマネージャーが帰った後は「ナナナ~ナ~」とリズムを取って踊り始めるのです。うれしそうな表情で、亡くなった息子ちゃんの名前まで入れた悪趣味な歌を歌いながら、「ほら、あなたも踊って」とミアに強制しながら(ミアはなにも知らなかったが)。

こうしてジュリアンは、主役を手に入れたのでした。しかも、亡くなった自分の母親の役。ドキュメンタリー調の映画らしくて。

ロバートも、「付き合っている人がいるから」と言いながら、ミアともジュリアンとも寝るいいかげんさ。例によって、脚本を書くかもしれないとか。

そして、ジョン・キューザックの家族の物語は・・・。

 

 

<ここからは話のキモのネタバレ。鑑賞前にはお読みにならないことをお勧めします>

 ジョンとオリヴィアの夫婦は、別々に育ったけれど実は兄妹だったのです。それを知らずに結婚してしまったため、ミアと弟は近親相姦の子。何かでそれを知ったミアが取り乱してしまったのですね。また、ミアには亡くなったはずの人が見えるのです。往々にして彼らは、生き人を追い詰めるため、ミアも火をつけると言う事態を招いてしまい、その結果今のようになったようです。

最近は弟にもその傾向が。有名人であることを傘に着て、重病の少女に誠意のない見舞いをしたら、死んだ後に現れたり。あるいはジュリアンのライバルだった若い女優の、溺死した男の子が見えたり。

過去、姉に殺されかけたとして「絶対会わない」とか言ってた弟ですが、幻覚のせいで人を傷つけてしまったりと、何かと行き詰まり、姉を訪ねることとなります。そして真実を知るのです。

一方、その呪縛から逃れられないジョンとオリヴィアの夫婦。最後にはオリヴィアが焼身自殺をはかり、ジョンの目の前で焼け死んでしまいます。茫然自失のジョンから、結婚指輪を盗む弟。

姉と弟は、両親の指輪をそれぞれ身につけ、子供の頃戯れでやっていたように、結婚の誓いを立てます。そして錠剤を複数服用。そのまま横になるのです。多分、死ぬってことでしょうね。そこまで描かれませんけれど。

でもね、その錠剤がなんだったのかは示されないし、単に眠るのかも、って気もせんでもないです。また、「死人が見える」能力が結局なんだったのかは最後までなんの説明もないし、ひょっとして、近親相姦で生まれた子には特殊な能力があるってことでも言いたかっただけなのかな。なんだかこの辺が宙ぶらりんです。

兄妹が夫婦って、いけないけれど、別々に育って知らずに結婚したのなら、そこは仕方がないし、なにも目の前で身体に火をつけなくても。一応、五体満足で子供が育っているのなら、巨万の富を上手に使って、もっと他に解決法もあったはず(と思う)。

他人にはわからない苦悩もあるだろうけれど、あまりに想像を絶することの連続だったので、「やりすぎじゃない?監督」と思ってしまいました。疲れている時にはお勧めしない映画です。

 

 

 

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2 コメント

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映画を観ました (Kou)
2016-01-19 13:03:53
観ていてわからない部分があったので
とても参考になりました。
ハリウッドセレブの家族の物語としても
とても現実離れした映画ですね。
もしくは現実は映画より奇なりなのか。
ありがとうございます。
初めまして (ミキ)
2016-01-21 11:22:00
Kouさん、初めまして。コメントありがとうございます。

そうですよね、私もやや現実離れしてるかとも思ったのですが、でもひょっとして「事実は小説よりも奇なり」なのかな、こんなこと本当にもあるのかな、とも思ったりもしました。

生活に必死な貧乏人には考えられない世界、人間ってお金を持てばこんな感じになるのかしらん。

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