“坂の上の雲”

登っていく坂の上の青い天に、もし一朶の白い雲が
輝いていてもいなくても、また坂を登っていきます。

16/08/21『大千軒岳』

2016-08-21 | 5道南・夕張の山

昨日に続いて道南を徘徊しています。

遠い遠い北海道最南端の山「大千軒岳(1,072m)」に登ってきました

(※千軒の由来は、江戸時代、砂金堀りで働く鉱夫の小屋が数多くあったことによるらしい)

 

 

大千軒岳を望む(晴れていれば)花畑に立つキリシタン殉教のシンボルクロス

 

 

台風の当り年になっている観のある2016年、

その台風シーズンはまだまだこれから9月に入ってからがピークと

なるので、北海道内は河川の増水の影響で林道閉鎖などが予想される

中、道南のこのエリアはまだそれほどの雨量にはなっていないようです。

 

さて、昨日わけあって訪れた上ノ国町のお宅で素晴らしい景色を見せて

いただきました

そのお宅は岬の突端の高台にあって、日本海を一望できるロケーション

に建っています。


部屋にある左右の大きな西向きの窓から、ご覧の様な景色が望めます

 

あいにくの曇り空なので、その美しさは20%程度かもしれません。

しかし、晴れていれば遠く奥尻島に黄金色に輝く夕日が沈みゆく風景を、

毎日眺められるのです。


1泊4万円以上のホテルのロケーションに匹敵するこの雄大な景色を

眺めながら暮らしていると寿命も延びるような、

そんな贅沢さを感じました

 

大千軒岳報告は雨の山行報告なので、写した画像もパッとしないため

いつになくオープニングが山と関係のない話題から始まってしまいました


さて、昨晩宿泊の某所を出て比較的早い時間に登山開始できました

 

5:30 奥二股 登山口

 

雨が間断なく降り続いているので暑いですが今日はカッパ着用です

 

道南の山は、とにかくヒグマが気になります

登山道だけでなく林道にだって突然あらわれても不思議のない環境ですから、

登山開始から気を抜けません。

よく鳴る熊鈴“カネゴン(久し振りの携行)と一緒だと多少安心感があります。

そして、この日はホイッスルも度々鳴らしながらの登り下りです。

 

登山開始直後に現れる趣のある吊り橋

 

 

前半の行程は夏山ガイドの通り、知内川右岸の高巻きを繰り返し、

途中、瀬が浅く広い河原を過ぎてからは左岸に沿って登って行きますが、

これもガイド通りで標高がまったく稼げてないのでしょう

それは、この知内川の遡行を離れて尾根に取りついてから納得させ

られることになります。


 

左岸、比較的平坦な登山道の途中に、当時砂金を集めていた場所

金山(かなやま)番所と呼んでいたらしい。

 

そこの岩上に“キリシタン殉教の地”の記念碑が立てられています。 


当時こんな山奥にまで分け入って、

砂金堀りをさせられ殉教したキリシタン106人の艱難辛苦が偲ばれます。


我々登山者は今、知内町の海岸から道道、林道を経て、満足に整えられた

登山道を歩いているわけですが...

当時砂金掘りの人工として移り住んできたキリシタンの道程は険しく、

想像もできないぐらい辛い苦行だったと思われます

 

 

さらに、殉教の過程で熊に襲われて亡くなった人だっていたでしょう 

この雨で、それほど悲壮感ばかりが想起される登山です。

 

カッパ、それも今日はゴアではないレインスーツなのでとにかく暑い

その暑さは蒸し風呂的で、胸元を開いても汗がスーツ内に溜まる一方です。

 

ようやく谷筋から取り付いた尾根は急登で、巻道でアップダウンさせられた

脚に堪えます。

沢の遡行からいきなりの急登の雰囲気は日高の山に似ています。

ただ、樹木の様子が違っていて、鬱蒼としたブナ林の緑の濃さが道南の山らしさ

印象づけているような気がします。


 

暑い

そして長い(そう感じる)

時間はそれほど経っていないのに、ものすごく長く感じられた尾根も

森林限界に達したのか、いつの間にか笹原に吸い込まれて斜度が緩やかに

なってきた時、この標高差600mの尾根登りの終焉を感じることになります。

 

報われそうな景色の無いガスの中の登りは辛い

 

ところどころに立てられている標識通りだと、あと少しで頂上です。


そして、

ようやっと十字架の立つ「千軒平」です


ここから頂上までの緩やかな稜線上の景色が、晴れていれば最高なのだ

と雰囲気でわかります

季節が夏の終わりを告げているこの時季にも“お花畑”が豊かに更新

されていて、陽の光が当たっていればどんなに輝いていることか・・

想像してしまいます


 

辛かった稜線までの行程がうそのように脚に優しい稜線歩き....は、

もうそう長くありません。

 

立派な標柱のある大千軒岳の頂上に到着です。

 

8:10 頂上

 

相変わらずのカッパ姿に背景無し

晴れていれば青森県の最高峰「岩木山(1,625m)」までもが眺められる

という頂上からの眺めは心眼です。


北海道最南端の1,000m峰にして一等三角点


この大千軒岳は手稲山(1,023m)と変わらない、わずか1,072mなの

に、そう感じさせないアプローチの長さを感じます。

標高が1,600mはあるように感じるのは、沢の巻道のアップダウンと

600mはある尾根の一気の登りからでありましょう。

 

そんなことをつらつら考えながら、おにぎりを1つかじって、

景色の無い頂上を後にしました。

 

■8:20 下山

 

天気の快方はありませんでしたが、登りの緊張感がいくぶん和らい

いるのはヒグマの気配がそう感じられなかったからでしょう。


 

その角を越えたら...、

「羆の親子がこちらに向かって来るのでは?」が無くて良かったです。

遠くであっても親子に出遭ったら即下山と決めていました。

ヒグマが餌をあさる“掘り返し”も見られませんでした。

そして登山道に糞も観られない。


登ってきた道と同じ道を下る安心感で下山は比較的楽です


 

長かった尾根も下りは意外と短く感じます。

(普通は逆で、こんなに長い距離を登ったっけ?となるはず)

ただ、最後の巻道の登り下りは少し疲れました。

いずれにしてもカッパの内は汗でびしょ濡れ、

この時点では、「また来たい」とは思えない山行だったはず・・・


保水力の高いブナの巨木が道南の山の証

 

それは登山口までの林道の途中で、車の左下のスポイラーを傷つけて

いたことも気になっていて、

早く下山、早く帰宅したいという気持ちが強かったからだと思います。

 

10:00  奥二股登山口

 

登山者にとってはそれほどでなくとも、巡礼者にとっては、国内に数ある

殉教地の中でも行くのが最も困難な地だということですから、

たまたまですが、昨日の太田山神社に続いて

“信仰の強さは岩をも穿つ”

という現場を目の当たりにすることになった貴重な山行2日間でした。

 

下山後、藪蚊がわんさかいる登山口にはToshiの車両のみ・・・


着替えの途中で羆の糞を発見


これは登山開始時点ではたしてあったものか・・・

記憶にありません

 

この報告を書きあげている今は、もうまた再び登りたい大千軒岳です 

 

 

 


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8 コメント

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意地だねえ・・・ (Amigo)
2016-08-24 22:28:23
ここからは遠い彼の地だからこそ意地を発揮し、雨の中を登ったんだろうが、辛かったねえ。

まるで墓みたいな印象の山に、私は足が向かない。
『大千軒岳』が遠い地であることにホッ・・・
返信する
>意地だねえ・・・ (Toshi)
2016-08-25 18:54:14
Amigoさん

山は晴れれば100倍楽しいはずなので、晴れておれば“お墓”の印象も
変わっていたでしょう。

辛かった印象は日々薄れていって、どうにもその場所の本当の眺めを
堪能したいと思う心は逆に日が経つほどに増してきます。

津軽海峡の先を遥かに遠望したい気力がふつふつと沸いてきています。

しかし、何年先になることか・・・
返信する
too far! (hiromi)
2016-08-25 22:35:48
遠い山ですね~
登山道がしっかりして、看板も存在感があって、手入れされている感じ。
スポイラーに傷ですか・・。ショックですよね。
遠くて簡単に行けそうにないので、Toshiさんが行った時の画像から何が見えるか楽しみにしています!!
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>too far! (Toshi)
2016-08-26 07:35:36
hiromiちゃん

確かに遠いわ

登山道は半分が沢筋で、巻道を繰り返す先々に渡渉もあるので
けっこう難解です。
ピンクテープが無いとビギナーではとても登れる山ではないです。
(増水のたんびに渡渉の取り付き地点は変っているはず)
それだけにもう一度挑戦したいところだけれど、

ま、いつになることやら・・・

上ノ国町からの近道ルートがあるらしく、そこが閉鎖でなくなったら
意外と頂上に立つことだけは近い将来かもしれません。

ミニ山の会を代表して目に焼き付けてきたい!!
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見上げた根性・・! (★たぐぴ〜♪)
2016-08-27 22:26:02
 
昨日の太田山神社も含め、
今回の殉教地への山行といい
トシクンはやっぱしチャレンジャーばいねぇ・・

どげん考えたって「しんどい」て
分かっとる道程ば、黙々と登っていきんしゃる。
修行僧のごたる・・

で、その行程ば上手に文章にしとる。
これまでのブログもそうばってん、
読んどって臨場感のあるもんねぇ・・

いつも感心するばい。
退屈せんし、面白かし、写真も上手かし・・

山登りにまったく縁のないオイラに
楽しみば与えてもろうて感謝しとるばい。

これからも、熊に気をつけて、体調に気をつけて、
楽しいブログば届けてはいよ〜。


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Unknown (Tak)
2016-08-28 00:01:06
Toshiさん、まだまだ知られざる山がありますね!知られざる、曰く付きシリーズを、これからも期待しています。
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>見上げた根性・・! (Toshi)
2016-08-28 10:32:17
たぐぴー♪さん

いつもありがとうございます。
大九州に“たぐぴー♪さん有り”と思えばこそ、一生懸命おつたえしちょります
見上げる先に坂があれば、その大九州にまで出かけていきたいところですが・・・
お互いそうもいきませんので、こうして“涼感”をお届けしますね。

もう9月にもなろうとしていますが、相変わらず暑いご当地お見舞い申し上げます

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Unknown (Toshi)
2016-08-28 10:34:29
Takさん

正直申しました。
Amigoさんご指摘のように意地になっておりました。
この雨の中、ここまで走ってこずともよ・か・ろ・う・に・・ですね。

ともあれ北海道はデカイです。
御国変われば山変わる。

ご参考になれば幸いです。

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